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ケースワーカーとは?仕事内容やなり方について解説‐シゴトニンラボ

今回の記事では、ケースワーカー(生活保護担当)のシゴトについて紹介します。

ケースワーカーには様々な場所で働く人がいます。福祉事務所に限らず、児童相談所、病院、保健所など多くの場所でケースワーカーは働いています。

ここではその中でも「生活保護」を扱うケースワーカーについて取り上げます。

仕事内容

ケースワーカー(生活保護担当)のシゴトは、人それぞれ様々な理由で生活に困窮している人の相談を受け、必要な支援を行うことです。

ケースワーカーは福祉事務所や役所に地方公務員として勤務しています。障害福祉課、児童相談所、児童養護施設、精神保健福祉センターにもケースワーカーは勤務していますが、この記事では「生活保護」に関する業務を扱うケースワーカーについて取り上げます。

生活保護制度とは、すべての国民が「健康で文化的な最低限度の生活」を送るためにある制度です。私たちは怪我、病気、失業、低賃金、高齢、離婚、離別、死別など様々な理由によって生活に困窮する可能性があります。そんな時に私たちには生活保護を利用し、生活していくための金銭や援助を受け取る権利があります。

市民がこの権利を利用する際に相談を受け、必要な支援を行うことが、生活保護担当のケースワーカーのシゴトです。

ここではケースワーカーの主な3つのシゴトについて見てみましょう。

相談者の面談

生活保護制度には「申請保護の原則」があり、生活保護を受けたい人は事前に別の課で面接などをしていても必ず生活保護担当のケースワーカーと面談をする必要があります。

福祉事務所や役所には生活保護に関わる課(福祉課・生活援護課等)が設置されており、ケースワーカーはそこに来た相談者と面談を行います。

ケースワーカーは面談でどのような支援が必要か把握し、支援の種類や方法、生活保護申請の手続きを行います。この面談を行うのは「面接員」と呼ばれます。

援助計画の立案・援助手続き

面談で援助が必要と判断された場合、または相談者が援助を必要と申告した場合は、具体的な手続き(生活保護申請書の提出等)をします。

その後は地区を担当するケースワーカーに引き継がれます。ケースワーカーは地区割りでシゴトを担当しているため、最初の面談の担当ケースワーカーがそのまま担当するとは限りません。ちなみにケースワーカーは1人あたり80〜120世帯ほどの生活保護世帯を担当しています。

地区担当員は、相談者とより詳しい面談や訪問を行い、相談者の現状、家族構成、収入、職業、体調など生活保護を受給するためにも必要な情報を調べます。生活保護にも受給するためには条件があり、相談者が条件を満たしているか知るためにも調査は欠かせません。

その後生活保護を支給して終了ではなく、医師やNPO、他の専門職とも連携して、今後相談者が生活していくために必要な援助を考えます。相談者やその家族とも引き続き面談を行い、援助方針を決定していきます。

受給者のサポート

生活保護の受給が決定し、様々な援助が始まってもケースワーカーのシゴトは終わりではありません。生活保護の受給が始まっても受給者の抱えている悩みや問題が全て解決されたわけではないためです。

生活保護の受給者は、金銭だけではなく、様々な理由で生活に困窮しています。そこには怪我、病気、失業、低賃金、高齢、離婚、離別、死別など千差万別の理由があります。そのためケースワーカーは相談者を定期的に訪問したり面談をして、生活保護受給後も生活をサポートしていきます。必要であれば役所の他の専門職や病院、連携団体などを紹介します。

なり方

ケースワーカーになるには地方公務員試験の「福祉職」か「行政職」のどちらかを受験し、合格する必要があります。

福祉職の場合は「社会福祉主事任用資格」か「社会福祉士」、「精神保健福祉士」のどれかの資格を持っていることが受験の条件になります。

行政職の場合は資格は必要なく、公務員試験合格後、生活保護に関する課に配属されることでケースワーカーとなることができます。その後講習などを経て「社会福祉主事任用資格」の取得を目指すことになります。

ここでは、ケースワーカーになるために必要なことを紹介します。

学校で社会福祉に関して学ぶ

ケースワーカーになるための一番の近道は、大学・短大・専門学校で社会福祉に関して学び、その後「社会福祉主事任用資格」か「社会福祉士」の資格を取得することです。

社会福祉主事任用資格は指定科目のうち3つを取ることで取得できるため、どの学部でも比較的簡単に取得することができます。ただ、ケースワーカーを目指すなら社会福祉士の取得を目指して専門的に学んだほうがよいでしょう。

