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小学校の先生になるには?年収や仕事内容を解説‐シゴトニンラボ

今回の記事では、小学校教師のシゴトについて紹介します。

小学校教師にはこの記事を読んでいるほとんどの人がお世話になったと思います。そのため小学校教師の仕事内容を知っている人も多いのではないでしょうか。

この記事では改めて小学校教師の仕事内容や、あまり馴染みがない教員採用試験の内容や、教師の収入についても見てみましょう。

仕事内容

小学校教師のシゴトは、小学校で教科、生活等の指導をすることです。

小学校では中学や高校と違い、一人の担任が全教科を教えます。基本的に教師には学級の担任が割り当てられ、そこで国語、社会、算数、理科、体育などを教えます。

加えて、人格形成の重要な時期にある小学生に生活面の指導をすることも、教師のシゴトです。自身が受け持つクラスや学年の子ども達の指導が中心となります。

ここでは、小学校教師の主なシゴト4つについて見てみましょう。

授業

小学校教師は担任をしているクラスの子どもたちに、全教科の授業をします。文部科学省の『令和元年度学校教員統計調査1』によると、教師1人あたりの平均週教科担当数は、18.5時間となっています。このことから、1日に3〜5時間の授業を担当していることがわかります。

授業は子どもたちがどうしたら理解しやすくなるか、またいかに興味を持たせるかを考え、工夫しながら行います。

板書の仕方、話し方など日常的な工夫に加えて、レクリエーションや話し合い、映像を使った授業など特別な授業を行うこともあります。

学年とクラスの運営

担任教師として、クラスを運営していくことも小学校教師のシゴトです。

小学校のクラスは集団生活の場であり、児童も掃除や給食準備、委員会など日々やることがあります。そういった日々の活動のサポートや指導をすることも担任のシゴトです。生活全般の指導は学校だけでは足りないこともあり、保護者に連絡する、逆に相談を受けることも必要です。

また、小学生は人間関係での衝突が多い時期でもあり、喧嘩や問題がおきやすい年齢でもあります。クラス内や学年内での児童同士の衝突や問題を当人同士が解決できるようにサポートすることも担任教師のシゴトです。

行事運営

小学校では運動会や音楽会、遠足や社会科見学、林間学校、修学旅行、授業参観など、学年ごとに多くの行事があります。

こういった行事が上手くいくように監督することも教師のシゴトです。事前にスケジュールや活動内容の決定・調整、計画をします。この際全てを教師が決めてしまうのではなく、ある程度児童の自主性や話し合いに任せる部分も残しておく必要があります。

その他

他にも教師は授業の準備や練習、テストの作成や採点、教員会議、保護者会議、委員会の監督、日常の校務など、多くのシゴトがあります。

こういった業務は日常の授業や指導をしながら行わなければなりません。そのため、児童が帰宅していても夜まで学校で作業をしていることもあります。

なり方

小学校教師になるためには、小学校の教員免許が必要となります。

小学校教諭普通免許を取得するためには、教職課程のある大学や短大に行き、教職課程を履修する必要があります。免許を取得するためには、授業だけではなく、大学4年生の春に、3〜4週間の教育実習があります。

免許取得後、教員採用試験の小学校区分に合格すれば、小学校教員として働くことができます。

ここでは、小学校教師になるための3つのステップを紹介します。

教職課程のある学校に進学する

教員免許を取得するためには、まず教職課程がある大学に進学する必要があります。

小学校教諭普通免許状には①一種免許状(大学卒業)②二種免許状(短大卒業)③専修免許状(大学院卒業)の3種類がありますが、ここでは一般的な一種免許状について取り上げます。

普通免許状の一種免許を取得するためには主に2つの方法があります。

1つめは大学の教育学部に進学することです。

教育学部のメリットは、教育学の専門家である教授たちの指導を、より近い距離で受けられることです。教職課程の生徒も教育学部の教授の指導を受けることはできますが、教育学のゼミに所属し卒論の指導を受ける教育学部の学生の方が距離も近く、より手厚い指導が受けられます。また、周りの学生も小学校や中学校といった違いはあれど、教員を目指して集まった生徒達です。そういった環境では教員になる覚悟や意思も磨かれていくことでしょう。

2つめは、教育学部以外に進学し教職課程を専攻することです。

専攻学部の単位も取得しながら教職課程を取るため、当然単位数は増えますし負担も多くなります。

教育学部以外に進学するメリットの1つめは、専門的な学問を学べることです。例えば文学部、英文学部、歴史学部、数学部など、小学校の授業と関連のある学問を学ぶこともできます。特に小学校教師か、それとも中学校教師や高校教師と迷っている人は、専門的に学問を学ぶことで答えが見えてくる場合もあるでしょう。

