今回紹介するシゴトは行政書士です。正直、あまり聞き馴染みのない仕事ではないでしょうか?
行政書士とは、官公署(各省庁、警察省、都道府県庁など)に提出する公的な書類の作成や提出する手続きを代行する仕事です。ほとんどの書類は、許可や認可に関する書類でその種類は1万を超えると言います。許認可の書類例としては、会社を設立する際の書類や飲食店営業をする際の契約手続きなど、個人と企業どちらからも依頼を受けています。
行政書士は、彼らの専門性の高い能力を使って、行政関連の認可の手続きなどを迅速に行うことによって市民の権利を守る役割を果たしています。
それでは具体的な行政書士のシゴトについて見ていきましょう!
行政書士の仕事内容
行政書士は、許認可申請の書類作成、提出代理などを行います。また、中小企業などに法務的な視点からアドバイスを行う、ビジネスコンサルタントとしての仕事も行います。さらに、行政しは個人や企業が何かしらと法的な契約などを行う際に、その後に問題が起こらないように、未然にそれを防ぐ役割があります。
行政書士としてのキャリアを積んでいく場合、シェフやアーティストなどのように、自分の得意な分野を持つことが重要になります。
行政書士になった際に、大きく分けて2種類の仕事があります。それが、ビジネス関連の仕事と人々の暮らしに関わる仕事です。
ビジネスに関わる仕事
①法人関連の手続き
株式会社や組合、法人などの設立手続きとその代理と事業運営の支援など
(会社設立の際だけではなく、設立後に、コンサルタントとして企業に対するサポートを行う人もいる)
②知的財産の保護
著作権登録、著作権契約など
③外国人雇用
外国人を雇用する際の、入国管理局などへの申請手続き
④中小企業支援
中小企業の経営を支援する外部の専門家としてのサポートおり⑤運輸関連
一般貨物自動車運送事業やタクシー営業許可申請など
⑥電子申請・電子調達:
電子署名が請求される申請やその申請の代理など
⑦許認可申請
建設業や運送業などの許可申請手続きなど
人々の暮らしに関わる仕事
①遺言・相続書類の作成
遺言書の発案、作成の手助け、遺産相続においての手続きなど
②成年後見
認知症などの病気より、判断能力が低下している人に関して 、本人の判断を尊重しながら法的に保護し、支援する
③契約書
土地や交通事故、建物などの賃貸借などの書類作成
④自動車登録関連
自動車登録申請、自動車重量税申告など
⑤日本国籍取得などの国際関連
日本国籍取得を希望する人の申請や在留資格の取得、国際結婚などの手続き
⑥市民法務
内容証明書の作成、示談書や協議書の作成など
⑦土地活用
所有する畑に家を建てたい、農地を売りたいなどの土地に関する申請手続きなど
⑧内容証明
債権、債務問題に関する手続きや公正証書等の書類作成など
特定行政書士とは?
特定行政書士とは、行政書士が作成した申請を官公署に提出した際に、許可が下りなかった場合に、それについての異議申し立てができる行政書士です。今までは、許可が下りなかった場合は弁護士にパスしていた仕事も行政書士が担当できるようになりました。
行政書士になるには
まず、行政書士になるためには行政書士の国家資格を取得する必要があります。
一般的な方法は、行政書士試験に合格して、取得する方法です。
それ以外にも、公務員試験を受けて、国家公務員か地方公務員になり、官庁などで通算して17年から20年以上働き続けることでも、十分行政に精通しているということから、試験を受けずに国家資格を取得することができます。
また、弁護士、弁理士、公認会計士、税理士の資格のいずれかを取得することでも、無資格で行政書士の資格が得られます。
資格取得後、日本行政書士会連合会に登録することで、仕事を始めることができます。
行政書士になるための学校
行政書士になるために、学歴などは特に必要がありません。
しかし、試験に出題される問題の幅はとても広く、行政書士試験においては憲法などの六方と、行政法など、様々な分野が出てきます。そのため、資格取得のためのスクールや通信講座なども存在します。これらの方法はとても人気で、多くの人が利用しています。ネット環境さえあれば、好きな時間、場所で学習できるため、人気が高いです。
一方で、中には独学で勉強して資格を取得する人もいます。しかし、問題の幅の広さから法律の知識がまったくない場合、800~1000時間ほどの学習時間が必要といわれています。
雇用形態・働き方
行政書士は大きく分けて二つの働き方があります。一つはどこかに勤める働き方、もう一つは独立する働き方です。行政書士として雇われる場合、アルバイトやパート、派遣社員など様々な雇用形態があります。しかし、行政書士は自分の実力や経験がものをいう世界であるため、実務経験がないと正社員として働くことは難しいため、アルバイトなどで経験を積む人も多くいます。
独立する場合、他の国家資格と並行して実務を行うダブルやトリプルライセンスの人もいたり、普通に働きながら副業として行政書士として働く人もいます。
勤務する場合