1つめの理由は、社会福祉資格を所持していると受験の幅が広がることです。公務員試験の福祉職は多くの場合社会福祉主事任用資格を持っていれば受験することができますが、特別区(東京都23区)や東京都庁など一部の自治体は「社会福祉士」か「精神保健福祉士」の所持を受験要件としています。

2つめの理由は、社会福祉を専門的に学ぶことでケースワーカーとして働くのに役立つ知識も身につくからです。社会福祉学部では、「公的扶助論」と呼ばれる生活保護に関連する授業やゼミを取ることができます。また、3年生には1カ月〜2カ月間、福祉事務所で生活保護のシゴトを実習することができます。こういった経験は公務員試験の面接で役立つだけではなく、将来ケースワーカーとしても大いに役立つでしょう。

公務員試験(福祉職)に合格する

資格を取得する見込みがある人、資格を取得した人は、公務員試験の福祉職を受験して合格することが必要です。

公務員試験の福祉職試験は専門的な内容となっています。福祉職の試験では行政職と同じ教養試験に加え、社会福祉学・社会学・心理学の専門試験があります。また、面接でもなぜ行政職ではなく福祉職であるかということが問われるため、やはり福祉職に応募する人は社会福祉の勉強を専門的にしておいたほうが良いでしょう。

公務員試験(行政職)に合格する

資格を取得していない人、希望自治体の福祉職の受験資格を満たしていない人は、地方公務員試験の行政職の試験に合格する必要があります。

行政職は公務員の中でも最も数が多く、年齢要件を満たしていれば受験することができる試験です。行政職の配属先は多岐にわたります。観光課である場合も、会計課である場合もあります。その中の1つに生活保護のケースワーカーのシゴトがあります。

そのため、行政職の公務員がケースワーカーのシゴトを希望しても配属されない場合もあります。もちろん別の部署から異動願いを出すことはできますが、それに加えて通信で社会福祉士の資格を取る勉強をしたり、貧困支援に関わるボランティアをするなど、自身の知識や経験を深めてアピールすることも大切です。

年収

ケースワーカーの給与は、地方公務員の行政職、もしくは福祉職と同じ給与形態となっています。福祉職として採用された人は福祉職の給与表に従って、行政職として採用された人は行政職の給与表に従って給与が支払われます。

 では『令和2年地方公務員給与の実態』(https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei/c-gyousei/kyuuyo/pdf/R2_kyuyo_1_03-2.pdf

)を参考にして、まずは福祉職の給与を考えてみましょう。

地方公務員福祉職の平均月給は約34万円、平均賞与は約142万円となっています。平均年収は約550万円です。これは全国の労働者の平均年収436万円より約115万円高い数字になっています。

 

次に同表で行政職の給与を考えてみましょう。

地方公務員行政職の平均月給は約40万円、平均賞与は約163万円となっています。平均年収は約643万円です。これは先刻の労働者の平均年収436万円より約207万円高い数字になっています。

 

こうしてみると福祉職より行政職の平均年収の方が100万円ほど高いことがわかります。ただ、行政職と福祉職のケースワーカーの間には数字のような給与の差はないと考えられます。そもそも同表によると初任給では福祉職の方が数千円〜1万円程度高いことが普通です。さらにこの給与の差は福祉職に女性が多いことが関係していると考えられます。行政職の女性割合は約40%ですが、福祉職の女性割合は約88〜90%となっています。その男女数の差が管理職の人数差、残業時間の差、扶養手当などの給与差に反映されていると考えられます。

男女比

ケースワーカーについては、はっきりとした男女比のデータはありません。ここでは代わりにケースワーカーである公務員福祉職の男女比を見てみましょう。

『男女共同参画局 地方公務員の職種別・男女別職員数』(https://www.gender.go.jp/research/kenkyu/sankakujokyo/2020/pdf/1-2-b-3.pdf

)には、福祉職の男女比の項目はありません。ただ見てみると、2018年の「その他」の職種107,360人の内女性比率が88.3%となっています。これがほぼ福祉職の男女比と同じであると考えられます。

『平成30年地方公務員給与の実態』によると、この年の福祉職の数は103,174人となっています。このことから、先ほどの「その他」の職種107,360人の大多数が福祉職であることがわかり、福祉職の女性比率が86〜90%程度であることがわかります。

福祉職に女性が多いということは、福祉職の代表格の仕事であるケースワーカーにも女性の方が多いということがわかります。ただ、行政職もケースワーカーのシゴトに配属されるため、ケースワーカーは女性が90%を占めているわけではありません。

