プロサッカー選手とは
プロのサッカー選手とは、「クラブと契約を結び、日常の出費を上回る給料をサッカー活動により支払われている者」であると国際サッカー連盟(FIFA)は「Regulations on the Status and Transfer of Players(選手の身分及び移籍に関する規定)」の中で定めています。
本記事でも、「クラブ契約をして選手としてのサッカー活動による収入が生活の基盤である人」をプロサッカー選手として考えます。クラブと契約をしていたとしても、選手としての収入が少なく、サッカーコーチやその他のシゴトが主な収入となっている人はプロにカウントしません。
収入源と年収
プロサッカー選手の主な収入源は「所属クラブからの年俸」「CM出演などのスポンサー料」になります。
年俸について
年俸とは、「支払われる賃金を1年単位で定める制度」のことです。この年俸は12回+賞与などの形に分けられて、給料として支払われます。1年に支払われる給料が決まっているのだから、1回で全て払ってしまえばいいのでは?と思う方もいるかもしれませんが、それは法律で禁止されています。労働基準法第24条に「賃金は、毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない」と記載されています。
日本でサッカー選手になる人の90%以上は日本の「Jリーグ」の所属クラブと契約を結び、Jリーガーとなります。Jリーガーは年俸制なのですが、必ずしも年俸額全てがもらえるわけではないのです。
Jリーガーの年俸は「基本給」と「出場・勝利給」に分けられます。一定時間以上試合に出場し、勝利することで初めて年俸を満額もらうことができます。基本給と出場・勝利給の比率はチームや選手によって異なりますが、7:3~8:2が多いです。このようなシステムを採用しているのはサッカー業界では日本だけです。海外リーグの場合は、クラブと契約した年俸は必ず全額もらうことができます。
年収について
プロサッカー選手の年収は「クラブからの年俸」+「スポンサー料」+「その他の収入」です。ほとんどの選手の場合、最も大きな収入はクラブからの年俸になります。
ABC契約と呼ばれる契約方法を採用しており、A契約・B契約・C契約それぞれで条件や待遇が変わります。それぞれ見ていきましょう。
A契約
A契約を結ぶための条件は以下になります。下記のいずれかを満たせば条件クリアです。
・J1リーグで450分以上出場
・J2リーグで900分以上出場
・J3リーグまたはJFL(日本フットボールリーグ)で1350分以上出場
指定のリーグで指定された時間以上の時間試合に出場することが条件です。Jリーグは1シーズンで1チームにつき34試合(3060時間分)行います。最初の1年でA契約のための条件を満たすことも十分可能です。
A契約は最も待遇のよい契約です。年俸は480万円以上に設定する決まりがあり、契約期間中に生活に困ることはまずありません。実際には年俸1000万円を超える選手が多いです。
B契約
契約条件はA契約と全く同じです。異なるのはその待遇です。
A契約とは反対に、B契約は年俸を480万円以下に設定しなければなりません。一方で年俸の下限は設定されておらず、極端な話、選手が同意すれば年俸100万円という可能性もあるわけです。
ただB契約は「変動報酬」を自由に設定することができます。たとえば「出場・勝利給」や「ゴール給」、リーグの最終順位が良ければ「順位給」などを年俸に加えることができるのです。
C契約
C契約は高卒や新卒など、プロ1年目の選手や条件を満たせずにA契約・B契約を結ぶことのできない選手のための契約です。年俸は480万円以下で、設定できる変動報酬は「ゴール給」と「勝利給」のみです。C契約は若手の選手がいきなり大金を手にすることで、生活に乱れが出ることを防ぐための制度です。
Jリーガーの平均年俸は約2000万円ですが、これは一部のトップ選手が平均を大きく挙げています。中央値は1000万円ほどです。つまり、平均的なJリーガーの年俸は約1000万円となります。C契約を結ぶリーグが下の選手は、年俸だけでは生活できず、アルバイトをしているケースもあります。
その他の収入
人気選手になると、CM出演やテレビ出演によって収入を得るというパターンも出てきます。海外の有名選手、たとえばクリスティアーノ・ロナウド1などは年俸よりも広告などのスポンサー料の方が大きくなっています。
日本でもトップ選手になると年俸とその他の収入を合わせて、年収数億円を稼ぐことも可能です。実力主義の厳しい世界ですが、夢のある世界でもあります。
なり方
サッカー選手になるための主な手段は「高校・大学でスカウトを受ける」「クラブの下部組織から昇格」の2つになってきます。
スカウト
高校サッカーや大学リーグで活躍し、Jリーグのスカウトを受けるというのがメジャーな方法のひとつです。そのためには強豪校に入ったうえでレギュラーに入り、そのうえで活躍しなければなりません。プロ野球と違ってドラフトの制度がない分、スカウトが主流になっていきます。
実際にJリーガーになる方法として最も多いのは実は大学リーグ選手のスカウトという事実もあります。
下部組織から昇格
Jリーグに所属しているクラブのユースチーム、いわゆる下部組織からエスカレーター式でプロ契約を結ぶまで上がるというケースも存在します。下部組織は小学生ユース、中学生ユース高校生ユースと分かれていることが多く、入るためにはスカウトまたは各ユースの行う「セレクション」に合格することが必要となります。ユースチームに所属している人のほとんどはこのセレクションを受けています。
