これを読んでいるあなたはグランドスタッフという言葉を耳にしたことはありますか?
グランドスタッフとは、空港で働く職員のことを指します。パイロットやキャビンアテンダントとは異なるシゴトで、主に空港内でお客さんの対応業務を行います。
聞いたことある人も、そうでない人も、この記事を最後まで読めばグランドスタッフについて理解を深めることができます。
それでは早速見ていきましょう。
仕事内容
グランドスタッフのシゴトは主に「搭乗手続き」、「搭乗案内」の2つに分けられます。それぞれ解説していきます。
搭乗手続き
一言でまとめるとお客さんがインターネットや電話で予約し購入した航空券を、搭乗券として発券するという業務です。基本的には航空券の発券や変更は予約発券センターなどの別の部署で行うのがメインになりますが、空港内にも発券カウンターを設けています。発券カウンターが活躍するのは、予約内容に誤りや不備がある状態でお客様が空港に来てしまった時です。搭乗者の名前や生年月日、パスポート情報、搭乗日や出発時刻などを間違えてしまうと、飛行機に乗る事はできません。そういったお客様の予約情報の変更や作成を行い、問題を解決します。
次に飛行機に預ける受託手荷物を預かります。飛行機には預けることのできない貴重品や危険物、重量制限などもありますので細かく確認しなければなりません。
荷物を預かり、お客さんの希望の座席を選ぶと搭乗手続きは完了です。とにかく素早く済ませたいお客様や、丁寧にじっくりと質問したいお客さんなどさまざまですのでそれぞれのニーズを素早く読み取ることが大切です。
受付
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チケット発券
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荷物預かり(荷物チェック)
現在チケットの発券はチェックイン機やウェブ媒体を使ってお客さんが自身で行うケースが増えているため、搭乗手続きにおいてグランドスタッフの負担は減っています。負担が減るということは、グランドスタッフの需要が減っているということでもあります。
搭乗案内
出発ロビーでチェックイン機の使い方の説明や、混雑時に乗客を誘導します。搭乗予定のお客さんが現れないときは無線で連絡を取り合って探します。時折空港で流れるアナウンスなどで個人名が呼ばれることがありますが、こうした手続きを行うのもグランドスタッフのシゴトです。また搭乗口のゲートでチケットの最終確認を行い、乗客を案内します。体調不良のお客さんやターミナルを間違えてしまったお客さんなどのトラブル対応も行います。
また、到着便の対応を行うのもグランドスタッフのシゴトです。乗り継ぎ便の案内や車いすの乗客のサポートを行う他、返却荷物になにかトラブルがあった場合の対応を行います。
キャビンアテンダントとの違い
グランドスタッフとキャビンアテンダント(以後CA)はまったく異なる職業です。
グランドスタッフは「空港のシゴト」を、CAは「機内のシゴト」を担当します。前者が空港でチケットの発券、搭乗案内を行った後、後者が機内でのサービス業務の他、お客さんの安全を守る機内保安業務を行います。
またCAは航空会社が直接採用しているのに対してグランドスタッフを航空会社が直接採用しているケースは少なく、関連会社や専門の派遣会社に登録して働くというのが主となっています。
グランドスタッフの雇用形態
グランドスタッフの雇用形態は正社員、契約社員、派遣社員、パート・アルバイトに分けられます。現在は正社員の数が減っており、全体に占める契約社員の割合が増えています。技術の進歩によってグランドスタッフの需要が減ったことが大きな要因です。はじめから正社員としてグランドスタッフの採用を行う企業もありますが、その倍率は非常に高くなる傾向にあります。
正社員と契約社員の最も大きな違いは給料です。毎月決まった額が入る上にボーナスや福利厚生がしっかりしている正社員と違って契約社員は時給制です。毎月決まってフルタイムで働くとは限りませんので、収入が安定しないことがあります。
また「ANAビジネスソリューション株式会社」のような航空専門の派遣会社に登録して、派遣社員として働く形態もあります。派遣社員も正社員と比べると収入の安定性に欠けます。
アルバイト・パートとして働くグランドスタッフはほとんどいません。そもそもアルバイトの採用をしている航空関連会社が非常に少ないです。元グランドスタッフの主婦が時間を限定して働く場合など、アルバイトがまったくないわけではないです。
なり方
グランドスタッフになるのに最も一般的なルートは以下です。
高校
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専門学校・短大・大学
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航空関連会社の試験を受ける
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入社
グランドスタッフは高卒者の募集はしていません。また、短大と大学で有利不利はありません。短大卒者は全体数と募集どちらも少なく、大卒者は全体数と募集が多いためどちらも倍率は同程度になります。航空業界はとても人気が高いため入社試験(ES、面接など)は高倍率になります。後述しますが、グランドスタッフに求められるのは語学力です。きれいな立ち振る舞いや所作もそうですが、何よりも語学力です。最低でも英検二級、TOEIC550点以上は持っておくようにしましょう。JALやANAなど、多くの航空会社が採用に求める基準となっています。
