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【漁師】漁師の年収・仕事内容・なり方などを解説‐シゴトニンラボ

漁師とは?漁・漁師の種類

漁師とは、漁業で生計を立てている人およびそのシゴトのことを指します。漁業とは魚のみならず、海苔や貝類などの水産動植物を捕獲、または養殖することです。

「排他的経済水域」という言葉を皆さんは知っていますか?領海を含めて沿岸から200海里(約370km)までの海を指すため200海里水域ともいいます。簡単に説明すると、他国に干渉されずに漁業をしたり、石油を掘るなどの自由な活動ができる水域のことです。日本は国土は小さいですが、島国ということもあって経済水域の大きさは世界6位を誇ります。それに加えて暖流と寒流が流れ、それらがぶつかる潮目もあるため様々な魚介が水揚げされ、日本の漁業は世界的に見ても非常に盛んです。

漁師の種類は漁をする場所や方法の違いによって4つに分けられます。それぞれみていきましょう。

沿岸漁業

沿岸漁業(えんがんぎょぎょう)は一人か二人乗りの10トン未満の小さな漁船を使った漁業で、陸地が見える程度の沖合でおこなわれる漁業です。従事している人数が最も多い漁業形態でもあります。家族単位を主体として経営するケースが多く、一回の漁が日帰りで終わるのがひとつの特徴です。定置網漁やまき網漁、釣り漁など様々な形態があり、たくさんの種類の魚介類を捕獲しています。

またハマチや海苔などのさまざまな養殖業も沿岸漁業に含まれます。沿岸漁業の漁の種類についてはこちらをご覧ください。沿岸漁業について | 漁師.jp

遠洋漁業

遠洋漁業(えんようぎょぎょう)は、350〜500トンの大型船で南太平洋やインド洋、大西洋など、日本から遠く離れた漁場へ行き、マグロやイカを捕獲する漁です。200海里水域以外の水域は「公海」と呼ばれ、誰もが自由に行き来し、漁を行うことができます。

ひとつの漁船には20人以上の漁師が乗り、数カ月~1年半ほど船上生活を行います。長い間日本の自宅を離れることになりますが、その分収入は大きい傾向にあります。

とれた魚は船内で冷凍保存して日本に持ち帰ります。

沖合漁業

沖合漁業は近海漁業とも呼ばれ手織り、沿岸漁業と遠洋漁業の中間のような漁業です。10トン以上の中・大型船で数人で沖合(200海里内)に出てあらゆる魚介類を捕獲します。ターゲットの魚によって漁に出る場所や期間は変わりますが、数日~数週間のことが多いです。

数隻の船でチームを組み、協力して漁を行うこともしばしばあります。

内水面漁業

湖や川、沼で行う漁業です。川でサケやマス、アユ、ウナギやエビを捕獲したり、人口の池で魚の養殖をする方法もあります。使用する船は10トン未満の小型船で、日帰りの漁を行います。

内水面漁業は基本的には魚の住むキレイな川でしか行うことができないので、地域や場所が限られています。 

以上が漁師と漁業の種類に関する簡単なまとめです。続いて、各漁業の漁獲量と生産額に関するデータをみていきましょう。

漁業・養殖業の生産量・額の推移

 まずは平成30年と令和元年の生産量の推移です。                                                           

    平成30年  令和元年
  合計 4,421(千トン) 4,196
  海面 4,364 4,143
  漁業 3,359 3,228
  遠洋漁業 349 329
生産額 沖合漁業 2,042 1,970
  沿岸漁業 968 929
  養殖業 1,005 915
  内水面 57 53
  漁業 27 22
  養殖業 30 31

 単位が千トンなので、例えば平成30年の合計の生産量は442万トンとなります。

こうして見ると全体の生産量のほとんどが「海面漁業」、つまりは海で行う漁業になっており、川や湖で行う「内水面漁業」の生産量はわずかな割合になっていますね。海面漁業に注目してみると、「沖合漁業」が最も生産量が多く、次に養殖、沿岸、遠洋と続いています。

令和元年になっても生産量の割合にほとんど変化はありませんが、どの漁業も「生産量が落ちていること」がわかります。

生産量が落ちている要因については、海水温や海流等の海洋環境の変化、外国漁船によ る漁獲の影響を含む様々な要因が考えられています。 

続いて生産額をみていきましょう。

 

                   (億円)

    平成30年  令和元年
  合計 15,651 14,918
  海面 14,438 13,698
  漁業 9,379 8,684
生産額 養殖業 5,060 5,014
  内水面 1,213 1,220
  漁業 1,028 164
  養殖業 1,028 1,058

 

生産量と同様に「生産額も大きく減っていること」がわかります。具体的には令和元年は前年と比べて733億円減り、合計の生産額は1兆4918億円となっています。「海面漁業」は740億円減っていますが、「内水面漁業」では7億円生産額が増えています。

あまりの数字の大きさにピンとこないと思いますが、これは「過去最低レベルの生産量と生産額」です。

漁師の数や漁師の収入、漁業の規模は年々縮小している現状があります。

では、そんななかで漁師になるにはどうしたらよいのでしょうか。漁師のなり方についてまとめていきます。

なり方

一口に漁師になるといっても、先で述べたようにまず4種類の漁師があり、その中でもさらに実際に漁に出る漁業と養殖業があります。さらにそれぞれターゲット(捕獲や養殖をする)魚介類によっても漁の方法やなり方は変わってきます。

 漁師になるためにまずはじめにすることは、自分が何の漁師になるかを決めることです。日帰りで漁をできる沿岸漁業がいいのか、比較的収入の高い遠洋漁業がいいのか、あるいは川魚の捕獲に関わっていくために内水面漁業がいい、などです。

