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新聞記者の年収・仕事内容・なり方などを解説‐シゴトニンラボ

今回紹介するシゴトは新聞記者です。

新聞記者というと、漫画『美味しんぼ』の主人公、山岡士郎を思い出します。山岡さんは新聞社の記者をしており、食に関しては深い知識があり、食の特集や取材には並々ならぬこだわりを見せます。ただ普段は居眠り、サボりばかりのぐうたら社員です。

しかし現実の新聞記者はサボりや居眠りなどもちろん難しい、とても多忙で知識と技術も必要な職業です。今回の記事では、新聞記者がどのようなシゴトをしているのか見てみましょう。

仕事内容

新聞記者のシゴトは、世の中の多様な情報を取材、調査し、人々にわかりやすく伝えることです。

新聞は社会・政治・経済・文化・国際・スポーツなど、多岐にわたる情報を扱います。

「一般紙」と呼ばれる大規模な新聞は、これらの情報を全て扱っていることが多いです。

もちろん1人の新聞記者が全てのジャンルを書いているわけではなく、それぞれの部門で分業して1つの新聞紙を作っています。

反対に「専門紙」と呼ばれる比較的小規模な新聞は、1つのジャンルに特化しています。

例えば福祉新聞という福祉情報に特化した新聞、農業新聞という農業情報に特化した新聞などがあります。

専門紙は会社全体が1つのジャンルを追求しているため、より深くマイナーな情報も知ることができるメリットがあります。

部門別のシゴト

新聞記者、特に一般紙の新聞記者のシゴトとはどのようなものでしょうか。

ここでは新人記者とデスク、また3つの部門のシゴトを紹介します。3つの部門は「政治部記者」「経済部記者」「社会部記者」です。

〇新人記者

入社から数年間は、全国各地にある地方総局に配属されます。地方総局では幅広いジャンルを横断して現場を取材します。幅広いジャンルの取材を行い記事を作成することで、記者としての経験を積みます。

その後は本人の希望や適性を考え、本社に配属されます。

本社では専門の部署に配属され、記者としての専門性を高めていくことになります。

〇デスク

デスクは記者としての経験を積んだ人が就くポジションです。校閲(こうえつ)部門のような文章や事実の確認をするといったシゴトを行います。また、デスクは記者のまとめ役というポジションでもあります。

紙面構成や他部署との兼ね合いも考えて、記者に取材、または追加取材を命じたりします。

〇政治部記者

本社の政治部の記者は、主に政治の動向を追って記事にします。

政治の中でも担当分野が部署によって決まっており、首相官邸、自民党、中央省庁などを専門に扱い記事にします。

〇経済部記者

国内、海外の経済に関する動向を追うのが経済部記者のシゴトです。

経済部も細かく担当が分かれており、地域経済を追う記者もいれば経済界の不祥事や政策を追う記者もいます。

〇社会部記者

社会部の記者は、社会に関する幅広い事象を担当します。

主には警察や裁判所などの事件・事故担当、社会の流行から社会問題まで扱う遊軍担当、記者クラブに在籍し汚職事件や不祥事を追う省庁担当に分かれます。

専門性がないと考えられがちですが、1つの社会問題に特化したり、専門性を持つ記者も数多くいます。

記者が取材してまとめた記事をデスクが事実確認や文章の添削することで新聞ができるのです。その後新聞を発行し各家庭に届けるのは新聞記者のシゴトの領域ではありません。

なり方

新聞記者になるには、新聞社1記者部門の採用試験に合格する必要があります。

ほとんどの新聞社は大卒以上を採用の応募条件としています。記事を作成するためには最低限の教養や文章を書く能力が求められるためです。また、マスコミは偏差値の高い大学の出身者が非常に多い傾向にあります。偏差値の低い大学出身だから採用されないというわけではありませんが、採用試験で不利になることは否定できません。

採用試験は主に面接が行われます。面接では様々な質問を通して人物像・コミュニケーション能力などを見られます。非常に人気の業界なので、どの新聞社も合格倍率は高くなっています。例えば朝日新聞社では、2022年は30人程度の採用に対して応募者は10000万人近くとなっています(リクナビhttps://job.rikunabi.com/2023/company/r584200075/employ/参照)。

新聞記者になるためにしておくとよい経験や身に着けるべき知識について考えました。

〇メディアの仕事をする

新聞社志望の学生は、新聞社やテレビ局でアルバイトをしていた、長期のインターンに行っていたという経験をしている場合が多いです。

仕事でなくても、ゼミで取材や調査を頻繁に行っていたという学生もいます。社会学部、メディア社会学部、社会人類学部などでは長期間の現地調査や取材など記者に似た経験を積むことができます。

