以前介護士のシゴトを紹介しましたが、今回は介護士の上級資格となる介護福祉士についてまとめたいと思います。介護福祉士は介護士関係では唯一の国家資格であり、目指す人は非常に多いです。一般の介護士との違いからまずは見ていきましょう。
一般の介護士との違い
実はそこまで大きな差はありません。違いを挙げるとすれば、介護福祉士という資格の有無と、給料面での待遇の良さ、仕事内容の幅です。介護福祉士の資格は介護士としての技能や知識を保障するものであり、業界内では一定の評価を得ることになります。
資格の有無
介護福祉士は国家資格であり、受験資格を得て試験に合格しなければいけません。一方で介護士には資格がなくともなることができます。介護福祉士もその他の介護士もまとめて介護士と呼ばれます。
給料面の待遇の良さ
令和2年度に行われた介護従事者処遇状況等調査結果https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/jyujisya/20/dl/r02kekka.pdf#page=175
によると、介護福祉士の平均給与は32万9,250円で、保有資格のない介護士は27万5,920円です。1年間では50万円以上の収入の差があることになります。
仕事内容の幅
基本的な仕事内容は一般の介護士と変わりありません。介護をするのが主な仕事内容になりますが、介護福祉士は現場でリーダーのような立場になることが多く、他の介護士への指示出しや指導を行うことが多いです。また、利用者の家族への現状報告をしたり、相談に乗ることもあります。介護福祉士は介護士と比べて業務の幅が広くなります。
介護福祉士の仕事内容‐介護とは‐
介護士というシゴトの基本は介護になります。実は介護には「生活援助」と「身体介護」の2種類があります。それぞれ簡単にまとめます。
生活援助
生活援助は介護サービス利用者が自立した日常生活を送るための家事の代行や買い物、掃除の手伝いなどをすることを指します。生活援助はその性質上、訪問介護で行われることが多いです。生活援助の具体例は以下のようなものです。
例・身の回りの掃除
・ゴミ出し
・料理、食事の用意、片付け
・洗濯、アイロンがけ
・日用品などの買い出し
・ベッドメーキング など
身体介護
身体介護は実際に身体に触れる介護です。食事のケアや入浴のサポート、排泄の世話などを行います。実際に身体に触れるという点がそのまま生活援助とは異なります。身体介護の具体例は以下のようなものです。
例・食事のケア(手伝い)
・部分浴(髪・顔・陰部・足など部分的な洗体)の手伝い
・清拭(身体を拭いてキレイにすること)
・排泄のケア
・車イスでの移動や歩行の補助
・着替えの手伝い など
介護福祉士は上記の介護に加えて、現場をまとめる役割を持っていることが多いです。他の介護士への指示だしや指導を行います。
介護関係以外の業務となると、例えば報告書の作成や施設内で行うイベントの企画や準備、掃除などの雑務などがあります。
続いて、介護福祉士のなり方について簡単にまとめていきます。
介護福祉士になるには
介護福祉士になるには国家試験を受ける必要があります。試験合格後に介護福祉士登録という登録を行うことで、介護福祉士として働くことができるようになります。
国家資格を受けるための3つのルートがあるので、それぞれ見ていきましょう。
①養成施設ルート
厚生労働大臣によって定められた養成施設を卒業することが受験資格になります。養成施設とはほとんどが高校卒業後に入学する専門学校です。指定の養成施設は全国各地にあり、およそ500校ほどあります。こちらで一覧表を確認できます。介護福祉士養成施設一覧
②福祉高校卒業ルート
福祉系高校とは福祉系の学科が存在する高校のことで、日本の福祉に関する知識や技術を学ぶために設置されています。福祉系高校で指定されている単位を取得することで、介護福祉士国家試験の受験資格を得ることができます。福祉系高校やその単位に関してはこちらをご覧ください。高等学校における福祉科教育:文部科学省
③実務経験ルート
3年以上の実務経験(従業期間3年以上、従事日数540日以上)と実務者研修という研修を受けることで受験資格を得るルートです。実務経験とは「その仕事をした経験」を指し、この場合は介護士として介護施設で3年働く必要があるということです。実務経験として認められる施設や働き方はこちらで確認できます。介護福祉士国家試験:実務経験範囲
それに加えて実務研修という研修を受ける必要があります。介護福祉士国家試験受験者の約90%がこのルートを辿っています。
実務者研修とは
