今回の記事では、航海士のシゴトについて紹介します。
航海士というと、ワンピースのナミを思い出します。彼女は作中で天気を自在に読み、一味の船の指揮をとっています。実際の航海士のシゴトは、船の指揮だけではなく、階級や資格によってわかれています。この記事では航海士の詳しい仕事について見てみましょう。
仕事内容
航海士のシゴトは20トン以上の大型船を運航することです。
航海士のシゴトは船の操縦指示だけではなく、針路決定、積荷管理、機器の整備など、航海士の等級によって大きく変わります。ちなみに実際に船の操縦をするのは「操舵手」と呼ばれる人たちで、一般的に航海士のシゴトとは区別して考えられています。
航海士が持つ目的は共通していて、人員や荷物を乗せて安全に目的地まで航海することです。
ここでは4つの等級ごとの航海士のシゴトについて見てみましょう。
船長業務
船長は航海における責任者で、大きな決定権を持つシゴトです。
船長は針路決定、船員への操縦指示、全体の統括が主なシゴトです。また海難事故や想定外の事態が起こった際に的確な指示を出して対処することも船長のシゴトです。特に入港出港での操船指示は船長のみが行える業務で大切なシゴトになります。
一等航海士業務
一等航海士は操船指示、荷物の監督など主に現場での指示を行うシゴトです。
船長が全体統括者とするなら、一等航海士は部分統括者と言えます。また、出入港時の船首の指揮監督、船を操縦する操舵手に指示を出すのも一等航海士のシゴトです。これは二等航海士も合わせて3人による交代制で行います。
二等航海士業務
二等航海士は主にレーダー・GPSなどの機器や海図を管理・整備するシゴトです。
その他には航海計画の立案、出入港時の船尾での指揮監督、操舵手への指示も二等航海士のシゴトとなります。
〇三等航海士業務
三等航海士は主に設備の維持管理を行うシゴトです。
設備には救命設備、防火設備、航海日誌などの書類も含まれており、その管理や整備を行うことになります。その他上級航海士の補佐も行います。
ひとつの大型船に複数人の等級の異なる航海士が乗り込みます。それぞれがそれぞれのシゴトをこなし、安全な航海をしていくのです。
なり方
航海士になるためには、海技士(航海)国家試験に合格する必要があります。資格がなくとも船員として船に乗ることはできますが、独学で勉強し乗船履歴がつくのを待たなければならないため、学校に進学することがスタンダードとなっています。
この国家試験は乗船履歴が受験資格であり、乗船履歴を得るためには所定の教育機関で学ぶ必要があります。海技士(航海)の資格は1〜6級まであり、このうち学校卒業後に取れる資格は3級までとなっています。
ここでは航海士になるための2つのステップを紹介します。
海技士(航海)の受験資格が得られる教育機関に進学
海技士になるためには、商船高等専門学校や海事系大学などに進学する必要があります。ここでは3級と4級の海技士資格を受験するためのルートを紹介します。
まず3級海技士になるためには中学卒業後商船高等専門学校に進学するか、高校卒業後海事系大学に進学し6ヵ月の乗船実習を修了することが必要となります。
次に4級海技士になるためには中学卒業後海上技術学校に進学し6ヵ月の乗船実習を修了するか、高校卒業後海上技術短期大学校に進学する必要があります。
これらの学校では校内船や大型練習船での短期・長期実習、実習装置による授業に加え、航海に必要な機械・機関・工学・気象などの座学もあります。また学校寮があるところも多く、寮生活は集団生活である船内でも役立つことが多いといえます。
海技士(航海)試験を受験する
海技士(航海)試験は1級〜6級に分かれており、筆記試験と面接試験によって行われます。1級が一番高い級で、6級が一番低い級となっています。船長は1級、一等航海士は2級、二等航海士は3級、三等航海士は4級の資格が必要です。試験内容は筆記試験と口述試験、さらに全ての級でも共通で、以下の4つが問われます。
・計測機器に関する問題
・船舶知識に関する問題
・気象に関する問題
・緊急時に関する問題
試験は年4回で、2月・4月・7月・10月に行われます。また出ている学校によって筆記試験が免除されたり、筆記試験を先に受験することができます。
資格取得後は客船や貨物船の船員、民間のフェリーの運航会社などに就職します。求人情報を自身で調べ、募集しましょう。
年収
航海士の年収に関しては公的なデータはありません。
『給料バンク』と『スタディサプリ進路』を参照すると、航海士の年収は20代で500万~700万円、30代で700~1000万円、40代50代では1000万~2000万円、船長になると3000万円に達することもあります。
航海士は知識や技能が必要とされる仕事で、乗船手当も高額であるため、給与が高くなることも当然といえます。
男女比
航海士の男女比に関してははっきりとした公的なデータはありません。そこでここでは『女性船員の活躍推進に向けた女性の視点による検討会』(https://www.mlit.go.jp/common/001231119.pdf)を参照し、女性船員数の割合を見てみましょう。2016年のデータによると、海運業における女性船員の割合は2.4%と非常に少なくなっています。
求人・就職情報・需要
まず、航海士の需要はかつてほどはないといえます。
『国土交通省 海事産業の動向と施策』(https://www.mlit.go.jp/hakusyo/mlit/h28/hakusho/h29/html/n2633000.html)の調査によると、漁業以外に携わる日本人船員の数は1974年の128,102人をピークに減少し続けています。2015年にその数は29,727人と4分の1以下となっています。特に貿易を担う外航海運は71,269人から2,237人と著しい減少となっています。日本の船も1,580隻から197隻と非常に少なくなっています。
また、2020年の有効求人倍率を見ても、航海士の有効求人倍率は0.69倍となっており、求職者に対して募集が少ない職業であることがわかります。ここまで人数が減った要因に、人材のグローバル化が挙げられます。外国人の方が人件費が安いため、外航海運では9割以上の航海士が外国人となっています。
このことは同時に、日本人航海士の給与水準や待遇の高さも表しています。そのため金銭的な面で将来性はあるといえます。
やりがい・魅力
航海士のシゴトの魅力は、船の上で海を相手にシゴトができることです。
海の環境は変化しやすく、時には凪、時には大荒れの日もあります。そのような環境でシゴトをし、生活するのは苦労することもあります。ただ海が好き、船が好きという人にとってはそんな環境もやりがいに感じられるでしょう。
つらいこと・大変なこと
航海士の大変なところは、海の上で長期間過ごさなければならないことです。
航海士は出港すると、基本的には海の上で生活することになります。ずっとシゴトをしているわけではなく睡眠や休憩、交代時間もありますが、有事の際は休憩中でもシゴトをしなければならない時もあります。
海の上での生活が好きという人も、家族や友人と何週間も会えない時はつらさをかんじることもあるでしょう。
今回の記事はこれで終わりです。最後まで読んでくださった方、ありがとうございました。また次回の記事でお会いしましょう。
参考にしたサイト
『スタディサプリ進路』
https://shingakunet.com/bunnya/w0009/x0120/
『給料バンク』
https://kyuryobank.com/other/kokaishi.html
『独立行政法人 海技教育機構』
https://www.jmets.ac.jp/seafarer/index.html
『国土交通省 女性船員の活躍推進に向けた女性の視点による検討会』
https://www.mlit.go.jp/common/001231119.pdf
『国土交通省 海事産業の動向と施策』
https://www.mlit.go.jp/hakusyo/mlit/h28/hakusho/h29/html/n2633000.html