大学教授とは
小中学校や大学などの「学校」に所属し、教育に従事する人・シゴトのことを教員といいます。その中でも大学に勤める人を「大学教員」、大学教員の中の職種のひとつが大学教授です。
大学教授は大学教員の中でも位が高く、学生への講義、論文指導の他、自身で研究も行います。始めに大学教員、大学教授へのなり方を見ていきます。
大学教授になるには
実は大学の教授になるには、たくさんのステップを踏む必要があるため、難しい上に長い時間がかかります。
大学卒業後に大学院へ進み、5年かけて「博士号」を取得する必要があります。その後、「ポスドク」と呼ばれるある種の研修期間を経て、第一ステップである「助手」や「助教授」になります。その後は実績を積み、地位を上げていきます。流れとしては以下です。
大学卒業
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①修士課程前期二年間(修士課程)
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②修士課程後期三年間(博士課程)
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③ポスドク
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④助手・助教授
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⑤講師
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⑥准教授
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⑦教授
それぞれ解説していきます。
①②修士課程について
修士課程とは、大学院において「修士号」「博士号」を与える教育課程です。前期課程が二年間、後期課程が三年間あります。前期課程では二年間にわたり、学生は講義を受けながら、自身の修士論文を執筆します。
前期課程二年次には、修士論文の執筆の他、就活をしたり、後期課程に進学を希望する人は、入試の対策をします。大学同様、必要な単位数を取得し、修士論文が認められれば無事に「修士号」を取得し卒業できます。前期の修士課程取得後は、半数以上の人が就職しており、後期の修士課程に進学する人は全体を見るとわずかです。
博士課程とも呼ばれる後期の修士課程も、基本的にやることは前期と同じです。講義を受けながら、博士論文を執筆します。博士論文で行う研究はより専門性、独自性が求められます。博士課程三年次、就職希望者は就活を行い、大学教授を目指す人は大学教員のポストに応募し、卒業後の春から「ポスドク1」として大学に所属します。応募する大学は必ずしも自分の通った院のある大学である必要はありません。ただ、自分が所属していた大学のほうが教授とのつながりがある分入りやすいです。
③ポスドクについて
ポスドクとは「博士号(ドクター)取得後に任期制の職に就いている研究者や、そのポスト自体を指す語」とされています。「博士研究員」とも呼ばれます。ポスドクは主に数年間の研究プロジェクトごとに雇用されますが、その後の地位の保証はありません。任期付きの非正規雇用というイメージです。2009年の調査によると、ポスドクの数は全国で1万7000人を超えています。技術革新の担い手として期待される若手研究者の多くが安定した職に就けず、キャリアに不安を抱えている実態を「ポスドク問題」といいます。
中には、ポスドクを経ず、最初から助手、助教授としての内定をもらう学生もいますが、ポスドクにならざるをえない教授希望者が多いのが現実です。
ポスドクの仕事内容
ポスドクは任期付きの研究員であり、給料をもらって研究のサポートや教授の授業の手伝いなど様々な業務を行います。具体的には以下のような業務が挙げられます。
・プロジェクトの研究
・プロジェクトメンバーとの連絡調整
・スケジュール管理
・研究予算の管理
・プロジェクトで使用する物品の発注・管理
・中間報告書、最終報告書の作成
・プロジェクト広報
・成果報告会など対外イベントの企画・運営
ポスドクとしてのシゴトをこなしながら助教授の公募に応募したり、研究室の教授から推薦をもらうことで、助手や助教授になることができます。
助教授になるのも簡単ではなく、ポスドクとして数年、中には10年ほど過ごすこともあります。
④助手・助教授について
助手・助教授の仕事内容は、研究と教育の2つが中心です。基本的には教授のサポートという面が強い職です。かける時間が最も長いのは研究で、自身が決めたテーマに沿って実験や調査を行い、論文を執筆するのが主な仕事といえます。他の大学教員の職位に比べると、研究にかけられる時間が多いのは、助教ならではのメリットでもあります。
そして教育という面では、大学での講義を実施したり、実習を行ったりすることもあります。基本的に助教の多くは教授や准教授の研究室に属するため、教授の講義におけるサポート業務など、事務処理のような仕事も行うことがあります。
試験問題の採点や、研究室にいる学生の指導といったことも仕事に含まれるため、研究業務とのバランスをうまく取る必要があります。
助手と助教授の違いは授業を担当できるかできないか、です。助手は自分で授業をできませんが、助教授は授業を持つことができます。
それぞれ研究の成果が学会や教授陣に認められると、講師にステップアップします。
⑤講師について
講師は助手・助教授よりも上の位ですが、常勤と非常勤に分かれています。常勤は決まった大学に正式に雇われている正社員のようなもので、実質准教授と同じような扱いです。
