皆さんは「秘書」についてどれくらい知っていますか?
社長の横に立つ女性でスケジュール管理などを行っているというなんとなくのイメージがあっても、具体的にはどのようなシゴトなのか知らない人も多いと思います。
今回は秘書という職業についてまとめていこうと思います。
秘書とは?
最新の広辞苑には
「要職にある人などに直属して、これを助け、また機密の文書や用務をつかさどる職」
と書かれています1。我々の持つイメージと近いですが、具体的な仕事内容はわかりませんね。以下で解説します。
仕事内容
秘書の主な業務は「スケジュール管理」「来客・電話・メール対応」「文書作成」「上司の社内業務サポート」「手配業務」の5つに分けられます。それぞれ見ていきましょう。
スケジュール管理業務
上司のスケジュール管理や調整は、秘書の最も大切なシゴトのひとつです。
いつ、どこで会議があるのか、誰と打ち合わせをするのか、予定を把握し、上司に伝えたり、調整を行ったりします。また新しいアポイントが入った際に、対応できる日時や時間帯を確認したり、打ち合わせの会議室を手配したりすることもあります。上司が効率よくシゴトできるように無駄のないスケジュールを組むことが大事になります。
もし重要なアポイントの日程を間違えていたり、ダブルブッキングなどしてしまうと秘書としての信頼がなくなってしまいます。
来客・電話・メール対応
上司に来客があった際は、秘書が応接室に案内をしたり、必要な書類を用意したりします。上司が不在の際に電話で代わりに対応するのも秘書の役割です。
また、上司に届いたメールの内容をチェックしておくことも、秘書の大切な仕事です。簡単なメールの返信であれば、上司に代わって秘書が行うこともあります。
具体的にどこまでを秘書が担当するのかは、それぞれの上司の考え方や企業のスタンスによって異なるものです。上司の意向や企業としての優先順位を把握して適宜判断し、対応すべき業務の幅を決めることが大切です。
文書作成
上司の業務に関連する文書や資料作成、管理を行うのも秘書のシゴトです。素早く資料をつくりあげるためのパソコンスキルが必須となります。経費の精算書類や報告書類、取引先等に書類を送る際のカバーレター、打ち合わせに使用する資料など、作成する書類の種類は様々です。また作成した書類の管理や保管、ファイリングといったシゴトもあります。必要となったときに適切な書類をすぐ取り出せるよう、日頃からルールに従ったファイリングを行っておくことが大切です。
上司の社内業務サポート
上司が社内で無駄なく快適にシゴトするためにサポートすることも重要な仕事のひとつです。清掃や会議室・応接室の予約、郵便物の管理、備品の調達・管理など、総務や庶務の管轄である仕事も、上司の業務効率化を図るため、秘書が行うことがあります。
また企業の経営や管理職を担う上司には、社外からだけでなく、社内からの問い合わせや書類確認依頼等も数多く回ってきます。
秘書は、これらの受付けを行い、整理して上司がシゴトをこなしやすい状態にして引き継ぎます。掃除や受付、書類の整理や管理など、秘書のシゴトが凝縮されている業務です。
手配業務
会議を行う部屋やタクシー、出張先のホテルや会食場所などの手配をするのも秘書のシゴトです。
以上が秘書の具体的な業務です。上司の業務に関するサポート全般を行い、上司の業務が効率的に進むよう管理するシゴトとまとめることができます。
なり方
新卒で秘書として採用されるケースはほとんどありません。秘書には社会人としてのマナーや社会人スキル、その会社のシゴトに対する理解が求められるためです。
秘書になるルートのほとんどは以下です。
高校・専門・短大・大学卒 一般企業退社
↓ ↓
一般企業に入社 秘書として中途採用
↓
数年後秘書室に配属
上記の通り新卒を秘書として採用する企業、ケースはほとんどありません。まずは事務職などで企業に入社し、数年間社会人としての経験を積みます。その後本人の希望に加えて適性があると認められた場合に秘書として秘書室に配属されるというケースが最も一般的です。ある程度の規模の会社でない限り秘書というシゴトがないこともあるので、入社前にしっかりと企業の研究をしましょう。
