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獣医になるには?仕事内容や年収と合わせて解説‐シゴトニンラボ

今回紹介するシゴトは「獣医師」です。

私は獣医師というと、昔の少女漫画『動物のお医者さん』を思い出します。北海道の獣医学部を舞台にした、独特な笑いがある漫画です。単行本も12巻と少ないため興味のある方はぜひ読んでみてください。

『動物のお医者さん』では、シベリアンハスキーやハムスター、アザラシの赤ちゃんまで、様々な動物が出てきます。では、実際の獣医師のシゴトではどのような動物を診察し、勤務先によってどんな違いが出てくるのでしょうか。獣医師のシゴトについて、詳しく見てみましょう。

仕事内容

獣医師の主なシゴトは、動物たちの診察と治療の2つです。

獣医師が診察する動物は、数多くいます。主には家庭で飼われている犬や猫などのペットから、牛やニワトリなどの家畜、動物園の動物たちまで様々な動物の診察をします。

また獣医師の中には、動物の診療をしないシゴトをしている人もいます。例えば動物を介した伝染病の予防のシゴトなどがあります。

もちろん1人の獣医師がこれら全てのシゴトを行うわけではなく、分野ごとにシゴトは分かれています。ここでは獣医師の5つの分野のシゴトを見てみましょう。

ペット動物分野

ペット動物分野のシゴトは、多くの人がイメージする「動物のお医者さん」、つまり動物病院や診療所でペットの診療をすることです。

このシゴトでは犬や猫、小鳥、ウサギ、ハムスターなど、小動物の診療や治療のための手術を行います。

産業動物分野

産業動物分野は、主に「家畜」と呼ばれる動物たちを診療することになります。

家畜には牛・豚・鶏・馬などがおり、経済的な価値が著しく大きく、何かしらを生産することを目的に飼育される動物全般を指します。

また、比較的中規模から大規模な衛生所や畜産試験場では、診療だけではなく病気の予防や衛生管理、品種改良や繁殖なども行う場合があります。

野生動物分野

野生動物関係分野のシゴトは、野生動物の管理や保全、診療を行うことです。

日本では動物園や水族館などの施設で飼育されている動物の健康管理、診療、出産の立ち合いが主なシゴトになります。

他にも動物保護団体から定期的に依頼を受ける獣医師、動物保護センターに所属する獣医師も野生動物分野のシゴトに関わる機会が多くなります。

公衆衛生分野

公衆衛生分野のシゴトは、動物の健康を守ることで人の健康を守ることになります。

具体的なシゴトとしては、狂犬病など人と動物がかかる感染症の防止、感染症を事前に発見するための検査(検疫)も行います。他にも、私たちが口にする食品の安全検査なども行います。

公衆衛生のシゴトに従事するのは、公務員として働く獣医師になります。

バイオメディカル分野

「バイオ」とは生物、「メディカル」は医療を意味し、バイオメディカルは直訳すると「生物の医療」を指します。

バイオメディカル分野のシゴトは生物自体の研究、生物を使った医薬品の開発、動物用医薬品の開発・製造も含みます。研究を行う獣医は大学や研究所、企業の研究室などで働いています。

なり方

獣医師になるためには、3つのステップを踏む必要があります。それぞれ見ていきましょう。

獣医学科のある大学に進学

獣医師になるためには、獣医師国家試験に合格する必要があります。そして獣医師国家試験を受験するには、高校卒業後6年制の獣医学科のある大学に進学することが必要です。

日本において獣医学科を持つ学校は国立10校・公立1校・私立6校の合計17校しか存在しません。17校の大学全ての定員数を足しても、獣医学部に進学できる人数は1年に1060人となります。

また私立の獣医学部は1年間の学費が200万~250万円と非常に高額であるため、学費の安い国公立大学は入学したい人も多く、倍率も高くなります。しっかりと勉強して入学試験を受ける必要があります。

入学後6年間の学生生活で獣医学の課程を修めると、獣医師国家試験の受験資格を得ることができます。

獣医師国家試験に合格する

獣医師になるには最終学年もしくは卒業後に獣医師国家試験を受験して合格する必要があります。ここでは簡単に獣医師国家試験の概要を見てみましょう。

試験日程

例年2月中旬に2日間実施

試験会場

全国3か所で実施

・北海道会場

・東京都会場

・福岡会場

試験内容

試験は筆記試験のみで、多肢選択方式(マークシート式)により行います。

試験では獣医学・衛生学・獣医療の基礎に関する問題、実際の現場に即した問題などが出題されます。

詳しく知りたい方は農林水産省の獣医師国家試験概要のページ(https://www.maff.go.jp/j/syouan/tikusui/zyui/shiken/shiken.html)をご覧ください。

合格率

農林水産省の発表(https://www.maff.go.jp/j/syouan/tikusui/zyui/shiken/attach/pdf/shiken-113.pdf)を見ると、獣医師国家試験の合格率は以下のようになっています。

