今回の記事では、小説家のシゴトについて紹介します。
小説家というと、黙々と小説を書き上げる姿をイメージする人が多いのではないでしょうか。もちろん小説を執筆することが小説家の核となるシゴトなのですが、実はそれ以外にも打ち合わせ、講演、インタビュー、メディア出演、賞の審査員など人と関わり話すシゴトも多くあります。小説家の角田光代氏が「人と上手く話せなくて文章を書き始めたのに、こんな話しをする場面が多い仕事とは思わなかった」という趣旨の発言をしていることからもそのことが窺えます。
ここでは小説家の執筆も含めた幅広いシゴトについて見てみましょう。
仕事内容
小説家のシゴトは、言葉を使って物語を描写することです。
小説は純文学・推理小説・SF小説・ホラー小説など多くのジャンルに分かれています。それらどのジャンルを手掛ける小説家にも共通していることは、基本的には映像や音楽は使わず言葉で物語を創り出していくことです。
しかし小説家のシゴトはそれだけではなく、人前で話したり、エッセイの執筆をしたり、賞の審査をすることもあります。ここでは代表的な3つのシゴトを見てみましょう。
〇執筆
小説家のシゴトの核となるのは、小説を書くことです。
小説家の小説の書き方は人それぞれですが、主に3つのステップがあります。
一つ目は、プロット制作です。プロットとはストーリーの大まかな筋書き、登場人物の設定などの小説の骨組みを指します。映画でいう所の脚本のようなものです。このプロットを作るためにネタを考えたり、編集者がついていれば編集者と一緒に企画を考えたりします。
二つ目は、取材・資料集めです。これは日常の中で行われることもあれば、プロットが完成する前、完成後に行われることもあります。人に話を聞くだけではなく、現地調査、文献調査も行います。
三つ目は、執筆です。執筆作業は前述した作業をした後に行われることが多いですが、人によってはプロットを作らずにいきなり執筆し始める人や、執筆しながら調べ物をする人もいます。執筆するスピードも、一気に書き上げる人、毎日決まった分量を書く人など様々です。定期連載しているコラムなど、締め切りがある執筆作業もあります。
〇インタビュー・講演
小説家として知名度が上がると、講演会やインタビューなど話をするシゴトも増えていきます。
インタビューや対談は新刊が発表するタイミングで行うことが多いですが、新聞やWEBメディアの企画の一環で行われることもあります。新刊発表時は新刊の見どころや執筆秘話、前作から今作まではどんな期間だったかなど新刊にまつわる話が多いです。
企画の場合は、例えば読書遍歴や日常のこだわり、影響を受けたカルチャーなど、テーマに沿った話をすることになります。
講演会は、小説家の小説の読み方や小説の書き方など、創作に関することを話すことが多いです。また、設定されたテーマに沿って話をすることもあります。
〇賞の審査
小説家として中堅、大御所と言われるような人は、賞の審査員の依頼がくることもあります。
小説の審査は各審査員が候補作を読んで、何を受賞作として推薦するかだけではなく、各作品への評価を発表し議論する場でもあります。ただ投票して終わりではないということです。そのため、推薦する小説のどこが優れているかを他作品や過去の受賞作と比較して論じる力も必要となってきます。また、各賞ごとに傾向や重視する評価軸も変わるため、それらを把握しておくことも必要となります。
なり方
〇文学賞に応募
多くの小説家は、なんらかの文学賞で賞を受賞してからデビューしています。文学賞はミステリー、純文学、SFなどジャンルごとだけではなく、ジャンルの中でも性質が分かれています。主催の出版社や審査員も各賞ごとに違うため、自身が小説を読んでもらいたい審査員やデビューしたい出版社の賞に応募する方法もあります。受賞後には小説が書籍化し、担当編集者がつくこともあります。
『小説総合情報サイト』(http://www.sakkatsu.com/pubcontest/)に賞の一覧が載っているため、気になる方は参照してください。
〇WEBサイトに投稿する
WEBサイトに投稿して一般の読者に発表してデビューする方法です。有名な投稿サイトには『小説家になろう』『カクヨム』などがあります。
WEB投稿サイトの特徴は、アニメなどとのタイアップが多いことです。『Re:ゼロから始める異世界生活』も、『小説家になろう』で有名になった作品です。
〇出版社と契約する
