今回の記事では、建築士のシゴトについて紹介します。
私は建築士というと、『ビフォーアフター』の「匠」のシゴトを思い出します。匠に選ばれた一級建築士が、住宅のリフォームをするというテレビ番組が『ビフォーアフター』です。私は『ビフォーアフター』を見て家を設計する人、と建築士のことを考えていましたが、実際の建築士は家だけではなくもっと大きな建物まで設計するようです。では、建築士がどういう建物を設計するのかも含めて、建築士のシゴトについて詳しく見ていきましょう。
仕事内容
建築士は、住宅など建造物の設計図を描き、現場の管理をすることがシゴトです。
やはり建築士のメインのシゴトは設計で、設備面やデザイン面を考えて設計図をおこします。
ここで設計の業務について、主な3つを見てみましょう。
構造設計
構造設計は建物の土台となる基礎部分を設計するシゴトです。
柱や鉄筋の本数や太さを考え、建物の耐震性と安全性を確保するように設計します。地味ですが、雨や雪、自然災害から人々を守る大切な設計です。
設備設計
設備設計は空調や風呂、電気などの設備を設計するシゴトです。
設備には様々な種類があり、アップグレードや技術革新が日々行われています。建物を利用する人が快適に過ごせるように設計を組むことが大切です。
意匠設計
意匠設計は建物の配置や形状、間取り、デザイン面を設計するシゴトです。
実用性とデザイン面を調和させ、注文者が満足できる設計をすることが大切です。
工事監督
工事現場で大工や電気工事業者、空調業者など現場で働く人に対して指示をすることも建築士の重要なシゴトです。
細かく組み立てを指揮していくというよりも、設計通りに作るための指示やチェック、設計の変更などを行います。実際に現場で細かい指示を出すのは「施工管理職」というシゴトになります。
〇建築士の免許の違い
一級建築士
一級建築士は設計できる大きさに制限がなく、学校、ビル、病院などの大型建造物の設計をすることができます。また、工事管理も行うことができます。
二級建築士
二級建築士は延べ面積500平方メートル未満の学校、ビル、病院などの設計をすることができます。また、工事管理も行うことができます。
木造建築士
木造建造物を設計する建築士です。2階建てまで、延べ面積300平方メートル以下の木造建造物の設計をすることができます。
なり方
建築士になるには「一級建築士」「二級建築士」「木造建築士」いずれかの国家試験に合格する必要があります。
二級建築士と木造建築士の受験資格は、高校卒業後3年もしくは7年以上の実務経験を積むか、大学・短大・専門学校の建築学科を卒業することで得ることができます。大学・短大の土木科では1年以上の実務経験がないと受験資格を得ることが出来ないので、注意しましょう。
一級建築士に関しては大学卒業後すぐに試験を受けることができますが、指定の実務経験の年数を経た後でなければ免許の登録は出来ないので注意しましょう。
ここで、建築士になるための主な4つのルートを紹介します。『建築士試験パンフ』https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/content/001314965.pdf
最新の試験情報が載っているため、こちらも見てみましょう。
〇大学・短大・専門学校などの建築学科で学び受験する
建築学科を卒業後、二級建築士もしくは木造建築士の国家試験に合格する必要があります。この場合実務経験は必要なく試験を受けることができます。
〇高校・大学・短大・専門学校卒業後実務経験を経て受験する
建築学科以外から建築士を目指す場合、実務経験を経ないと受験資格を得ることができません。指定の実務経験を経て試験を受けることになります。
〇実務経験を経て受験する
建築学科以外の高校から建築士試験を受ける場合、7年以上の実務経験を経てから試験を受けることになります。他のルートに比べるとかなりの時間がかかるため注意しましょう。
〇一級建築士試験を受ける
一級建築士試験は大学卒業後すぐに試験を受けることができますが、指定の実務経験の年数を経た後でなければ免許の登録は出来ないので注意しましょう。院に進学しながら一級建築士の試験を受けることもできますが、その分研究に掛けられる時間が減ってしまうことに注意しましょう。
二級建築士・木造建築士試験の概要
試験日程
筆記試験…例年7月1週日曜日
製図試験…例年9月2週日曜日
受験資格
下記のいずれか1つ
・大学、短期大学、高等専門学校、高等学校、専修学校、職業訓練校等において、指定科目を修めて卒業した者
・建築設備士
・建築実務経験7年以上
・上記程度の知識を有するもの
試験内容
五肢択一式の筆記試験と、設計製図の試験になります。
筆記試験は合計6時間、設計製図は1課題で6時間の試験になります。
筆記試験では建築計画に関すること、建築の法律、建築構造、建築施工に関する問題が出ます。
製図試験は、木造建築士は木造2階建て住宅に関して、二級建築士は毎年住宅のテーマに関する題が与えられ設計をします。