もうひとつは秘書の中途採用です。企業に数年勤めた経験があり、採用試験の際の振る舞いでスキルが足りていると判断されれば秘書として採用されます。前のシゴトが肌に合わなかったなら秘書を目指すことを考えてみてもいいでしょう。
2通りの秘書のなり方を挙げましたが、どちらの場合も「秘書技能検定試験」の資格を持っていると有利にはたらきます。秘書検定については後で詳述します。
また一般企業の秘書以外に、「弁護士秘書」や「議員秘書」「大学教授秘書」などの特別な秘書も存在します。それらの場合は社会人スキルに加えて専門知識や勤務経験が必要になります。
秘書の雇用形態
秘書の雇用形態は正社員、派遣社員、個人秘書、に分けられます。
正社員
上記のように正社員として企業に入社し、秘書となる最も一般的なパターンです。正社員ですので、福利厚生やボーナスの支給など待遇がいいことが多いです。
派遣社員
企業と直接契約を結び就職するのではなく、人材派遣会社に登録してマッチングした企業に3カ月や半年間などの期間勤める働き方です。正社員になる前提で一定期間派遣社員として働き、そのまま正社員に上がるケースもあります。給料は時給制で、1200〜1800円程です。休日出勤や残業代はしっかり支給されますが、ボーナスは無く、福利厚生などの待遇は正社員に比べると劣ります。
個人秘書
フリーランスで働く個人と契約を結び、個人秘書になる働き方もあります。給料や待遇は個人によって大きく異なります。個人の稼ぎが大きくなったり、気に入られるなどの要素で大きく給料が上がる可能性を秘めています。
年収
様々な職業の年収を調査しているサイト「平均年収.JP(https://heikinnenshu.jp/)」によると秘書の平均年収は395万円です。これは正社員や派遣社員、外資系企業の秘書全ての平均です。
一般企業の正社員秘書だけで見ると平均は330万円です。民間企業の平均年収が436万円2と比べると低い水準になっています。
外資系企業は非常に年収が高く、秘書全体の年収を釣り上げています。外資系企業の秘書を目指す場合は高い英語力が求められます。
男女比
秘書全体ではやはり女性が多いです。男性秘書は少ないですが、一定数存在します。特に議員の秘書が多いです。秘書になるのに重要な秘書検定の資格所有者の男女比は1:9であり、これは秘書全体の男女比と同じです。
学歴
秘書を目指すうえでは学歴よりもスキルや資格が必要です。高卒よりも短大・大学卒のほうが一般企業に入社しやすいので、そういった意味では大学を卒業するに越したことは無いでしょう。
資格
秘書になるために必須の資格はありません。その中で秘書の多くが持っているのが、「秘書検定」と呼ばれる「秘書技能検定試験」です。ビジネスにおいて重要なスキルに関する資格なので、秘書に限らず多くのビジネスマンが持っています。最近では社員全員に受験をさせる企業もあります(筆者調べ)。
そんな秘書検定についてまとめていきます。
秘書検定とは
秘書検定とは、秘書に求められる知識・技能について問う試験です。試験に合格すると、秘書に求められる知識・技能のみならず、一般常識や敬語の使い方、電話応対やビジネス文書の作成など、社会人に欠かせない能力などが身についていることも証明できます。
受験資格は無く、受験料(3000円程度)を払えば誰でも受験することができます。どの級からでも受けることが可能です。
難易度と試験内容
3級…一般常識やビジネスマナーに関する基本的な問題で、高校生向け。
2級…電話対応やシゴトの優先順位など応用力が求められます。難易度はやや高く、持って いると就活時に有利になります。大学生、社会人向けです。
準1級…中堅秘書に必要な判断力や対応力が求められます。2級までと比べて難易度は上が ります。二級を取得している人および秘書向けです。
1級…上級秘書としての能力が求められます。現役秘書向けです。
試験内容ですが、2,3級は筆記試験のみで、それ以上の級は二次試験として面接があります。