小説家として働き続けていくには、出版社との契約が必要です。とはいっても多くの場合専属などではなく、作品ごとに様々な出版社と契約を交わすことが一般的です。出版社と関係を保っていれば担当編集者がついて、新しい小説やエッセイの相談、編集者側から本の企画が提示されることもあります。
〇自費出版する
自費出版の場合、印刷会社や出版社に依頼することになります。自費出版を専門とする会社には『幻冬舎ルネッサンス新社』があります。またKindleで電子書籍を個人で出版する方法もあります。ただ自費を使うこともあり利益は多く見込めないため、小説家として働き続けるには出版社との契約を目指したほうが良いでしょう。
小説家の年収
小説家の年収に関しては公的なデータはありません。そこで、作家の主な収入源である原稿料と印税、その他の収入に関して見てみましょう。
原稿料に関しては、契約に基づいて決まった額が支払われます。400字詰めの原稿用紙1枚で2,000〜6,000円程度が相場になります。そう考えると、月100枚書いて20~60万円程度になります。ただ、原稿のシゴト依頼はある程度小説家としての知名度や人気がないと来ません。
印税に関しては、本の定価に印税率をかけたものが作家の収入となります。この印税率は5〜10%程度になります。さらにこの印税は「発行印税」と呼ばれる発行部数に応じて支払われるもの、「売上印税」と呼ばれる売上部数に応じて支払われるものの二種類があります。一般的にベストセラーと呼ばれる10万部の売り上げを達成すれば、1000円の本だとしたら1000万円が印税として小説家の手元に入ってきます。ただ実際にはそんな作品は稀です。
その他の収入に関しては、まず著作料と呼ばれるものがあります。これは映画化やグッズ化などのタイアップ時に支払われるものになります。また、講演会の出演料として5~100万円程度の金額をもらうこともあります。
求人・就職情報・需要
小説家の需要は、志望者の数に対してはかなり少ないと考えられます。小説家の志望人数に関してはデータがないため、ここでは若手の登竜門である五大文芸誌の新人賞の2021年度応募総数を見てみましょう。
・文學界新人賞…2,817篇
・群像新人文学賞…2,291篇
・文藝賞…2,459篇
・すばる文学賞…1,146篇
・新潮新人賞…2,396篇
この中で1作もしくは2作が受賞することになるので、倍率はかなり高いといえます。他の新人賞も倍率は数百倍となることがほとんどで、小説家としてデビューすることはかなり難しいです。また、新人賞を獲っても小説家として専業でやっていける人はさらに一握りです。
やりがい・魅力
小説家の魅力は、自身が書いた言葉と物語で人を感動させられることです。
小説を書くことは孤独な作業でもあり、時に苦しいことやつらいこともあります。それでも自身の小説を楽しみにしているファンや、たまたま手に取って楽しむ人、共感してくれる人がいることはやりがいになります。
また、時には小説がアニメ化や映画化、ドラマ化して新しい魅力がある作品となったり、より広い層に愛してもらうきっかけにもなります。
つらいこと・大変なこと
小説家のつらいことは、基本的には一人での作業になることです。
映画やドラマであれば大勢の人間が関わりあって作品を完成させていきますが、小説家は一人で仕事をする時間が圧倒的に長いです。編集者にアイデアを相談したりやりとりをすることはありますが、物語を創り上げる大部分は小説家一人の仕事になります。
ただ、同時に小説という媒体には出版社、印刷会社、製本会社、書店などの多くの人が関わっています。そのため小説家は筆がのらない時も納期を守る必要があります。そういったプレッシャーがあることも小説家のつらいことと言えるでしょう。
今回の記事はこれで終わりです。最後まで読んでくださった方、ありがとうございました。また次回の記事でお会いしましょう。
参考にしたサイト
『キャリアガーデン』
https://careergarden.jp/shousetsuka/work/
『スタディサプリ進路』
https://shingakunet.com/bunnya/w0012/x0162/
『幻冬舎メディアコンサルティング』
https://www.gentosha-mc.com/terms/royalty/
『TECH.C.デザイン&テクノロジー専門学校』
https://www.fca.ac.jp/work_books/9534/
『文学賞の世界』
https://prizesworld.com/prizes/