ー正社員
行政書士事務所は少人数で運営しているところが多く、正社員事態の求人はあまり多くないのが実情です。正社員は忙しい時期もありますが、残業に追われるということはあまり多くなく、土日祝日も官公署に併せて休みにするところも多いため、ワークライフバランスがとりやすい職場といえます。
ー派遣社員
派遣社員の場合、基本的に残業を行わなくてもよいため、結婚している場合や親の介護がある人にとっては、正社員よりも働きやすい環境かもしれません。しかし、雇用期間があまりないことが不安定要素といえます。しかし、職場によっては、雇用期間が終了した際に正規社員として契約する制度がある会社もあるので、求人の際の条件をよく見ることをお勧めします。
ーアルバイト・パート
アルバイトやパートで働く場合、実務経験を積むために働く場合や資格を持っている専業主婦の人などが働いている場合など、様々です。また、アルバイトやパートであれば、資格を持っていなくても行政書士事務所で雇ってくれる場合もあるため、資格取得のための勉強期間としても勤務可能です。
独立する場合
最近では、事務手続きが電子化や簡素化などにより、行政書士の需要減少により、資格を取得しようとする人は減っており、業界内での競争はとても激しくなっています。そのため、稼げる人と稼げない人の差が激しくなっているのも事実です。独立して安定した収入を得る場合、ダブルライセンスを保持することか、高い経営やマーケティングのスキルを持っていることがカギになってきます。
ー在宅・副業でやる場合
サラリーマンなどとして働きながら、休日などに限って働くという場合もあります。いずれ本業にするつもりで入るが、安定した収入が得られるのかという実験期間を副業して試す人もいます。行政書士として働く場合、特別な準備は必要ないため、勤務先に副業などを禁止する規定がない場合、特に難しくはありません。
しかし、休日限定などになってしまうと、時間がないためうまくいかない場合も少なくないようです。
資格
行政書士になるには、行政書士試験に合格する必要があります。行政書士試験は年に1回行われる試験で、年齢や学歴、国籍に関係なく受験することができます。受験料は7000円です。
弁護士などの法律に関しての専門職と比べ、問題は難易度が低いとされていますが、毎年の合格率は10%前後で、容易とは言えないでしょう。
行政書士の年収
行政書士の年収は、就業形態によっても差はありますが、500~1000万円ほどです。他の職業と比べ、行政書士は手がける仕事の分野もやり方も人によってばらつきがあります。そのため、収入には同職業内でもばらつきが多いですが、1000万を稼ぐ人は独立している人の一部のため、500万円ほどが現実的であると考えられます。
ー行政書士事務所
行政書士事務所で働く場合、200~300万円を平均的な給料として考えることが妥当だと思われます。一般的に見て、低くはありますが、勤務している中で自分の得意分野を見つけ、独立するための修業期間と考えるべきです。
ー一般企業
一般企業の法務部や総務部などで働く場合、400~700万円前後となります。しかし、一般企業において働く場合は、一般的なサラリーマンと就業形態は変わりません。
ー派遣社員
派遣社員である場合、給料は時給換算であることが多いため、時給は1200~1300円、月収にして18万円ほどだといえます。しかし、行政書士の資格以外にも、他の国家資格や英会話力が高い場合などには時給はそれに応じて増えます。
ーアルバイト・パート
アルバイト・パートは地域によっても差はありますが、時給900~1000円が相場だと思われます。
ー独立している行政書士
独立して自分の事務所を持っている場合、年収が200万円の人から3000万円稼ぐ人もいるように、とても様々です。
行政書士の初任給は約20万円前後とされており、一般的な新卒と同等の額です。しかし、行政書士の多くは、数年後には独立しているため、最初は同じでも、徐々に差が生まれていきます。
ー行政書士として稼ぐには
行政書士は仕事の幅が広く、報酬も自分で設定できるため、収入の上げ方は様々です。一つには需要が高い分野の案件を低い報酬でたくさんこなす方法があります。逆に、競争率が高くない分野での専門性を高め、その分野を独占する方法もあります。
また、行政書士は他の職業と比べ、兼業する人がとても多いため、司法書士や税理士などとしても同時に働いている人は、稼いでいる傾向にあります。
男女比
行政書士試験の合格者の男女比は以下のようになっています。
・平成29年は、男性約78%、女性約22%
・平成30年は、男性約74%、女性約26%
・令和元年は、男性約77%、女性約23%
これを見ると男性が圧倒的に多いことがわかります。また、2020年5月末時点の行政書士の登録者は男性が85%、女性が15%と女性はいずれも少ないことがわかります。これを踏まえると、行政書士は男性中心の業界であるといえます。
勤務地
