公務員とは
公務員とは国や地方自治体、国際機関といった公共サービスを執行する職員のことを指します。国民全体の奉仕者と呼ばれたりもしますね。公務員は国家公務員と地方公務員の2つに大別されます。職種は各省庁の職員、裁判官や自衛官、教員や消防士など、さまざまです。その数は2019年度において約333万人に及びました。そのうち国家公務員は約58万人の18%でした。それぞれの違いを見ていきましょう。
国家公務員と地方公務員の違い
国家公務員と地方公務員は採用先が違います。前者は主に立法、司法、行政といった政府の根幹を支える機関に採用されます。後者はその地域に密着した行政サービスを行う地方自治体に採用されます。国レベルの施策を管理する省庁に努める国家公務員に対して、県単位・市区町村単位の施策を管理・実行するのが地方公務員です。
仕事内容
国家公務員が国の公務に従事するのに対して地方公務員は地方の公務に従事します。就職先は各都道府県の市区町村の自治体です。地域に密着した行政サービスを行い、地域の生活を支えます。
地方公務員は「一般職」と「特別職」に分けられます。ほとんどが一般職であり、特別職は知事や市町村長、議員などです。一般職は役所の職員の他に警察署、消防署や図書館、病院など、たくさんの場所にあります。これらの一般職は以下の6種類に分けられます。
地方公務員一般職
行政職
主に事務や窓口といった行政サービスに関わる職種です。役所の受付や対応にあたるシゴトです。行政職は市町村や都道府県ごとに募集され、東京23区は東京特別区として募集されています。
心理職
心理学を用いる職種で、児童相談所などの職員がこれにあたります。育児放棄や児童虐待といった社会問題が浮き彫りになっている現代において需要が高まっている職種です。
福祉職
福祉に関わる職種で、福祉事務所などでケースワーカーとして勤務することもあります。ケースワーカーとは福祉事務所で相談援助の仕事をする人のことです。身体障害に関する制度の説明や生活保護者の家に訪問に行くこともシゴトの1つです。
技術職
インフラを提供する地方自治体では理工学や建築学などの専門知識を持った技術職の募集も行っています。建築、科学、電気、農業などの職種があります。技術職の区分や採用は地方自治体によって異なります。
公安職
治安維持に関わる職種のことを「公安」といいます。公安職の多くは国家公務員に含まれますが、地方の警察官や消防士は地方の公安職です。いずれにも体力試験があります。
・専門職
国家資格や特定の資格を持つ人に限定される職種のことです。看護師や薬剤師、司書などが該当します。
地方公務員特別職
地方公務員特別職について理解するには「地方公務員法第3条1」が重要になります。
特別職は一から六までありますが、まとめると3つに分けられます。
政治職
就任するために公選または地方公共団体の議会の選挙が必要とする職のことです。例えば「首長」、「議会の議員」、「監査委員」などです。これらの職は住民または住民の代表である議員の意思に基づいて選出されるため、「成績主義2」や「服務規律3」を適用するのは適当ではないと考えられています。
自由任用職
成績主義によることなく、任命権者との人的関係や政治的配慮に基づいて任用できる職のことです。例えば地方公営企業4がこれにあたります。こうした職も「成績主義」や「服務規律」を適用するのは適当ではないと考えられています。
非専務職
非専務職とは、生活を維持するために公務につくのではなく、特定の場合に、一定の学識、知識、経験、技能などに基づいて、随時、地方公共団体の業務に参画するものの職をいいます。調査員、嘱託員5、非常勤の消防団員・水防団員などがあります。
地方公務員のなり方
地方公務員になるには各自治体が行う一次試験(筆記試験)と二次試験(面接)に合格する必要があります。一次試験は上級・中級・初級の3つがあります。上級は大学卒業程度、中級は短大・専門学校卒業程度、初級は高校卒業程度のレベルです。現場に出て働くのが中級初級、本庁に勤める可能性が高いのが上級であり、出世コースです。どの級を受けるかによって採用後のシゴトもキャリアも変わります。試験の内容や科目は地方自治体や職種によって変わりますが、基本的に一次試験は教養科目、専門科目の2科目からなります。一次の筆記試験に合格すると二次試験の面接です。グループディスカッションや集団面接を行います。
二次試験の面接に合格するとはれて採用です。配属は人事によって決められます。配属希望の提出はありますが、必ずしも希望の配属になるとは限りません。
雇用形態
雇用形態は大きく以下の3つに分けられます。
・常勤(正規職員)
・定められた期間のみ働く形態
・定められた時間内で働く形態
常勤(正規職員)
任期を定めない常勤の公務員のことを正職員と言います。最も多い雇用形態で、給与もある程度水準以上のため非常に安定しています。昇進もある代わりに転勤や異動もあります。
定められた期間のみ働く形態