3~1級まで全て同様に「理論」と「実践」の2科目の筆記試験で6割以上取ることが合格条件です。
2,3級は9割がマークシートで1割が筆記なのに対して準1級、1級は6割がマークシートで4割が筆記です。
「理論」では「必要とされる資質」「職務知識」「一般知識」の3つのテーマが問われます。
「実践」では「マナー・接遇」「技能」の2つのテーマです。
過去問や問題集を用意し、しっかりと対策しましょう。
面接試験
準1級と1級は筆記試験合格後に面接試験があります。面接は決められた時間内に問題文を読み、その後問題文に適した対応を面接官に対して行います。
・問題例
次の内容を2分間で覚え、
秘書が上司に話す言葉で報告しなさい。
「室内でバーベキュー気分が味わえる調理器ができた。
赤外線を使用するので油も不要で煙も出ないのだという。」
・解答例
「ただ今お時間よろしいでしょうか。
室内でバーベキュー気分が味わえる調理器ができたそうでございます。
赤外線を使用するので、油も不要で煙も出ないということです。
以上でございます」
(http://legaldoctor.net/pre-first-grade/entry38.htmlを参照)
合格率
例年2級、3級の合格率は60%を超えています。一方準1級と1級の合格率は30%前後であり、難易度の違いがわかります。
試験日程
2級3級は毎年2、6、11月に行われます。準1級と1級は6月と11月の年2回です。受付期間は試験の1〜2カ月前に行われるので注意しましょう。
以上で秘書検定についての説明を終わります。秘書検定の他には「ビジネス実務マナー検定」や英語系の資格なども持っていて損はないでしょう。
スケジュール例
08:00 上司が来る前に出社
08:30 掃除や空気の入れ替え、メールチェック
09:00 上司出社
09:30 会議
11:00 会議終了、スケジュール確認
11:30 来客対応
12:30 昼休憩、食事
13:30 文書作成
15:00 上司外出
15:30 電話対応やメール返信
17:00 翌日の会議資料作成
18:30 退社
朝は上司より早く出社して換気や掃除、メールチェックを行います。上司が出社し定時になったら始業です。常に上司のスケジュールを把握して動きます。来客の対応時にはお茶を出し、来客が帰ったら型付けをします。上司のサポートで文書の作成を行うこともあります。また上司が外出する際のタクシーの手配も秘書のシゴトです。特に予定が詰まっていなければ定時に帰ることができます。
やりがい・魅力
・秘書として社内外の多くの人と交流できることは、とてもやりがいのあることだといえます。日常生活では出会えない役員クラスなど、広い視野をもった人たちと交流する機会も増え、自らの見識も広がります。
・コミュニケーション能力が上がることが魅力のひとつです。上司のスケジュール調整や、来客との対応時に、社内外の多くの人と会話を交わす機会があります。交渉力・折衝能力、ビジネスマナーなどが身につくのが実感できるでしょう。
大変なこと・つらいこと
・上司が中心のシゴトなので上司に合わせなければならない場面が多いです。また業務の幅が広く仕事量が多いのも大変なところです。
・上司のクライアントは経営陣など立場が上の人が多く、気疲れすることも多いかもしれません。
以上で秘書の記事は終了です。
秘書のなり方や雇用形態、秘書検定についてなど少しでも皆さんのためになれば幸いです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
参考にしたサイト
・キャリアガーデン
・マイナビAGENT
https://mynavi-agent.jp/backoffice/knowhow/secretary/
・ユーキャン
- ハンターハンターキメラアント編で蟻の王メルエムに仕える3人の直属護衛軍がまさに秘書ですね(わかる人にはめちゃくちゃわかる)
- 令和元年 民間給与実態統計調査を参照https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan2019/pdf/001.pdf