一方で非常勤講師はパートやアルバイトと同じ扱いで、学生への授業のみを行います。副業も認められていて、著名人などが週に一回ほど大学で講義を行うことも珍しくありません。
講師は、論文の数やその分野で業績が認められるなど、研究者として一定の評価を得ることで准教授に昇格します。
⑥准教授について
准教授ともなると、学会内でかなりの業績を出していないとなれないため、年齢層も上がっていきます。准教授の平均年齢は47.6歳であり、20代、30代の准教授は全体の30%程度です。
仕事内容は講師と同じです。自身の研究を進めながら、学生に講義を行います。教授になるためには、各大学で基準となる本数の論文を書き、そのうえで内容が評価されなければいけません。
⑦教授について
博士課程を卒業し、助手、助教授、講師、准教授とこなしながら論文を書き続け、学会や大学から評価されることでようやく教授になります。大学教員の最高職ですが、仕事内容は講師、准教授と変わりません。自分のゼミや研究室を持ち、学生に指導をしながら自身の研究を進めます。
教授になるまでの流れは以上の通りです。
非常に長い時間を必要とすることがわかります。教授になれなくとも、助教授や講師まで職位を上げれば生活は非常に安定します。研究者として生計を立てたい、授業をもって学生に教えたいというような目標であれば、教授にならずとも達成することができます。
仕事内容
大学教授の仕事内容は「研究」と「教育」の2点に尽きます。
日々論文や文献調査などの研究を行い、大勢の学生に対して講義を行いながら少人数のゼミを持ちます。講義を行うといってもその方法は教授によってかなり差があります。基本的に教授がしゃべり続けるものや映像を多く使うもの、学生同士でグループワークをさせるもの、板書を多く使うものとそうでないものなど、講義の形式は多種多様です。
研究面では、文献調査をしながら論文を書き、学会に参加しています。教授に限らず大学教員はみな「研究者」であるため、研究の時間や活動を大事にしています。また名のある教授は「有識者」としてニュース番組の解説に呼ばれたり、国や地方自治団体のおこなう有識者会議に参加することもあります。
雇用形態
大学教員全体を見ると、非正規社員やアルバイトも少なからず存在しますが、准教授、教授はほとんどが正社員として大学に雇われています。非正規社員は例えばポスドクであったり、単発で授業を受け持つ非常勤の講師が当てはまります。また、TA(TeachingAssistant)と呼ばれる、教授の授業のサポートを時給で行う学生アルバイトを採用している大学も多く存在します。
また、国公立大学で働く大学職員は公務員のような安定性と待遇から「みなし公務員」とよばれることもあります。
年収
平成29年に行われた賃金構造基本統計調査によると、大学教授の平均年収は1070万円でした。平均月収が66万円、平均年間ボーナスが283万円です。日本の給与所得者の平均年収である436万2と比較すると、とても高い水準になっています。
同調査の結果、講師の平均月収は49万円、准教授は55万円となっており、こちらも高い水準です。
ちなみにポスドクの平均年収は300万円程と言われており、一般的なサラリーマンより低い水準です。シゴトニンラボ独自の調査によると助手・助教授に上がると年収は500~600万円程になり、収入は非常に安定します。給料を上げたいのであればいち早くポスドクから助手に上がらなければなりません。そのためには自身の研究で結果を出す必要があります。
スケジュール例
08:30 出勤
09:00 講義の準備
10:30 講義
12:00 昼休憩
13:00 講義
14:30 講義終了
15:00 翌日の講義準備など
19:00 退社
出社時間はその日の講義の時間によって異なります。基本的には大学にある自身の研究室(1人部屋)で過ごします。講義終了後は次の日の講義の準備をしたり、自身の研究のためのデータ整理や文献調査、著書の執筆を行います。
講義がない日も平日は出勤して上記のような作業を進めます。
勤務時間・休日
大学教授には定時が存在しません。一限が始まるのがどの大学も9時頃で、講義がある場合はそれより前に出勤しますが、講義が無い場合は昼頃にゆっくり出勤する人も多いです。
休日についてですが、極端な話授業がない日はすべて休むことも可能ですが、それぞれ自身の研究や講義の準備などすることが多いので週に2日程休み、5日出勤する人が多いです。
やりがい・魅力
やはり一番の魅力は自分の好きな研究を行う環境のある職場で働ける点です。研究に打ち込みながら講義で自身の研究分野についての見聞を広めることができるのは研究者として嬉しいことだと思います。
また給料が高く、社会的信用もあり、時間を作りやすいという三拍子が揃ったシゴトです。
やりがいも魅力もたくさんあると言えます。
大変なこと・つらいこと
常に研究を続け、論文などの成果を出し続けなければならない大変さ、プレッシャーはあります。また、研究者として研究のみを進めたくても、講義をいくつか持たないといけないため、必ずしもやりたいことに専念できないという悩みが人によってはあります。就業する大学によっては資金不足などの悩みもあることでしょう。
参考にしたサイト
・アカリク
・キャリアガーデン
・スタディサプリ
・マイナビ学生の窓
- Post-doctoral fellowの略称。doctoral fellowは博士号取得者を意味する。
- 国税庁 令和元年 民間給与実態統計調査を参照https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan2019/pdf/001.pdf