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画家になるには?画家の収入や仕事内容と合わせて解説‐シゴトニンラボ

今回紹介するシゴトは画家です。

画家と聞くと、どちらかというとモネやゴッホなど昔の画家を想像する人が多いのではないでしょうか。昔はパトロンと呼ばれる画家への出資者が多くいたそうですが、現代の画家はどのような絵で、どう生計を立てているのでしょうか。そういったことも踏まえて画家のシゴトについて見てみましょう。

仕事内容

画家のシゴトは絵を描くことに尽きます。油画・水彩画・日本画・洋画・風景画など様々な分野に分かれています。

芸術をはっきりと分けることは出来ませんが、主には商業美術純粋芸術という2つに分けられます。商業美術は製品のデザインなどを指し純粋芸術は絵画や彫刻、現代アートなどを指します。画家は主に後者のシゴトを務めることになります。とはいっても現代アートでは商業美術が芸術とされることもあり、両者の境界線は曖昧となっています。

ここではまず、画家としてシゴトをする方法の主な3つを見てみましょう。

〇画廊や画商に絵を売る

自分の描いた作品を売ってお金にするために、画廊1や画商に売り込みを行います。メジャーな展示会やコンクールなどで入賞したり目立つ作品があれば、画廊や画商の目に留まることもあります。そうして契約が出来れば、画廊やデパートなどで作品を販売されます。

〇自身で絵を売る

画廊や画商を通さずに絵を売る画家もいます。例えば路上やフリーマーケット、オークション、アパートなどへの営業、インターネットを通して自身の絵を売ります。有名な画家の中には個展を開きそこでオークションをする人もいます。この方法は自身の表現したい絵を描けること、目の前で鑑賞者の反応を見れるというメリットがあります。

〇美術館に所蔵する

画家にとって作品が美術館に所蔵されることは大きな名誉です。美術館の学芸員、館長クラスの目に留まり、美術館に所蔵されることもあります。特に自身の出身地、または地域との関係性が強い絵(風景画など)は所蔵の対象となることが多いです。

直接収入になるわけではありませんが、多くの人の目に留まる機会、画家の世界での知名度を得ることに繋がり、シゴトを得ることも増えていきます。

画家の種類

画家は絵を描くことを生業としている人ですが、一言で画家と言っても様々なジャンルに分かれています。ここでは主な2つの画家の種類について見ていきましょう。

〇洋画家

洋画家とは、明治期以降に西洋から伝わった油画や水彩画などの洋画を扱う画家のことを言います。

洋画家とは言っても描くものは様々で、人物や風景、静物、模様、神話など幅広い対象があります。さらに絵のタッチやテーマも千差万別です。

洋画家を目指す人は、美大の油絵学科に進学することが一般的です。

〇日本画家

日本画家とは、日本古来の和紙や岩絵具、墨など日本古来の伝統絵画である日本画を描く画家のことを言います。

日本画も描く対象は様々で、花、鳥、風景、人物、植物、動物など幅広い対象があります。日本画も私たちが想像するような掛け軸に描いてあるような絵だけでなく、現代の女性をモチーフにしたりとモダンなものが多くなってきています。

なり方

画家になるためには、特別な資格や学歴は必要ありません。ただし画家を目指す人は絵に限らず芸術、創作が好きである人が多いため、美大に進学する人が多いです。

ここでは画家になるためのルートをいくつか見てみましょう。

◎美術系の学校に進学するルート

日本で美術系の国立大学は、東京藝術大学の1校のみです。ただ、東京藝術大学の美術学部の中に設置されている油画、日本画は倍率が特に高く、2021年度の合格倍率は前者が15.5倍、後者が13.5倍です。美術学部の現役合格率は例年30~40%程度、技巧が特に重視される日本画では現役生はさらに低い合格率と言われています。

その他に筑波大学や佐賀大学などは、洋画や日本画を描く美術系の学部を設置しており、他にも多数の国公立大学が美術家の学部を設置しています。私立では、多くの美大が油画科、日本画科など美術系の学部を設置しています。有名な私立大学でいうと東京5美大(多摩美術大学・女子美術大学・東京造形大学・日本大学藝術学部・武蔵野美術大学)があります。

大学入学後は、絵画の実践的な技術や表現のほか、版画や立体創作など油画や日本画以外の幅広い表現方法を学びます。その理由は、現代の絵画では中世・近世のように風景画や人物画だけではく、様々なモノやテーマを描くようになっており、幅広い表現や思考力が必要となるためです。

『スタディサプリ進路』https://shingakunet.com/searchList/gl_ed010/gs_e1020/

で美術を学べる学校が見れるため、参考にしてみてください。

〇ファイン系かデザイン系の学部の進学を目指す

画家になるには、油画や日本画、彫刻科などの「ファイン系2」の学部に進学する方法、または商業デザインやCGデザインなどの「デザイン系」の学科に進学する方法があります。

油画や日本画をより専門的に学びたい人はファイン系を目指すことが近道になりますが、デザイン系からも画家になる人は多くいます。例えばデジタル絵画と呼ばれる、コンピューターの中のみで作品を作る画家もいます。自身が学びたいことを考えてどちらにするか決めるのが良いでしょう。