〇一般常識を身に着ける

新聞記者は、新卒入社の段階では専門ジャンルが決まっておらず、地方で幅広い情報を扱います。そのため採用試験でも時事問題や常識問題が出題されます。

時事問題や常識問題はメディア専門の就活塾で対策する、新聞を読むなどが考えられます。

〇好奇心を持つ

新聞記者になる人は多様ですが、共通していることは好奇心が強く行動力がある人が多いということです。

学生時代NGOで1つの問題に興味を持って活動していた人もいれば、海外旅行で全世界を回った、様々なアルバイトを転々としていたという学生もいます。

年収

『令和2年度賃金構造基本統計調査2』によると、新聞記者が所属する「記者」の平均年収は674.3万円です。これは全国の労働者の平均年収436万円3より約240万円高くなっています。また、新聞記者は記者の中でも給与が高い職種であるため、平均年収は674万円よりもさらに高いと考えられます。

ただ、新聞記者は給与は高いですが長時間労働になる傾向があります。

新聞社はみなし労働制度という残業代が定額である制度がある場合が多いです。これは時間外労働が多くなるためで、基本的に月に残業がないということは考えられません。

もちろん全ての新聞記者が激務であるわけではないですが、他職種に比べて忙しくなる可能性は考慮しておいたほうが良いでしょう。

男女比

『一般社団法人 日本新聞協会』の令和3年度アンケート調査(https://www.pressnet.or.jp/data/employment/employment03.php)によると、新聞社の中で記者職に就いている男性は76.5%(13,112人)、女性は23.5%(4,026人)と、女性の方が少ない結果になりました。

ただこの調査を平成13年度から追うと、毎年1%弱女性記者の比率が増え続けていることがわかります。新聞記者は激務であるため妊娠・出産との両立が難しい職業ですが、新聞社も近年は出産支援・育児支援に力を入れており、女性が働く環境の整備が進んでいます。

スケジュール例

新聞記者の1日は配属される部署によって異なります。

もっと言えば、裁量労働制が採用されていて同じ部署の記者によっても違いがあります。

ここでは、大手新聞社の政治部の記者の1日を紹介します。

8:30 政府の会議をウォッチ

11:00 取材先との予約調整・午後取材の準備

13:00 社内の打ち合わせ・社外での取材

16:00 国会への取材

17:00 退社 

求人・就職情報・需要

新聞記者の求人は、かなりの高倍率になることが多いです。全国の有効求人倍率を見ると、新聞記者の有効求人倍率は0.48倍となっています。これは、100人の新聞記者志望の求職者に対して48件の求人しかないことを示しています。

また、新聞記者自体の記者数も減少傾向にあります。2003年には21,311人だった記者数(回答社数81)は、2021年では17,148人(回答社数94)となっています。

新聞の発行部数も2003年には52,874,959部数でしたが、2020年には35,091,944部と大幅な減少を見せています。1世帯当たりの部数も1.07から0.61と、新聞を読まない世帯が増えてきていることがわかります。そういったことも考慮に入れると、新聞記者は人気の職業ではありますが、需要が大幅に上がることは考えにくいです。

やりがい・魅力

新聞記者の魅力は、1つの記事がきっかけとなり社会が動き出す、何か状況が変わること、そして様々な場所で様々な人に話を聞けることです。

大手の新聞記者に特にいえることですが、新聞記者の1つの記事によって社会の情勢や世論が大きく動くことがあります。大きくは動かなくとも、1つの記事によって誰かの心を動かしたり状況が変わることがあります。

そういった言論の力で大小関わらず何かを変えられることは、新聞記者の仕事の魅力といえます。

また、新聞記者は仕事柄様々な人に話を聞きます。長い記者のキャリアを通して、高校球児から総理大臣まで幅広い立場・年齢の人々の話を聞くことができます。そういった世界の広がりを感じることができることも新聞記者の魅力といえます。

つらいこと・大変なこと

新聞記者のつらいことは、自身が書いた記事が世間に誤解されることがあることです。

新聞記者は様々な人に話を聞き、時間の制約がある中で記事を作ります。また、上司や同僚から紙面に沿った記事の直しを命じられることもあります。

そうした中で、自身が意図した形とは別の形で人々に情報が伝わったり、自身のミスや偏見によって記事が「炎上」してしまうこともあります。炎上まではしなくとも、誰かを傷つけてしまうことがあります。

そのような悪い意味で社会を、誰かを変えてしまうことの重圧と闘っていかなければならないのが新聞記者の大変なところです。

 

今回の記事はこれで終わりです。最後まで読んでくださった方、ありがとうございました。また次回の記事でお会いしましょう。

参考にしたサイト

『職業情報提供サイト(日本版O-NET)』

https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/208

『一般社団法人 日本新聞協会』

https://www.pressnet.or.jp/

『朝日新聞 Recruit Site』

https://www.asahishimbun-saiyou.com/works/journalist

『毎日新聞 Recruiting』

https://www.mainichi.co.jp/saiyou/work/

『中日新聞社 採用サイト』

https://static.chunichi.co.jp/chunichi/pages/info/annai/work/index.html

  1. 新聞の作成・発行を行う会社のこと
  2. https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2020/index.html
  3. 国税庁 令和元年 民間給与実態統計調査を参照https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan2019/pdf/001.pdf