詳しくは『公益財団法人建築技術教育普及センター 資格試験』https://www.jaeic.or.jp/shiken/index.html
を参照してください。
合格率
木造建築士
筆記試験…例年55%前後
製図試験…例年60~70%
最終合格…例年35%前後
二級建築士
筆記試験…例年40%前後
製図試験…例年50%前後
最終合格…例年20%前後
一級建築士試験の概要
試験日程
筆記試験…例年7月2週日曜日
製図試験…例年10月2週日曜日
受験資格
下記のいずれか1つ
・大学、短期大学、高等専門学校、専修学校等において指定科目を修めて卒業した者
・二級建築士
・建築整備士
・上記程度の知識を有するもの
試験内容
四肢択一式の筆記試験と、設計製図の試験になります。
筆記試験は合計6時間15分、設計製図は1課題で6時間30分の試験になります。
筆記試験では建築計画に関すること、建築の法律、建築構造、建築施工に関する問題に加えて、建築環境、設備の問題が出ます。
一級建築士の製図試験は、主に公共設備や大規模設備の設計をします。
詳しくは『公益財団法人建築技術教育普及センター 資格試験』https://www.jaeic.or.jp/shiken/index.html
を参照してください。
合格率
筆記試験…20%前後
製図試験…35%前後
最終合格…10%前後
年収
建築士全体の年収に関しては、公的な統計がありません。そのため、ここでは一級建築士の年収を見てみましょう。
『令和元年度賃金構造基本統計調査1』によると、一級建築士の平均年収は約703万円となっています。これは全国の労働者の平均年収の436万円2より約270万円高い数字となっており、一級建築士にまでなれば多くの給与を得ることができるとわかります。
また同表で、企業人数規模別の月収を見てみましょう。
・1000人以上…約56万円
・100~999人…約49万円
・10~99人…約39万円
以上を見ると、規模が大きい組織ほど月収が高くなっています。
次に、平均賞与も比較してみましょう。
・1000人以上…約232万円
・100~999人…約156万円
・10~99人…約105万円
以上から、人数の多い会社の方が著しく賞与が多い結果となりました。特に1000人以上の規模の会社の賞与は突出していることがわかります。
男女比
『令和元年度賃金構造基本統計調査』によると、一級建築士の数は男性21,280人、女性3,400人となっています。これは比率にすると男性約86.2%、女性約13.8%と、男性の方がかなり多い職業となっています。
『建築技術教育普及センター3』の調査によると、令和元年度の一級建築士の合格者数は全体の28%です。このことからも女性の数は増えつつあるといえます。
やりがい・魅力
建築士のやりがいは、世の中に形として残る建築物を手がけられることです。
建築士は建物という大きな規模のものづくりに関わることができます。デザインにこだわる、頑強さにこだわる、機能にこだわるなど、建築士のシゴトにはやるべきことが多くあります。
そうして自身のこだわりを詰め込んだ建物が数十年、場合によっては百年単位で残っていくことはこの上ないやりがいと言えます。
つらいこと・大変なこと
建築士の大変なところは、限られた条件で注文主が納得できる建物を作らなければならないことです。
建築は建築法などの法律、注文主の予算、納期までの完成など様々な制約を受けることが多いです。その中で建築士は注文主が満足できる、そして人が快適に過ごせるような建物を作る必要があります。
また、納期の時期や設計の変更などで残業が集中的に起こる時期があることも建築士の大変なところと言えます。
今回の記事はこれで終わりです。最後まで読んでくださった方、ありがとうございました。また次回の記事でお会いしましょう。
参考にしたサイト
『キャリアガーデン』
https://careergarden.jp/kenchikushi/
『職業情報提供サイト(日本版O-NET)』
https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/20
『公益社団法人 日本建築家協会』
http://www.jia.or.jp/guide/about_jia/
『一般社団法人 日本建築士事務所連合会』
『公益社団法人 日本建築士連合会』
https://www.kenchikushikai.or.jp/
- https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2020/index.html
- 国税庁 令和元年 民間給与実態統計調査を参照https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan2019/pdf/001.pdf
- https://www.jaeic.or.jp/