2つめは、広い視野を持つことができることです。

例えば、小中校の授業と直接関係はない学問ですが、心理学部や社会学部に進学すれば、子どもの心理や社会状況に関して学ぶことができます。こういった学問を学べば、より広い視野、他の教員とは違った目線で教育のシゴトに携わることができるでしょう。

教育実習に行き小学校教諭普通免許状を取得する

教職課程には、教育実習という3〜4週間の学校での実習があります。

教育実習では最初の1〜2週間は授業やクラスの見学をし、メモやノートを取ります。他には指導教官の手伝いや他の先生との交流、また、クラスの児童たちと交流することも実習の大切な目的になります。

3~4週間目はそれに加えて、指導教官とともに授業をしたり、1人で授業をします。

教育実習はただ卒業するためだけのものではなく、自身の教員としての適性や、どういった教師になりたいかを見つめなおす良い機会になります。

そして教育実習が終わった後、所定の単位を全て取得すれば、卒業時に小学校教諭普通免許状を取得することができます。

教員採用試験を受験する

免許取得見込み、もしくは免許を取得した人は、小学校教員採用試験を受験して合格する必要があります。ここでは公立小学校採用試験に関してみてみましょう。

試験日程

6月下旬~9月中旬

試験内容

公立の小学校はそれぞれの自治体によって採用プロセスは異なりますが、内容は多くが共通しています。ここで『文部科学省 令和3年度(令和2年度実施)公立学校教員採用試験の実施方法2』を参照して、試験の内容を見てみましょう。試験は主に以下の6つが行われます。

■筆記試験…教養試験と教科の専門試験

■面接試験…個人面接と集団面接

■実技試験…音楽・図画工作・水泳・体育・外国語などの実技

■作文・小論文…教育に関する小論文試験

■教育実技…模擬授業・場面指導・指導案作成

■適性検査…マークシートによる性格検査

これらを一次試験と二次試験の二回の間に行います。多くの自治体で一次で筆記に関わる試験、二次で実技に関わる試験が行われます。

文部科学省のデータによると、面接に関しては一次試験でも二次試験でも行う自治体が多いことがわかります。2020年度採用までは68自治体中39自治体が一次試験で面接を実施していました(2021年度はコロナの影響で25自治体に減少)。

また、個人面接は2016年度から2021年度採用まで68自治体のすべてが実施しています。どの自治体を受けるにせよ、個人面接の練習は必須と言えます。

また、模擬授業も2016年〜2020年度採用までは49〜55の自治体が実施しています(2021年度採用はコロナの影響で33自治体に減少)。そのため教育実習で行う授業だけではなく、大学生の低学年から集団塾でアルバイトをしたり、ゼミで授業の練習をしたりしておくとよいでしょう。

合格倍率

■受験者数…43,448人(前年度から1262人減少)

■採用者数…16,440人(前年度から165人減少)

■採用倍率…2.6倍(前年度の2.7倍から減少、過去最低倍率)

まず受験者数ですが、これは2012年度を境に緩やかに減少し続けています。2012年度採用試験では59,230人であったのが、2021年度には1万5千人以上減少しています。

採用者数は逆に緩やかな増加をしており、就職氷河期であった2000年度採用では3683人と過去最低の採用者数であったのが、2021年度には16,440人と4倍以上になっています。

採用倍率に関しては受験者数の減少と採用者数の増加に伴って、2013年度から緩やかに低下しています。

年収

総務省の『令和2年地方公務員給与の実態3』によると、2020年の小・中学校(幼稚園)教育職の調整額や手当を足した平均月給は約41万円、平均賞与は約178万円となっています(平均年齢42.1歳)。これを平均年収にすると約670万円となります。

これは日本の給与所得者の平均年収である436万円より約234万円高い数字になっています。ただし、これは幼稚園、中学の教師の給与も含んでおり、若干のズレがあることに注意しておきましょう。

※小学校教師のみの年収に関するデータは、残念ながら適切なものがありません。文部科学省の『令和元年度学校教員統計調査』には小学校教師の月給のデータがありますが、調整額や手当を含んだ月給、賞与額に関するデータがなく、調査の母数も少ないです。

そのためここでは総務省の『令和2年地方公務員給与の実態』を参照しました。

男女比

小学校教師だけの男女比のデータはありません。そのためここで、教育系公務員の男女比について見てみましょう。

内閣府男女共同参画局の『地方公務員の職種別・男女別職員数4』によると、2018年時点で教育系公務員の男性の数は411,927人、女性の数は437,525人となっています。これは比率にすると男性約48.5%、女性51.5%と女性の方がやや多くなっています。

