東大生が切るっ!
この東大生が切るシリーズは、シゴトニンラボの所長でもあり現役東大生のしうしうが、自ら独自に研究を進めたり分析をしたりしたあれこれをまとめていくこのシリーズ。
今回は資格編ということで全部で5回にわたって資格をめぐるあれこれをお届けしていきます。
資格。
いまや社会のありとあらゆるところに存在し、資格に携わらない日はほとんどない。
例えばお仕事の一日を想像してみてほしい。
朝起きて、天気予報を聞くと自分の住んでる地域のお天気をきく。これを伝えるのは「気象予報士」。
朝ご飯を食べて、家を出て車で出勤するその時必要なのは運転免許。忘れがちですが運転免許も立派な資格。
途中ガソリンがなくなってガソリンスタンドに寄って給油。ガソリンスタンドで給油してくれる人は「危険物取扱者 乙種第4類」の持ち主。
会社について、エレベーターに乗ろうとしたら一番左のエレベーターが不調で点検中。検査をする人は「昇降機等検査員」の資格を持っていて・・・
と出社をするまでにこんなにも多くの資格とめぐりあっている。
この一連のシリーズ資格を追え!では資格をめぐる様々な謎を解き明かしていく。
そもそもなんでこんなに資格があふれているのかということについては後日触れるとして、第一弾となるFileNo.001では、資格の歴史とその区分、資格ってそもそもなんなのかっていうことを考える。
日本最初の資格
ある物事について語るときには歴史について語ること抜きでは話せないわけで。今回の資格の話でも歴史抜きでは語れないでしょう。ということでまずは資格の歴史から。
日本で一番最初に資格が生まれたのは明治時代の医師資格でした。
明治以前の日本の医師の定義は非常に曖昧でした。
当時の代表的な医学書を読み、いくつかの症状に合わせて薬の処方ができれば医師を名乗ることが可能であり、試験なども存在していなかったのです。1
また現代の医師と大きく異なる点は、当時の医師の社会的地位や収入が決して高いものではなかったという点です。
医師を名乗ったからと言って、名誉や財産が得られるわけでもなく、時には軽んじられることすらあったそうです。
こうした医師を軽んじる傾向が変化した切っ掛けは日本の近代化である明治維新です。
明治維新を通じて、日本は西洋各国に習い近代化を進めました。
いくつかある近代化例の一つが衛生環境の改善と医療体制の整備です。
近代化という目標を掲げ、日本は急速に医療改革を行っていきます。
その象徴の一つが医師免許の整備です。明治元年から模索され続けた医師免許資格制度は、明治7年に最初の形として登場します。
この資格制度形成の際、最も重視されていたのが、医師の質の均質化(等しくすること)です。それには、どの医師の診察を受けても一定水準の技術を持っていることを保障する制度を作る必要があります。
すべての資格のミソはここにあります。
つまり、資格を得ているということは、資格を発行している機関が資格を持っている人間の特定分野における一定の能力を保証しているということなのです。
現在の日本の資格の種類
さて、このようにして始まった資格制度。
基本的な資格の重要な点は下記のポイントに集約されています。
「どの分野で」
「どんなヒトが」
「どんな能力・知識を獲得し」
「どんな業務をおこなうことができるか」
という点です。
そして、最後に発行体に応じて、現在では大きく分けて三つの形に別れています。
国家資格
国家資格とは法律によって、定められている資格です。
また、資格によって定められる分野・能力・業務等は命に携わる資格はほぼ全てが網羅されています。
実はこの国家資格を定める法は、国家資格法などという包括的な国家資格を扱う資格によって定められているわけではなく、分野毎に設定されます。
例えば弁護士の資格について定める弁護士法は、裁判法の中にある一方、理容師の資格を定める理容師法は社会法の中に含まれます。
国家資格の区分
国家資格は特に下記の業務範囲の観点から三つに区分されています。
この三つの区分はそれぞれ重なることも多く、特に(1)(2)はその大半が重なっています。
(1)業務独占資格
業務独占とは