セレクションとは「選択」「選抜」などの意味を持つ英単語です。サッカー業界ではチームに入るための試験を意味します。セレクションの内容は試合だけを行ってプレーを見るものもあれば、1日練習を行いその中でプレーと一緒に雰囲気やコミュニケーションの取り方までよく見るようなものもあります。
このユースチームからそのままプロに上がるのはチームの中でも一握りなので、ユースチームに入ったから必ずプロになれるというわけではありません。
スカウトと下部組織からの昇格以外にJリーガーになる方法はありません。どちらの方法でも大事なことは自分のプレーや実力をアピールすることです。
普段の過ごし方
Jリーガーたちは毎日をどのように過ごしているのでしょうか。
まず、Jリーグで試合が行われるシーズンは例年2月〜12月です。試合が行われるこの時期をオンシーズン、試合のない時期をオフシーズンと呼びます。
オンシーズンは一週間に1回、多くて2回試合があり、試合の翌日が休みになることが多いです。シーズン中は試合がある日と翌日の休みを除いて基本的に毎日練習をします。練習時間は1日3時間ほどが主流で、午後に行われることが多いです。3時間というのはサッカーの1試合と同じ時間です。試合と同じ時間だけ集中して練習をします。クラブに拘束される時間は練習時間のみなのでそれ以外の時間は自由に過ごすことができます。午前はゆっくり休んだり、あるいは事務などで個人のフィジカルトレーニングをして過ごす選手が多いようです。練習後はチームメイトと食事に行くこともあります。
試合当日は、クラブハウスに集合し、チームの専用バスなどで移動します。ミーティングの後にウォーミングアップを行い試合開始です。試合後は取材などの対応が終わると再びミーティングを行い、クラブハウスに戻って解散となります。試合会場がクラブハウスからかなり離れている場合は前日に会場近くの宿に宿泊することも珍しくありません。
1~2か月あるオフシーズンは選手は自由に過ごします。ただ、丸々1か月も休んでしまうと、動ける身体を取り戻すのに1か月以上かかってしまうという考え方があります。そのためJリーガーはオンシーズンに入った時に体の状態を落とさないため、オフシーズンにもランニングや筋トレなどの自主トレーニングを行うという人が多いです。
現役引退後のサッカー選手
Jリーガーの平均引退年齢は26歳です。非常に早いように思いますよね。これは、高卒1年目でデビューして、20歳を前に引退する選手などが平均年齢を下げているというのも原因の一つですが、実際身体が資本の職業なので現役でいられる時間はとても短いのです。一部のトップ選手は30歳を超えて40手前まで第一線でプレーすることもありますが、それは稀なケースです。では、引退したJリーガーたちはどのようなセカンドキャリアを送るのでしょうか。
大半の選手は一般企業に就職します。事務・フィットネスクラブの正社員やスポーツショップの正社員が多い傾向にあります。これは引退後もスポーツや身体を動かすことと付き合っていきたいという人が多いからだと予想できます。当然所属していたチームやその他のサッカーチームでコーチの職に就くという人もいますが、給料が低いことと昇給の可能性がほとんどないなど収入の面で考えた結果、一般企業に就職する人が多くなります。中には、オフシーズンにインターンに参加したり、オンシーズンにも資格の勉強や就職活動を行う選手も少数ですがいるようです。
それまでサッカー選手としてプレーしてきた人が突然就職活動を始め、社会に出てうまくいくケースはそう多くありません。特に高卒でプロになった選手は就職先を探すのも一苦労です。引退したサッカー選手のセカンドキャリアを斡旋するような企業団体はないわけではないのですが、そこまでうまく機能していないというのが現状です。引退後にアルコール中毒やうつ病にかかり、社会活動の停止を余儀なくされてしまう人も少なからず存在します。
引退後の生活や就職に困らないためにも予め人生設計を計画したり、就職するならその準備をしておくことが重要になってきますが、現役である以上は目の前の試合や自分のプレーに集中したいというのが選手の考えだと思います。サッカー選手のセカンドキャリアは業界の抱える問題のひとつとなっています。
最後に
プロのサッカー選手になるのは非常に難しく、本当に上位の一握りの人しか契約を結ぶことはできません。そのうえプロになった後もその先の生活が保障されているわけではありません。引退後には厳しい現実が待ち受けています。
ですが、プロの中でもトップの選手になれれば、もちろんお金に困ることはないですし、自分の好きなサッカーと関わりながら好きなように生きていくことができます。だからこそ夢のある職業ですし、トップを目指そうと努力することができるのだと思います。
この記事を最後まで読んだサッカー選手を目指すあなたに少しでも参考になれば幸いです。
参考にしたサイト
・プロサッカー選手の契約、登録および移籍に関する規則
https://www.jfa.jp/documents/pdf/basic/br20.pdf
・サカレコ
https://sakareko.com/column/7263/
・ウマサカ
https://xn--lckta6b8nz42v95it93ajed.com/column/for-pro.html
・キャリアガーデン