行政書士の事務所や一般企業は様々な場所にあるため、一概にどこに集まっているとはいえません。しかし、2020年の全国司法書士事務所ランキングの上位に入っているのは、主に東京、神奈川の首都圏と、関西では大阪や京都などの大きな都市でした。そのため、行政書士事務所で働くことを考えている場合は、首都圏か関西の大きな都市に拠点を置くことが一般的かと考えられます。また、独立する場合も、顧客の層の厚さを考慮する場合、大都市の方が仕事の舞い込んでくる量も多いかと考えられます。しかし、その分競争率も高いといえるでしょう。
スケジュール例
ー行政書士事務所で働いている場合
9:00 出勤
9:30 ミーティング
10:00 外まわり
12:00 昼休憩
13:00 書類作成
15:00 外まわり
16:00 新規依頼受付
18:00 退社
ー一般企業で働いている場合
8:30 出勤
9:00 書類チェック
10:00 打ち合わせ
11:00 書類作成
12:00 昼休憩
13:00 株主総会出席
16:00 コンプライアンス勉強会
18:00 退社
勤務時間・休日
行政書士の勤務時間は官公署での手続きが主な仕事であるため、公務員と同様に9~17時での勤務が一般的です。しかし、独立している場合、顧客の都合を優先させなければならないため、不規則になることも多いです。
休日に関しても、官公署と同じく、土日祝日を休みにしていることが多いです。そのため、GWなどの長期の休日も休みが取れる可能性が高いでしょう。しかし、事務所によっては顧客が利用しやすいように休日も開けているところや365日営業しているところもあります。そのため。事前に確認しておくことが大切でしょう。
求人・就職情報
前でも述べた通り、行政書士事務所は小規模経営のところが多いです。そのため、求人もあまり多くないのが現状です。そのため、求人を探す際は、様々な方向からのリサーチが必要となるでしょう。一つには、行政書士実務研修センターという行政書士の実務を経験したことがない人に向けて、個別の実務研修を行っているサイトでも求人を見つけることもできます。また、就職エージェントなどに登録して、一般公開されていない求人を見つける方法もあります。それに加え、一般企業から見つける方法もあります。
行政書士は実力主義である世界であるため、実務経験の浅い新卒生が正社員として雇用されるのは難しいでしょう。しかし、アルバイトやパートは多くの事務所にも枠があるため、そこでのスキルアップを狙うのも一つの手です。正社員としての勤務を希望する場合は、行政書士事務所よりも一般企業に務めるほうがよいかもしれません。
行政書士はとして独立を考えている場合、建設会社や不動産会社に勤め、専門的なスキルを得ることでそれを軸に独立することも考えられますが、一連の実務を経験できることを考えると行政書士事務所の方がよいとも言えます。
ー就職先
安定性を重視する場合、やはり一般企業の法務部などに勤め、一般企業のサラリーマンなどと同じように働くことがよいでしょう。その場合、行政書士資格を持っていることを就活の時などに有利に使うことができます。
一方、将来性を重視する場合、現状では手続きが電子化、簡素化されて行っている状況であるため、行政書士の需要は減るでしょう。また、現在の高齢化社会を見据えて、企業経営や相続などに関連したコンサルティング系の仕事に注目して、就職先を選ぶほうがよいかもしれません。
転職状況・未採用試験
行政書士を目指す場合、年齢制限がないためどの年齢であっても目指しやすい職業です。実際に、受験者の内訳をみても、40代が一番奥、次が30代となっています。そのため、社会人として働き、同時に資格取得を目指している人が多いことがわかります。そのため、同時並行できるため、少ないリスクで転職ができるという魅力があります。
未経験として入る場合、やはりアルバイトやパートとして行政書士事務所で働き始めることが一般的でしょう。しかし、まだ試験に合格していない場合でも、行政書士補助者として採用してくれる事務所もあるようです。しかし、その場合は良い待遇は望めないため、それは頭に入れておくべきでしょう。行政書士の資格以外で転職の際に有利になるのは、英語資格などの外国語資格でしょう。最近は、外国人労働者の受け入れが盛んになっており、在留資格やビザに関する業務が増えているため、転職の際に有利になるといえるでしょう。また、基本的に行政書士の仕事はデスクワークが多いため、WordやExcelなどのアプリケーションが使えることも一つの要素としてカウントできます。また、行政書士事務所においては顧客を捕まえる際に使える営業のスキルなども転職の際に有力要素として使えるでしょう。
まとめ
今回の行政書士についての記事、いかがだったでしょうか?
この記事を通して少しでも行政書士というシゴトについて興味をもっていただけたら、嬉しく思います!
それでは、また次の記事でお会いしましょう!
参考にしたサイト
・日本行政書士連合会
・スタディサプリ
https://shingakunet.com/bunnya/
・スタンバイ