①お金を対価に業務(=仕事として行為を行うこと)を遂行してはならない
②資格が無ければ(たとえタダでも)業務を行ってはいけない
③資格が無ければ行為を行ってはいけない
の三つに分かれます。
代表的なものに、①弁護士②医師③薬剤師などが挙げられます。
(2)名称独占資格
(1)と似て非なる存在なのが、名称独占資格です。
(1)の資格を持たない人間が(1)の資格保持者にのみ許されている行為を行った際に違法行為となるのに対し、(2)の資格の業務範囲に関しては、その資格名を名乗ることが禁止されているだけで、その業務に携わることは違法行為ではありません。
例えば、調理師は代表的な名称独占資格です。レストランのシェフやラーメン屋の店長になるためには必ずしも調理師資格を取る必要はありませんが、宣伝文句などに調理師による!など書いてはいけないということです。
代表的な資格に栄養士、調理師などがあります。
(3)設置義務資格
設置義務資格は、特定の業務を行う際にその人がいることが義務付けられている資格です。
レストランなどに設置が必要な食品衛生責任者やガソリンスタンドへの設置が義務付けられている危険物取扱資格などが代表例です。
公的資格
準国家資格とでも言うべき資格。
国家資格と違って、明確な定義がないため非常にあいまいです。
大きく分けると、国家から民間団体が委託された資格と公益社団法人が主催する資格がまとめて公的資格と言われています。
後ほど登場する民間資格との最大の違いは、資格を持っていることに対する社会的な評価でしょう。
公的資格は難易度が民間資格と比較し高いものが多いです。
また、主催団体が比較的信頼性の高い団体であることが多いことも評価の高さにつながっています。
代表的なものに、日商簿記検定や英検などがあります。
民間資格
国家資格と公的資格を除いたすべての資格がここに含まれます。
民間団体が「どの分野で」「どんなヒトが」「どんな能力・知識を獲得」を定めるという意味では国家資格や公的資格との類似性が高いですが、その信頼性には大きな違いがあります。
民間資格には法的な根拠や業務を行うことができないものも多く存在し、
ではその有用性・信頼性をどのように見抜けばいいのでしょうか。
次の項ではその見抜き方を考えていきます。
日本で一番難しい資格は?
ここまで読んでくださった皆さん、ありがとうございます。ここで一度小休止といきましょう。興味があればこの項もぜひお読みください。
世のなかには数多くの資格が存在していますが、難易度で見たときにはどの資格が一番難しいのでしょうか。
例えば三大難関資格と呼ばれる、司法試験、公認会計士、医師やIT関連のITストラテジストなど様々な資格があげられていますが、大きく分けて私は医師か司法試験合格かの二択であるといえると思います。
医師の難易度を上げているのが、医学部入試と医学部内での勉強量です。医学部の入試はご存知の通り日本でも最も難しい学部です。大学によっては入試の倍率は100倍を優に超えます。
また入学してからも毎年勉強をしていても留年してしまう生徒が多く出るほどの難易度です。最終的な医師国家資格自体の合格率は90%前後とかなり高めですが、これは多くの大学が、合格できるレベルの学生しか試験に排出していないからです。
これに対して弁護士はその門戸が医学部に比べれば比較的広めです、4年生大学を卒業している生徒向けの法科大学院ルートか、司法試験予備試験ルートの二通りのどちらかを通ることで司法試験に挑戦できます。前者であれば法学部を卒業しており、一定の勉強を積めば合格できることから比較的難易度は低めですが、後者の予備試験は受験資格なしという広い門戸の代わりに、合格率4%という非常に難しい試験になっております。
法科大学院を修了もしくは予備試験を通過した人のみが受験できる司法試験の合格率は15%となっており、勉強をしてきたとしても厳しい試験です。
医師と弁護士資格、それぞれの難易度を左右する要素は多くあると思いますが、私としては医師資格の方が難しいと思っています。