漁のターゲットや方法によって、漁に出る時間帯や漁の時間の長さ、生活する地域や収入も変わってくるので、正確な情報を集めたうえで慎重に判断しましょう。

 漁師はその漁法によっては免許や資格が必要になります。例えば最も従事者の多い沿岸漁業では20トン未満の小型船を扱うのですが、これには「小型船舶免許」が必要になります。

また独立して個人で漁業を行うなら、「漁業権」と呼ばれる、漁をするための権利を得るために地域の漁業組合に数十万円納める必要もあります。漁師になるためのステップ漁師に資格は必要?マイナビ農業をご覧ください。

また、漁師は年齢や性別、経験の有無にかかわらず誰でもなることができますが、捕獲量をあげるためにはそれなりの技術や経験が必要になります。はじめの数カ月、数年間はシゴトが順調に行かないことは珍しくありません。漁師をはじめるのならある程度貯金を貯めておくのが理想ではあります。

漁師の働き方・働く場所

基本的には水産会社に入るか、独立するか、その両方の三択があります。水産会社といっても約99%が個人経営なので、大きな組織というわけではありません。

最初の数年は水産会社(個人)の元で働き、1人で漁をするためのノウハウを身に着け、法規や規範を理解すると独立する、という流れの人が多いです。

個人の元で働いて固定収入を得ながら自分でも漁を行い収入の足しにしている漁師もいます。

働く場所は海や川、人工池や生簀(いけす)になります。漁師の住む場所としては、漁場の近くの港町に住む人が多いです。港町でなくても、車で港まで移動できる範囲に住む漁師がほとんどです。

仕事の流れとスケジュール例

例1)沿岸漁業の場合

03:00 起床

04:00 出航

09:00 帰港

10:00 出荷作業

11:00 翌日の準備

11:30 帰宅

漁業の多くは早朝~昼頃に行われることが多いです。出荷作業を昼までに行い、飲食店やスーパーマーケットへの入荷を間に合わせるためというのが主な理由です。また早朝は魚たちが最もよく活動する時間でもあるため魚の群れがいることも多く、漁を行う時間としては最適です。

捕獲した魚介はその種類ごとに分け、それぞれに適当な処置を施してセリに出したり、出荷したりします。その後は船や使った道具の掃除などを行い解散します。

あらかじめ海底に罠(餌と網)を仕掛けておく漁の場合は、昼間に罠を張り、深夜に回収するといったかたちで一日に二回海に出ます。このような漁を行う漁師は一日の睡眠を二回に分けることもあります。

 例2)漁をしない時期

特定の魚介を専門に扱う漁師の場合は、漁に出ない時期もあります。水産資源を守るために、漁や捕獲を行ってはいけない「禁漁期」というものが存在するのです。そうした期間は自分の船の管理や網などの道具の手入れを行って過ごします。収入が足りない場合は禁漁期間に他の魚介の漁に出たり、あるいは土木作業員など他のシゴトをする人もいます。

 以上はほんの一例にすぎません。漁師によって働き方や仕事内容は大きく異なります。ただ共通しているのは、魚介を捕獲、あるいは養殖してそれらを出荷することです。漁をする場所・時間・時期・捕獲対象・出荷方法などは違えど、そこだけは必ず同じです。

また、長時間波に揺られたり、大きな魚を扱ったり、非常に体力の必要なシゴトであることも忘れてはいけません。以上をもって仕事内容とします。

漁師の収入について

『令和2年の賃金構造基本統計調査1によると、漁師の平均の年収は348万円となっています。民間企業の平均年収は436万円2であり、やや低い水準となっています。

個人経営の漁師がほとんどですが、統計によると年齢が上がるごとに収入も上がっていく傾向にあります。毎年経験を積むことで収穫高が上がっていくことを証明しているようなデータとなっています。

また漁業の種類によって差があり、遠洋漁業やカニ漁師、マグロ漁師などは収入が高い傾向にあります。それらの漁師は年収が1000万円ほどになることも珍しくないようです。

一般的な個人経営の沿岸漁業従事者だけでみた平均年収は180~280万円程で、副業をする漁師もいます。

漁師の収入は自然災害に影響され下がることもあれば、漁獲量が多く収入が上がることもあり、一定ではありません。あくまで参考程度に思ってください。

魅力・やりがい・楽しさ

・大量の水揚げがされた時や、狙っていた魚が捕れた時の喜びや達成感

・自然を相手にし、自然と密接に関わることができること

・まわりの同業者たちと競い合い、高めあうことができること

・自分が養殖したり海で捕った魚が消費者に届く喜び

・禁漁期などはかなり自由な毎日を過ごすことができること

などが挙げられます。

大変なこと・つらいこと

・朝が早く深夜からシゴトが始まり、長時間の業務をこなすこと

・体力勝負の現場であること

・労働時間の割に収入が少ないこと

・環境に左右されやすく一面もあり、悪天候や自然のトラブルによって収入が安定しないこと

などが挙げられます。

 最後までお読みいただきありがとうございます。以上で今回の記事はおわりです。少しでも皆さんの参考になれば幸いです。

参考にしたサイト

・マイナビ農業

https://agri.mynavi.jp/2021_10_14_173493/

・漁師.]JP

https://ryoushi.jp/become/

・水産庁

https://www.jfa.maff.go.jp/j/kikaku/wpaper/

・ホクモウ

https://www.hokumo.net/fishery/possible/other-fishery.html

・石川県庁ホームページより

ー目指す漁師ライフがきっとここにー

  1. https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2020/index.html
  2. 国税庁 令和元年 民間給与実態統計調査を参照https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan2019/pdf/001.pdf