求人・就職情報・需要

ケースワーカーの需要は、高齢化、核家族化、単身世帯の増加に伴って高まるといえます。

1990年代前半のリーマンショック以降、生活保護の受給世帯数は増加傾向にあります。1000世帯中の生活保護受給世帯数を示す世帯保護率は、1993年の14.0‰から2018年には32.1‰、全体の世帯数も586,106世帯から1,637,422世帯と2倍以上に増加しています。

 この増加の要因の1つは、高齢化の進行です。日本の高齢化は急速に進んでおり、1985年には65歳以上の高齢者は10%であったのが、2021年には29.1%と、たった36年で3倍近くの比率となりました。そして、生活保護世帯の構成割合の55.5%(2021年11月時点)は高齢者世帯となっており、高齢化が進むほどに生活保護世帯も増加することが考えられます。ケースワーカーを目指す人は高齢者世帯の援助に関して学ぶことが必須であるといえます。

増加の要因の2つめに、1993年から10年以上続いたバブル崩壊後の不景気と就職氷河期、2008年のリーマンショックと2011年の東日本大震災に伴う不景気と就職氷河期の余波が考えられます。この期間は経済の様相が激変し、雇用の在り方も大きく変わりました。終身雇用制度の崩壊、非正規雇用の増加によって労働者も不安定な立場となりました。その中でケースワーカーには、就労支援、労働に伴う病の支援、非正規でしか働けない母子世帯の支援など、多くのことが求められています。

やりがい・魅力

ケースワーカーのシゴトの魅力は、困窮している人に対して金銭的、物質的、肉体的、精神的にあらゆる面から支援ができることです。

福祉は、何らかの理由で生活に不自由している人が求めるものです。その要求に対して福祉のシゴトに携わる人は何らかの形で支援をします。介護であれば肉体的、精神的な面が大きいでしょう。医療や心理カウンセリングも同じくですが、肉体的な意味合いか精神的な意味合いのどちらかに比重が置かれることが多いはずです。

そんな中ケースワーカーは、福祉のシゴトの中で最も金銭的な面が大きいシゴトであるといえます。他の福祉のシゴトでも貸付や融資、給付はありますが、それはあくまでシゴトの根幹ではなく特殊なケースや人であることが多いです。

それに対してケースワーカーのシゴトは「生活保護制度」という金銭的支援を基礎にしたシゴトです。生活保護は「最後のセーフティーネット」と呼ばれるように、困窮した人が最後に行きつくことが多い制度です。その制度を守り成り立たせているケースワーカーのシゴトは、重圧を感じることもあるでしょうが命や生活を支えるやりがいを感じられるでしょう。

つらいこと・大変なこと

ケースワーカーのシゴトの大変なところは、生活や命を支えるシゴトであることへのプレッシャーを感じることでしょう。

生活保護は「最後のセーフティーネット」と呼ばれています。それは生活や命を支えるための最後の公的な制度であるということです。

そんな制度を支えるケースワーカーは、難しい問題を抱える利用者を相手にシゴトをすることもあります。複数の病気が重なっている人、祖父母の世代から貧困に苦しむ人、自殺未遂者など千差万別です。その1人1人に対して、「同じケース(問題)は存在しない」というケースワークの原則に基づいて、ありのままを受け止め根気強く支援をしていく必要があります。そんな中で、命や生活を守ることへの重圧を感じることもあることが、ケースワーカーの大変なことだといえるでしょう。

 

今回の記事はこれで終わりです。最後まで読んでくださった方、ありがとうございました。また次回の記事でお会いしましょう。

参考にしたサイト

『特別区人事委員会 採用試験情報 2019年採用 11職種の紹介 福祉』

http://www.tokyo23city.or.jp/saiyo/2019/11works/07_fk.html

『総務省 令和3年地方公務員給与実態調査結果等の概要』

https://www.soumu.go.jp/main_content/000784529.pdf

『総務省 令和2年地方公務員給与の実態』

https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei/c-gyousei/kyuuyo/pdf/R2_kyuyo_1_03-2.pdf

『内閣府男女共同参画局 地方公務員の職種別・男女別職員数』

https://www.gender.go.jp/research/kenkyu/sankakujokyo/2020/pdf/1-2-b-3.pdf

『国立社会保障・人口問題研究所 「生活保護」に関する公的統計データ一覧』

https://www.ipss.go.jp/s-info/j/seiho/seiho.asp

『厚生労働省 「非正規雇用」の現状と課題』

https://www.mhlw.go.jp/content/000830221.pdf