実務者研修は、介護福祉士国家試験を受験するためには、必ず受講しなければならない研修です。介護職員として働くうえで必要な技術や認知症、介護の課程などについて学ぶことができ、介護の専門家として生涯働き続けるためのスキルを磨くことができます。この実務者研修には8万円から20万円ほどの費用がかかります。平均は12万円程だと言われています。研修は20科目程あり、終了するまでに約半年ほどかかることが多いです。
社内でこの講習を受けさせてくれる会社もありますが、基本的には自身で通信講座を申込み、そこで受講することになります。講座は座学と実践に分かれており、座学はオンラインで自宅で受けれますが、実践の講義の際には通学してその場で技術的なことを学ぶことになります。時間割やスケジュールは自身で組むことができるので、無理のない範囲で調整しましょう。
どのスクールで受講しても最後には実務試験やレポートの提出といった課題があります。これらはあくまで講義で学んだことを理解しているかどうかの確認という意味合いが大きく、ほとんど100%の人が合格します。この最後の課題の合格をもって、実務研修完了となります。その後実務研修の完了を証明する書類などが自宅に送られます。この証明書が介護福祉士国家試験の際に必要になるので大事に保管しましょう。
介護福祉士国家試験について
受験資格
上記の通り、3つの受験資格があり、どれか1つを満たすことで受験資格を得ることができます。90%以上の人が実務者研修ルートを辿ります。
試験内容
筆記試験と実技試験があります。
筆記試験は全てマークシートです。「人間と社会」「介護」「こころとからだのしくみ」「医療ケア」「総合問題」の5ジャンルから120問程度出題されます。
実技試験は養成施設ルートで受験する人は受ける必要がありますが、実務経験ルートと福祉系高校ルートの場合は免除されます。つまり90%以上の人は実技試験を行いません。
実技試験では要介護者の特徴を踏まえた上で食事の介助や移動の補助など、実際に介護を行う試験です。
試験日程
筆記試験は例年1月末に行われています。
実技試験は例年3月前半に行われています。
試験の合格発表は3月末に行われます。
申込方法
申込方法ははがき申請とネット申請の2通りあります。なお、はじめて試験を受ける人はネットから申請することはできません。
はがきの場合は送付先:
〒150-0002
東京都渋谷区渋谷1丁目5番6号
公益財団法人 社会福祉振興・試験センター宛
に必要書類(受験の手引きなど)を請求します。必要書類が送られてきたら、受験料を払い、必要な書類をまとめます。受験料は約1万8千円です。
例年6月頃に社会福祉振興・試験センターが詳しい申込方法や手順を公開するので、それを確認するのがよいでしょう。
受験場所
筆記試験の受験場所は全国35都道府県にあります。自宅から一番近い会場に行くことになります。一方実技試験の実施場所は東京、大阪のみです。済んでる場所によっては前日から会場近くのホテルに泊まるなどの対策が必要になります。
合格率
合格率は例年70%ほどです。
筆記試験は60%以上の正答率で合格となります。合格率から見ても、難易度は他の国家試験や資格と比べると易しいということができます。
試験については以上です。
試験合格後は自宅に合格証明書とその他の必要書類が送付されます。同封されている説明書の指示に従って必要書類を郵送します。郵送した書類に不備が無ければ、1か月ほどで「登録証」が送付されます。これで登録完了となり、介護福祉士として働くことができるようになります。
試験に合格してもこの手続きをしなければ介護福祉士として働くことができないので、忘れないようにしましょう。
年収について
厚生労働省老健局老人保健課によって行われた令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果 によると、介護福祉士の平均年収は392万円です。令和3年に行われた賃金構造基本統計調査によると介護士全体(介護福祉士含む)での平均年収は352万円であり、介護福祉士とその他の介護士では1年で40万円以上の収入の差があることになります。
全国の労働者の平均年収である436万円1と比較すると収入の水準はやや低めとなっています。
以上で介護福祉士の記事は終了です。最後まで読んでくださりありがとうございます。
介護福祉士は少し上級の介護士なので、介護士の記事とぜひセットで読んでください。内容に重なる部分はありますが、より理解が深まります。介護士‐シゴトニンラボ‐
参考にしたサイト
公共財団法人社会福祉振興・試験センター
job tag(政府の職業情報提供サイト)
キャリアガーデン
- 国税庁 令和元年 民間給与実態統計調査を参照https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan2019/pdf/001.pdf