医師を目指すには生育環境が非常に強く影響します。私立大学の医学部は4年間で数千万円、また医学部を目指すためには家庭内で勉強のバックアップ体制が強固にできている必要があります。こうした金銭面・精神面でのサポートができる家庭は日本でも相当限定されています。これらの側面から私としては医師資格獲得の方が難しいのではと考えています。
それでは、本題に戻りましょう。
どのように資格の有用性を見抜けばいいか
前述の通り、世の中には多くの資格があり、その資格の種類も様々であることをお伝えしました。ではこれらの資格の有用性はどのように見抜けばいいのでしょうか。大きく分けて三つの視点で分析可能です。
①業務に法的に必要か否か
この点は非常に分かりやすいです。例えばガソリンスタンドでの勤務に危険物を取り扱うための資格が必要な様に、業務を行う上で法的に必要な資格であれば、有用を通りこして必要になります。
②自分にメリットがある資格か否か
②-1 金銭的メリット
企業によっては、資格を持っている人間に給料を上乗せで払う給与体系を採用している企業があります。例えば、不動産業界では宅地建物取扱資格(通称宅建)を取っている社員に1〜3万円程の給与の上乗せを行っています。バイト先や、職場の賃金規定をご覧になって資格による昇給がないか是非チェックしてみましょう。
②-2 作業効率が上がる・業務遂行可能範囲が増える
職種によっては、その資格を取ることで網羅的に知識が把握できたり、これまで関わることができなかった業務に関わることが可能となる職種もあります。
多くの民間資格がこの②-2に当てはまる分野になりますが、ぜひその資格を取る際には一歩引いてご確認ください。実際に受講した人に直接話を聞きにいき、どの程度その資格が有用か、その資格で学べた知識が実際の業務等に役立っているのかを聞き、その話を踏まえてぜひご自分に必要かどうかを確認してください。
②‐2 そこで学ぶスキルが自分の目的に合致するか否か
直近で役に立たなくても、長期的な自身の生き方やキャリアに関して役に立つようなものであればその資格は有用になります。
具体的な例をお話ししましょう。私の友人に不動産業界で営業をやっていた人がいます。その方は就職前から起業を志していました。入って数年が経ち久々にお会いすると、僕に今AIに関する資格をとっている、これは次の世界の仕組みとなるもので、これを抑えなければどんな分野でも技術トレンドには全くついていけなくなると言っていました。G検定・E検定と呼ばれる資格で、特にE検定はエンジニア向けの資格ではありましたが彼は自分の未来のためにその資格を取得していました。
受験者数が少ない国家資格は?
再び小休止といきましょう。ここでは日本で受験者数が少ない国家資格を紹介する。
毒物劇物取扱者という国家資格がある。文字通り、毒物や劇物を取り扱うための資格で、特にこれら毒物劇物を輸出入させる業種などでは必ず必要になる資格だ。
具体的には、毒物で言えば水銀、劇物で言えばアンモニアなどが身近な物質として挙げられる(アンモニアっておしっこじゃ~ん!何が劇物なのって思う人いるかもしれないけど、濃度0.1%以上のガスを吸うだけで人体には多大な影響が及ぼされる)。
この毒物劇物取扱者の受験者は令和2年度で376人で、日本の国家資格の中で最も少ないが、それは毒物劇物の取扱は薬剤師や大学や高専などで応用化学を学んだ人であれば取扱者ができるから。資格の受講者が少なかったとしても国としてはこうした毒物劇物を管理できる人の資格を定めておくのは重要であろう。
まとめ
・日本最古の資格は医師資格
・資格は発行団体が、その分野における能力や知識を保証するもの
・資格には国家資格・公的資格・民間資格の3種類があるが、それぞれの信頼性には違いある
・資格は無暗矢鱈に取れば良いものではなく、自分の生き方に照らし合わせて取るべき
出典:
https://www.mhlw.go.jp/kouseiroudoushou/shikaku_shiken/ishi/
https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/kenkou/iyaku/sonota/d_g/shiken.html