幼い頃お花屋さんになることを夢見た人は少なくないと思います。花というキレイなものを扱うためか、非常に人気のあるシゴトのひとつです。花屋は生花店(せいかてん)と呼ばれることもあります。そして花屋の業界のことを花卉(かき)業界と呼びます。
今回の記事では花屋および花卉業界についてまとめていきます。
はじめに
花屋について考えるとき、皆さんはどのような花屋を思い浮かべるのでしょうか。おそらく多くの人は、温かく穏やかな雰囲気で街中にぽつんと建っているような小さめのお店を思い浮かべるのではないでしょうか。実際にそういった雰囲気の花屋さんを見たことがあるという方も少なくないでしょう。
花屋は個人事業主が経営する個人店と、法人が経営する店を合わせると全国に約2万店舗ほど存在しています。そのうち約90%が店を構えて店頭販売をしているので、花屋の外観についてはイメージ通りといえます。ちなみに残りの10%はインターネット専門店やその他の事業、例えば葬儀屋をメインとしている会社などになります。
では、花屋の業務内容についてはどうでしょうか。実は、店番をして花に水をやる以外にもたくさんの業務があります。まずは花屋の仕事内容からまとめていきたいと思います。
仕事内容
花屋の仕事内容ですが、「仕入れ」「商品の管理」「接客」が業務の中心となります。その他には事務関係や店の掃除・装飾、配達などがあります。それぞれ見ていきましょう。
仕入れ
花屋は商品として販売する花を全てお店で育てているわけではありません。花屋のシゴトはまず花の市場に行って花を仕入れるところから始まります。そのため花屋の朝は非常にはやいです。
花の市場はほとんど毎日開催されています。例えば東京の大田区にある花市場は定休の日曜日を除いて毎日開かれています。中には週に3日のみ開いているという市場もあります。花屋が営業を開始する前の7時頃から始まり、昼頃には閉まってしまう市場がほとんどです。
そしてこの花市場ですが、一般の人は入ることはできても花の購入はできない場合が多いです。市場の中には「花屋に花を販売する花屋」とセリがあり、セリに参加するには市場に申請をする必要があります。セリに参加するハードルの高さと営業時間の早さから、一般人で花市場に行く人はほとんどいません。ただ市場に入ること自体が禁止されているわけではありません。市場の様子やセリを見学するのは自由となっています。
この仕入れの際に、仕入れた花を運ぶための車は花屋にとって必須といえるでしょう。個人店では軽トラを使っているところが多いようです。
商品の管理
商品、つまりは花の管理が花屋が最も時間を割いている業務だということができます。花の管理というのは水をやることだけではありません。水揚げという作業が基本となります。
そもそも花屋におかれている花は「切り花」といって、茎の真ん中あたりから根っこと切り離された状態で水の入った花瓶やペットボトルで保管されています。本来土に生えている植物は、根から地中の水分を吸い上げていますが、切り花は根がないため水分を吸い上げる力が弱いのです。そこで切り花が水を吸い上げやすくするための作業を水揚げといいます。水揚げにはいくつか種類があるのでポピュラーな方法を紹介します。
水切り
最も一般的な水揚げの方法は「水切り」です。茎の部分を水の中に入れ、はさみで最下部をスパっと斜めに切り落とします。水中で切るのは切り口に空気が触れないようにするためです。この時大事なのが、清潔なはさみを使うことです。はさみの汚れや細菌が切り口に触れると、さらに水分の吸収がわるくなってしまいます。斜めに切るのも、その方が植物が水分を吸収しやすくなるからです。
湯揚げ
60°Cから100°Cのお湯を用意します。茎の下部1cmの所を切り、切り口をすぐにお湯につけます。花の種類によっても異なりますが、およそ30秒お湯につけます。そうすることで切り口についている細菌を死滅させたり茎内の空気を抜くことができ、吸収力を上げることにつながります。
その他にも茎の下部を炭になるまで焼く方法や、はさみを使わずに手で折る方法もあります。水揚げは植物の特徴、例えば茎の太さによって適した方法が異なります。花によって異なる水揚げ方法を覚えることもシゴトのひとつです。
接客
店舗で花を売る花屋では接客も大事なシゴトのひとつです。お客さんが不快に感じるような態度を取らないようにするのは当然ですが、それに加えて質問に応えられるようにしておくべきです。例えばおすすめの花や特定の時期・イベントに合っている花を把握したり、花言葉を覚えたりすることなどです。
接客はお店の評価や雰囲気に直接つながる重要なポイントです。
その他の業務
その他にも花屋のシゴトはたくさんあります。店内の掃除や商品の並べ方を工夫することも大事です。また、花束を作ることもあります。お客さんのリクエストを聞いて、イメージに合っている花束を作るためにはそれなりの時間と努力を要します。またお店の事務作業や一日の終わりには売り上げの確認をします。花屋によっては配達も行っているので、配達を業務とすることもあります。
なり方
花屋になるためには特別な資格や学歴は必要ありません。ただ、花の仕入れや配達で車を多く使うので、自動車運転免許を取得したうえで運転に慣れておくといいでしょう。
花屋になるには個人店の花屋が出している求人を探して応募する方法、企業の採用試験を受ける方法、自分で花屋をオープンさせて経営する方法があります。
結論からまとめると、花屋で正社員として働くための門戸は狭い状況になっています。花屋を専門とする一般企業で毎年採用試験を行うのは大手の「青山フラワーマーケット」や「日比谷花壇」などのごく一部に限られています。これらの企業は採用試験は変わった実技試験などは行わず、エントリーシートと面接の試験といった一般的な内容で行われます。そのため入念な下調べと面接対策をして本番に臨めば、試験突破も夢ではありません。たとえば青山フラワーマーケットの採用試験の倍率は数百倍です。
個人店の正社員募集ですが、小さなお店が多いため正社員の募集をしている花屋は非常に少ないです。アルバイトの募集はあってもそこから正社員としての雇用につながることはほとんどありません。
雇用が少ないのであれば、残る方法は個人での開業です。花屋に必要な技術を学ぶことのできる専門学校で学んだ人や企業の花屋で経験を積んだ人が開業することは珍しくありません。店舗を持たないインターネット販売専門店など、営業の形態も多様化が進んでいます。
花と関わりながら働くことができるなら花屋にはこだわらないという人であれば、花屋でなくとも花の生産や流通に関わるシゴトやブライダル企業、デザイン関係のシゴトに就くことを考えてみてもいいかもしれません。
年収
『令和2年賃金構造基本統計調査1』によると花屋の平均年収は347万円です。一般企業の平均年収である436万円2と比べると低い水準になっています。東京都の花屋に限定した平均年収は400万円となっており、地域によって差があることがわかります。
やりがい・魅力
・好きな花と関わりながらシゴトをできること
・自分が手をかけて育てた花がお客さんに売れること
・自分が作った花束や選んだ花をお客さんが喜んでくれること
つらいこと・大変なこと
・体力面でハードな作業が多いこと
・給与がそれほど高くないこと
・残業が多く労働時間が長くなりやすいこと
参考にしたサイト
・キャリアガーデン
https://careergarden.jp/hoikushi/
・職業情報提供サイト(日本版O-NET)
https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/131
・スタディサプリ進路
https://shingakunet.com/bunnya/w0031/x0401/sigotonaiyo/
・13歳のハローワーク
https://www.13hw.com/jobcontent/05_05_12.html
- https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2020/index.html
- 国税庁 令和元年 民間給与実態統計調査を参照https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan2019/pdf/001.pdf