・合計合格率…例年80~85%

・新卒合格率…例年90~95%

・既卒合格率…年ごとの変動が大きい。26%の年もあれば、62%の年もある。

・その他…年ごとの変動が大きい。25%の年もあれば、55%の年もある。

上記の結果を見ると、獣医師全体としては合格人数が絞られたり、大幅に合格水準が引き上げられたりはされていません。

特に新卒は例年90%以上と高い合格率を誇っています。在学中だと教員や大学側のサポート、友人同士の情報交換も活発であるため、なるべく最終学年で合格しておくことが望ましいでしょう。

獣医師として就職する

獣医師の就職先は主に以下の4つに分かれます。

・動物病院

・公務員

・団体職員

・民間企業

仕事内容でそれぞれの就職先でできるシゴトを記しましたが、追加で注意しておきたいことがあります。それは、動物園で獣医として働きたい人に関してです。動物園で獣医として働きたい人は、3つの方法があります。それぞれ簡単に紹介します。

公務員として動物園で働く

動物園を運営している自治体に公務員として働くことが、一番門戸の広いルートになります。ですが気を付けておきたいことは、公務員には様々なシゴトがあるため必ずしも動物園で働けるとは限らないということです。

動物園を運営する団体で働く

この方法だと公務員と違い、動物園を運営している団体に動物園獣医師として採用されるため、必ず動物園で働くことができます。ですがこちらは公務員よりも就職難易度が高いです。まず採用自体が不定期であり、経験を積んだ中途の獣医も応募してくる中で、多くの動物園は採用人数が1人しかいません。

さらにもしも採用されたとしても、何年間という任期が決まっていることも多いです。

民間の動物園に就職する

この方法も団体で働くのと同じで確実に動物園で働くことができますが、団体以上に募集が少なく、待遇面が不安定なことも多いです。

獣医の年収

『令和2年賃金構造基本統計調査 1』によると、獣医師の平均年収は631.3万円です。これは、全国の給与所得者の平均年収である436万円よりも約200万円高くなっています。

月給で見ても、平均月給は42.5万円と高い数値になっています。これらのことから、獣医師の年収は相当高いといえます。

男女比

『農林水産省 獣医事をめぐる情勢2』によると、女性獣医師は年々増加傾向にあります。現在は男性67.2%、女性32.8%ですが、30代に目を向けると男性56.2%、女性43.8%、20代ですと男性49.6%、女性50.4%と、女性の方が若干ですが多い数になっています。

ですが出産や子育てを理由に女性側が職場を離れなければならないこと、そして長期離職による技術力の低下を農林水産省も課題としています。

獣医師は動物の命を左右する職業であり、技術力も重要な職です。そのため職場復帰の際に講習を受けることができたり、経営者向けに女性の就業に関して講習を開くなど、女性への支援や制度も見直されつつあります。

スケジュール例

獣医師の1日は働く場所によって大きく変わります。

公務員や研究に従事する獣医師は、一般の会社員と同じような働き方をすることが多いです。

ここでは一番数が多い、動物病院に勤務する獣医師の1日を紹介します。

7:30 入院動物の世話

7:50 会議(予定確認、連絡共有)

8:00 診療

12:00 手術・会議・休憩

15:00 診療

16:30 会議・カルテ入力・締め作業

求人・就職情報・需要

獣医師の有効求人倍率は1.57倍と、比較的高い数値になっています。これは求職者1人に対して、約1.5件の求人があることになります。

獣医師に関しては政府が医師のような細かい需要供給を発表していないため、将来的に需要供給がどう推移していくかは読めません。ですが平成20年に犬猫の飼育数が計2399万頭だったのに対し、平成30年度には1855万頭に減少しています(猫は平成29年から増加傾向)。このことから、将来的に犬猫を診る獣医の需要が下がっていくことはあり得ます。

やりがい・魅力

獣医師のシゴトの魅力は、動物の健康を守るシゴトができることです。

獣医師は人間の医師とは違い、身体構造も違う、言葉も通じない動物を診なければなりません。その中で、学んだ知識や技術を使って動物が元気になった時や病気が快復した時には、やりがいを感じることができるでしょう。

またペットが元気になって飼い主が喜ぶ姿にやりがいを感じることもできるでしょう。何をモチベーションにするかは人によって異なりますが、動物をその手で治療することができる職業は獣医以外にはなかなかありません。動物が好きな人、動物に対して思い入れのある人はやりがいを持って働くことができるでしょう。

つらいこと・大変なこと

獣医師のつらいことは、動物の命を左右する職業であることです。

動物は多くの場合人間よりも寿命が短いことが多いです。そのため、病院に来院する動物の中には寿命が間近であったり、動物は言葉が話せないため異変に気付いた時には手の施しようがない場合もあります。

そういった際飼い主に余命の宣告をしたり、場合によっては安楽死の提案をしなければならないことは獣医師のつらいことだといえます。

今回の記事はこれで終わりです。最後まで読んでくださった方、ありがとうございました。また次回の記事でお会いしましょう。

参考にしたサイト

農林水産省

https://www.maff.go.jp/

キャリアガーデン

https://careergarden.jp/jyuuishi/

職業情報提供サイト(日本版O-NET)

https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/223

公益社団法人 日本獣医師会

http://nichiju.lin.gr.jp/index.php

  1. https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2020/index.html
  2. https://www.maff.go.jp/j/syouan/tikusui/zyui/attach/pdf/index-2.pdf