30年前の1988年までは男性が58.1%を占めていましたが、年がたつほどに女性の教員が増えてきて、今では女性の方が若干多い数になっています。

求人・就職情報・需要

小学校教師の需要はこれからもあるといえます。

1993年のバブル崩壊後の就職氷河期に採用者数を絞っていたこともあり、確かに一時期教員の採用者数は著しく減少しました。しかしその後教員採用者数は増加傾向にあり、試験の倍率も低くなっています。

IT化の影響で教師の数が減るとも言われていますが、しばらくは考えにくいでしょう。

確かに勉強を教えるなら配信授業だけでもよいですが、小学校教師はただ毎回同じ授業をするというわけではありません。一人一人の進度や理解力に合わせた指導、その時々の児童の疑問や質問に答える能力、授業中に適宜生活の指導を行う必要もあります。また、授業だけではなくクラスや行事の運営なども行わなければなりません。少なくとも現時点では、これらの業務を無人で行う技術はなく、人が担うことになるでしょう。

また、文部科学省の調査『学校教育情報化の現状について5』を見ると、2018年において日本の教師はOECD加盟国48国中最も仕事時間が長いことがわかります。小学校だけに絞っても事務業務と授業計画にかける時間は最長となっており、文部科学省も世間も教師の労働時間の長さを問題視しています。また、文部科学省は同表の中で人材不足感が大きいことも指摘しており、実際採用数は拡充の方向で動いています。

やりがい・魅力

小学校教師のやりがいは、成長が著しい6歳〜12歳の子どもたちの成長を身近でサポートできることです。

小学校教師は基本的には担任を持っていて、2年間同じクラスを担当する学校が多いです。2年間担任をしている間に、子どもたちは大きく成長をします。小学校1年生が3年生になるころには、身体的にも精神的にも成長しています。そんな子供たちの成長を学習面、生活面において身近で支えることができることは小学校教師のやりがいといえます。

つらいこと・大変なこと

小学校教師の大変なところは、仕事量が多いことです。

『文部科学省 学校教育情報化の現状について』によると、2018年の調査においてOECD48カ国48カ国中、日本の教員の仕事時間は最長となっています。OECD平均が週38.3時間であるのに対して、日本の小学校教師は週54.4時間となっています。これは月の労働時間にすると約220時間に及びます。また、日本教職員組合の調査でも、2021年の調査において1ヵ月平均96時間44分の残業時間と非常に多忙であることがわかります。

こういった中で子どもたちを一人一人丁寧に見ていくことは非常に難しく、自身が理想とする教師像を追えないことに苦しむことがあります。

今回の記事はこれで終わりです。最後まで読んでくださった方、ありがとうございました。また次回の記事でお会いしましょう。

参考にしたサイト

『キャリアガーデン』

https://careergarden.jp/shougakkoukyoushi/

『職業情報提供サイト(日本版O-NET)』

https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/179

『スタディサプリ進路』

https://shingakunet.com/bunnya/w0031/x0392/

『令和元年度賃金構造基本統計調査』

https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003084610

『e-Stat 文部科学省 令和元年度学校教員統計調査』

https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&toukei=00400003&tstat=000001016172

『総務省 令和3年地方公務員給与実態調査結果等の概要』

https://www.soumu.go.jp/main_content/000784529.pdf

『総務省 令和2年地方公務員給与の実態』

https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei/c-gyousei/kyuuyo/pdf/R2_kyuyo_1_03-2.pdf

『内閣府男女共同参画局 地方公務員の職種別・男女別職員数』

https://www.gender.go.jp/research/kenkyu/sankakujokyo/2020/pdf/1-2-b-3.pdf

『文部科学省 公立学校教員採用選考』

https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/senkou/1243155.htm

『文部科学省 令和3年度(令和2年度実施)公立学校教員採用試験の実施方法について』

https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/senkou/1416039_00004.html

『文部科学省 令和3年度(令和2年度実施)公立学校教員採用試験の実施状況について』

https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/senkou/1416039_00005.html

『文部科学省 学校教育情報化の現状について』

https://www.mext.go.jp/content/20210908-mxt_jogai02-000017807_0003.pdf

『文部科学省 令和3年度 教育委員会における学校の働き方改革のための取り組み状況調査』

https://www.mext.go.jp/content/20211221-mxt_zaimu-000019724_1.pdf

 

  1. https://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa01/kyouin/1268573.htm
  2. https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/senkou/1416039_00005.html
  3. https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei/c-gyousei/kyuuyo/kyuuyo_jc.html
  4. https://www.gender.go.jp/research/kenkyu/sankakujokyo/2000/2-2-6.html
  5. https://www.mext.go.jp/content/20210908-mxt_jogai02-000017807_0003.pdf