3カ月または6カ月というある期間だけ契約をして働く形態です。契約の更新が可能なのは1回までのため、長くても1年間しか働くことができません。働いている間は正規職員とほとんど同じ待遇で働くことができます。産休・育休で欠員が出た場合や一定期間に専門的な技術を持った人が必要な場合などに採用されます。
定められた時間内で働く形態
フルタイムよりも短い時間で働く形態です。1週間の勤務時間が正規職員の4分の3未満の公務員を非常勤職員といいます。非常勤職員は教育委員会の理事や消防団員などの「特別職」とその他の「一般職」に分かれます。
公務員を目指す人は基本的に正規職員を目指したほうがいいです。定められた期間や短い期間での雇用契約を望む人は、各自治体のホームページなどにアクセスするなど、情報を自身で調べていく必要があるでしょう。これらの雇用形態はいきなり正規職員になるのではなく現場に入り経験を積みたい人や、すぐに手に職をつけなければならない人などにとっては都合のよいものです。
地方公務員の年収
令和元年に行われた国税庁の「民間給与実態統計調査6」によると、日本の給与所得者の平均年収は436万円です。給与所得者とは、労働によって給料を得るすべての人を指し、アルバイトや非正規雇用者も含みます。
地方公務員の平均月収は約37万円であり、これに夏冬2回のボーナスを加えての平均年収は約630万円ほどです。初任給は18万円ほどで、年収は260~280万円になります7。
地方公務員の年収の水準は高いことがわかりますね。
また福利厚生や退職金が充実しており、非常に安定した収入を得ることができるシゴトです。
男女比
地方公務員の男女比を一概にいうことはできません。職種によってまったく異なるからです。例えば看護や保健職であれば女性が95%以上を占めますし、医師・歯科医師や消防職は男性が約90%以上です。一般職であれば、女性の割合は30~40%程であり、近年女性の就職率は上がっている傾向にあります。
スケジュール例
一般的な役所勤務の場合
08:30 出社
09:00 窓口対応
12:00 昼休憩
17:00 窓口対応
19:00 帰宅
勤務開始時間の10分か20分前くらいに出社し、メールに目を通したりコーヒーを飲んで過ごす人が多いです。仕事内容は基本的には窓口の対応です。12時を過ぎることもありますがほとんど決まった時間に昼休みを取ることができます。17時に役所が閉じ、残りの事務作業やメールの確認を行い帰宅です。残業がない場合は19時頃には家に着くケースがほとんどです。
これはあくまで一般的な役所勤務のケースです。職種によっては不規則で夜勤がある職種もあります。
やりがい・魅力
1番の魅力は「安定性」です。民間の企業と異なり、業績不安による給与カットやリストラが存在せず、育休・産休や退職金など福利厚生がしっかりしていることは公務員の特徴であり大きな魅力の1つです。
人や地域を支える仕事なので、それ自体がやりがいになります。人とコミュニケーションを取る機会がとても多いのも特徴で、それが楽しさにつながることも多いです。
休みが暦通りなのも魅力かもしれません。
大変なこと・つらいこと
たくさんの部署があり、それぞれ忙しい時期は遅くまで残業したり休日出勤を求められることもあります。地方公務員に限ったことではありませんが、これは大変なことです。
職種によってはシゴトが同じことの繰り返しであり、それが退屈になってくることがあります。
また年功序列で古い慣習が残ってる場合が多々あり、「人間関係」を理由に辞める人が少なくないです。
まとめ
地方公務員の職種は様々ですが共通していえることは、どの職種も地域や市民を支える重要で責任のあるシゴトだということです。
今回の記事では「地方公務員」とまとめた上で広く浅く解説・紹介しましたが、後日それぞれの職種に焦点を当てた狭く深い記事をアップしますのでおまちください!
最後まで読んでいただきありがとうございました。
参考にしたサイト
・総務省
https://www.soumu.go.jp/menu_hourei/c_koumuin.html
・キャリアガーデン
- 地方公務員法 http://roppou.aichi-u.ac.jp/joubun/s25-261.htm
- 公務員任用の根本基準を意味するもので、ある職に就くにあたって能力が実証されなければならないということです。
- 公務員が職務遂行上または公務員としての身分に伴って守るべき義務のことです。
- 都道府県及び市区町村が運営する。水道事業やガス事業などに取り組んでいる。
- 非正規雇用の職員の一種
- https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan2019/pdf/001.pdf
- 「平成30年度国家公務員給与等実態調査https://www.jinji.go.jp/kankoku/kokkou/30kokkou.html」をもとにしています