〇美大入試専門の予備校に通う

希望の大学に合格するために、美大専門予備校や絵画教室に通う人もいます。特に油画科や日本画科、彫刻科などファイン系を目指す人の多くは予備校に通います。高校2年生の夏から冬頃に通い始める人が多いです。

予備校ではデッサン、作品制作、問題予想などの受験対策をします。中には予備校コンクールを開き、作品が順位付けされる所もあります。自身が希望する大学に合った予備校を探してみましょう。

◎画廊や画商との契約を目指す

プロの画家になるためには、在学中もしくは卒業後にコンクールや公募展、個展などで名をあげる方法があります。

大学や大学院に在学中に見出され、画廊や画商と契約して生計が安定すれば画家のシゴトのみで働いていくことができます。卒業後に画家として活動する場合は、大学教員や美術教師、絵画教室の講師、美術予備校の講師、デザイン会社などで働きながらの活動になります。

画家の年収

画家の年収は、知名度や実力、活動への出資者の有無で大きく変わります。あくまで画家としての活動で得た収入で考えると、0の人もいれば何億となる人もいます。そのため、画家としての収入だけではなく美術講師や教師などで生計を立てながら活動している人が多いです。

収入に大きく関係するのは、絵画の販売価格の目安です。一般的に絵画の販売価格はキャンバスの号数(サイズ)が大きいと値段が高くなっていきます。具体的には1号につき2万円~(画家により大きく変動あり)と値段が決められ、号数が大きくなるほど値段が上がっていきます。ただし、販売価格が全て画家の手に入るわけではありません。契約に基づいて販売価格の2~4割程度を受け取り、残りは画廊が受け取ります。

男女比

画家の職業全体の男女比については、公的なデータがありません。そのためここでは『美術手帳』https://bijutsutecho.com/magazine/series/s21/19922の調査を参考に考えてみましょう。

2018年度の男女別の入学者割合で見ると、女性の割合は東京藝術大学約60%、多摩美術大学約75%、武蔵野美術大学約70%と女性入学者の割合が高くなっています。こう見ると美術界は男性の方が不利で女性が有利なのかと思うかもしれませんが、一概には言えません。生徒ではなく女性教員に目を向けると、東京藝術大学9%、多摩美術大学21.3%、武蔵野美術大学17.6%と女性が圧倒的に少なくなっているからです。また美術館における男性作家の作品数の割合も8割を超えており、女性作家の作品は少なくなっています。学生数だけで見れば女性の数の方が多いですが、現段階では男性の活躍が目立っているといえます。

求人・就職情報・需要

画家の求人や需要に関しては、公的なデータがありません。そのためここではまず『国勢調査 平成27年国勢調査 抽出詳細集計』(https://www.stat.go.jp/data/kokusei/2015/kekka.html)では約3万8人おり、20年前の国勢調査からほぼ変わらずに推移しています。人数が大きく変わらないことを見ると、市場自体が急激に成長したり衰退したりすることは考えにくいです。

次に『「日本のアート産業に関する市場調査2020」(一社)アート東京、(一社)芸術と創造』(https://artmarket.report/)いう一般社団法人アート東京の調査を見てみましょう。この調査によると、日本の美術品市場は2,016年から2,020年の間の5年間、2400~2500億円程度で推移しています。2,020年度はコロナの影響か2300億円台に落ち込みましたが、数字としては大きな変化はないといえます。むしろ2,019年度までは微増していました。

やりがい・魅力

画家のやりがいは、自身が磨いてきた技術や表現で作品を描けたときの満足感です。

画家は絵を描いている時は、作品と向き合い続けるため、時には孤独であったり苦しさを感じることもあります。しかしそうして完成した絵が自身の納得のいくもの、もしくは想像を超えるものであったときは、達成感や満足感があるでしょう。

また、時には自身だけではなく世の中の多くの人の心を動かせることも、画家のやりがいと言えるでしょう。

つらいこと・大変なこと

画家のつらいことは、創作活動に苦しみを感じる時があることです。

産みの苦しみ、と言いますが、画家は特にそれを感じやすい職業です。1人作業が多く孤独なシゴトということもありますが、現代アートはテーマが複雑である作品が多いことも関係しています。現代アートは鑑賞者側にも考えることや知識が求められますが、創作者側にはそれ以上の労力と思考が求められます。そのため、つらいと感じる時もあるでしょう。

 今回の記事はこれで終わりです。最後まで読んでくださった方、ありがとうございました。また次回の記事でお会いしましょう。

参考にしたサイト

『キャリアガーデン』

https://careergarden.jp/gaka/

『スタディサプリ進路』

https://shingakunet.com/bunnya/w0017/x0240/

『13歳のハローワーク』

https://www.13hw.com/jobcontent/02_02_01.html

『美術手帳 統計データから見る日本美術界のジェンダーアンバランス』

https://bijutsutecho.com/magazine/series/s21/19922

 

  1. 絵画や美術品を陳列する施設・場所のこと。
  2. ファインアート系の略。ファインアートとは純粋芸術のこと。