短大、大学卒業といった学歴は必要ですが、文系・理系や学部による有利不利はないです。特にこだわりが無ければ学費が安く、二年間で卒業できる短大をお勧めします。
肝心な応募先ですが、直接グランドスタッフの採用をしている航空会社はごくわずかです。
国内の大手2社(JAL、ANA)の場合は、旅客ハンドリング業務を担う専門のグループ会社で採用を行っています。地方空港の場合は航空会社の孫会社やバス会社、観光会社などがグランドスタッフを募集しています。よく業界や航空会社のことを研究してから採用試験に臨みましょう。
年収
グランドスタッフは雇用形態が多く、それぞれで収入が異なります。グランドスタッフの収入はその他の民間企業の社員と比べると低い水準になっています。
正社員の平均年収は約300万円です。日本の給与所得者の平均年収である436万円1と比べると、1カ月あたり10万円ほど低い収入になっています。初任給は18万円が相場です。
契約社員の時給は他業種とほとんど変わりがなく、1000〜1200円程度で、深夜給が出ます。フルタイムで働いたとしてもその年収は200〜240万円ほどです。派遣会社の派遣社員も同程度です。仕事内容のわりに給料が低く、やりがいがないと続けることが難しいかもしれません。
男女比
女性が圧倒的に多く、男女比は1:9です。近年男性グランドスタッフの割合は増えつつあり、男女比は2:8に近づいています。男女どちらもできるシゴトにも関わらず女性の割合がここまで高いのは、グランドスタッフやCAが女性のシゴトであるという認識が世間的に非常に強いためでしょう。
学歴
グランドスタッフに高卒者の募集はないので、専門・短大・大学のいずれかに進学しましょう。その際文理系、学部学科による有利不利はないので安心してください。しいて言うなら英語に強くなれる英文学の学科などがお勧めです。また、在学中に留学することが就職試験の際に強くなります。COVID₋19の影響で難しい面もありますが、可能であるならば短期でも留学することをお勧めします。
資格
英語資格が強いです。空港というのは何か国もの人々が利用する施設ですので、世界公用語の英語力というのは嫌でも必要になります。英検なら二級以上、TOEICなら600点以上を最低でも持っておく必要があります。
英語に限らず、たとえば中国語やフランス語など、日本語以外の言語を扱う能力があるに越したことはありません。
その他役に立つ資格を以下に挙げます。
観光英語検定
観光英語検定とは観光分野に特化した英語スキルを測る試験で、全国語学ビジネス観光教育協会が開催しています。現時点ではグランドスタッフ採用試験の応募条件には設定されていないものの、観光業界への就職に有利になる資格といわれています。
手話技能検定試験
ユニバーサルデザインの発想が広がるなかで重要視されるようになった資格です。グランドスタッフの現場でも手話を必要とする場面は多々あり、持っていて損はない資格です。
サービス接遇検定
サービス接遇検定とは、実務技能検定協会が開催している検定試験です。実際にお客様に接する際の接遇マナーや立ち居振る舞いなどの知識・技能、さらにサービスマインドも問われる試験です。接客業において有利にはたらく資格なので、ぜひとも取得しておきたい資格です。
勤務時間・休日
グランドスタッフはシフト制の場合がほとんどです。早番と遅番に分かれています。早番は空港が開く6時より早く出勤し、事前のミーティングを行います。6時に空港が開くと、最低限の休憩を除いて遅番が来るまで業務が続きます。14時ごろに遅番と入れ替わります。遅番は21時ごろ業務が終了します。飛行機の遅れや欠航がない限り残業はありません。休みは不規則ですが月に9、10日程あります。
やりがい・魅力
・空港の顔として働けることにやりがい、魅力を感じることが多いです。接客に関してお客さんから感謝の言葉をもらうことも多く、モチベーションにつながります。
・お客さんを案内して無事にフライトに間に合ったときの安心感や達成感もやりがいの一つです。
つらいこと・大変なこと
・時間が不規則で一定のリズムの生活を送れないため体調管理が難しいです。
・ハードな仕事のわりに収入が低く、グランドスタッフのシゴトが好きでないと続けることが大変です。
向いている人
グランドスタッフは立ち仕事のため、体力が必要になります。そしてクレームを言われることも多いため体力・精神力がある人が向いています。飛行機の遅れやその他トラブルが起きた際とっさに対応しなければならないので、冷静に目の前の問題を解決する力がある人が向いています。その際チームワークが重要になることが多いので、コミュニケーション能力が高くチームワークを大事にできる人が向いています。
以上でグランドスタッフについての記事は終了です。
グランドスタッフについて少しでも皆さんの理解が深まれば幸いです。
参考にしたサイト
・スタディサプリ
https://shingakunet.com/bunnya/
・キャリアガーデン
・神田外語学院
https://www.kandagaigo.ac.jp/kifl/contents/gs-job
・マイターミナル
- 国税庁 令和元年 民間給与実態統計調査を参照https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan2019/pdf/001.pdf