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管理栄養士とは?国家試験の合格率や年収を解説‐シゴトニンラボ

栄養士と管理栄養士の違い

栄養学や食べ物、身体や健康についての知識を持ち、人々の栄養を管理するのが栄養士です。管理栄養士とは、栄養士よりも専門性の高い資格で、「上位の栄養士」という表現が適当です。

後で詳しく説明しますが、それぞれのなり方も異なります。

指定の栄養士養成施設で学ぶことで栄養士にはなれますが、管理栄養士は試験に合格しなければなることができません。

両者の仕事内容はほとんど同じですが、管理栄養士の方がなるのが難しい分、実施できる業務や持てる責任の範囲が広いです。

具体的な管理栄養士のシゴトについてみていきましょう。

仕事内容

管理栄養士は食や栄養の専門的な知識をもって栄養指導を行い、人々の健康をサポートをするシゴトです。

具体的には、以下のような業務です。

・病院や老人保健施設等での献立作成、給食調理

・主治医の指導の下、病気の療養のために必要な栄養指導

・子どもの食育

・アスリートの栄養管理

・ダイエット相談

働く場所によってその業務内容が変わってくるので、今回は「仕事内容」として一概にまとめることはできません。

次の章でもう少し詳しくみていきましょう。

管理栄養士の勤務先・所属

管理栄養士の勤務先として主なのは以下の3つです。

ジョブメドレー(https://job-medley.com/)を参考にします。

病院(医療施設)

管理栄養士の多くは病院やクリニックを勤務地としています。

主な仕事は、病院給食の献立作成や調理・栄養指導です。入院している患者の症状によって、減塩食や低たんぱく食、流動食など適切な献立を作成します。例えば胃腸炎で入院している患者には消化に優しい食事を作り、腎臓病の患者には塩分を減らした食事を作る、というような具合です。

また、近年NSTと呼ばれる、医師をはじめとした、管理栄養士・看護師・薬剤師などから構成されるチームでシゴトをする形態がアメリカを中心に広がりつつあります。各専門家が連携し、その知識や技術を活かして患者さんにとって最良の方法で栄養管理を行います。まだ日本ではあまり馴染みがありませんが、今後は需要が拡大していくと思われます。

高齢者施設

老人ホームなどの高齢者を対象とした事業所では、飲み込みやすいよう柔らかくした食事や刻み食など、その利用者さんの状態や介護度にあった食事を提供します。そのため、献立を作成するには嚥下障害(飲み込むことが困難な状態)に関する知識なども要します。また、「食べること」を楽しんでもらうためにも、栄養面のみならず旬の食材や季節に沿った料理を提供するなどの工夫も大切です。

学校

保育園や小学校などで給食を通して子どもの成長や健康をサポートします。子ども達のために、美味しくて栄養満点な給食の献立を作成し、調理します。また昨今では食育への関心も高まっており、様々な体験を通して子どもたちの「食」への関心と知識を育むことも重要な仕事となりました。そのほか、子ども達のからだとこころの発達についての知識や、アレルギーに関しての知識を備えることも重要でしょう。

その他フリーランスでスポーツ選手などの個人と契約し、専属の管理栄養士になるという働き方もあります。個人の専門でなくとも、フリーペーパーのレシピ作成や、専門学校の非常勤講師など、フリーランスでもできるシゴトは非常に多いです。フリーランス管理栄養士専門の求人サイトも存在します。

なり方

①高校卒業              ②高校卒業

↓                   ↓

専門学校・短大卒業          4年制専門学校・大学卒業(管理栄養士養成課程)

↓                   ↓

栄養士資格取得            栄養士資格取得

↓                   ↓

栄養士として1年以上の実務経験    管理栄養士試験

↓                   ↓

管理栄養士国家試験          管理栄養士合格

管理栄養士合格

管理栄養士のなり方は上記の2通りで、共通しているのは高校卒業と栄養士資格の資格、管理栄養士国家資格を取得することです。栄養士の資格は養成施設を卒業することで得ることができます。

管理栄養士国家試験について

受験資格

以下の5つのうち1つでも条件を満たせば受験資格を得ることができます。

(1)修業年限が2年である栄養士養成施設を卒業して栄養士の免許を受けた後、次のAからEまでに掲げる施設において令和2年12月7日(月曜日)までに3年以上栄養の指導に従事した者

A )寄宿舎、学校、病院等の施設であって特定多数人に対して継続的に食事を供給するもの

B )食品の製造、加工、調理又は販売を業とする営業の施設

C )学校教育法(昭和22年法律第26号)第1条に規定する学校、同法第124条に規定する専修学校及び同法第134条第1項に規定する各種学校並びに就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律(平成18年法律第77号)第2条第7項に規定する幼保連携型認定こども園

D )栄養に関する研究施設及び保健所その他の栄養に関する事務を所掌する行政機関

E )AからDまでに掲げる施設のほか、栄養に関する知識の普及向上その他の栄養の指導の業務が行われる施設

(2)修業年限が3年である栄養士養成施設((5)に該当する養成施設を除く。)を卒業して栄養士の免許を受けた後、(1)のAからEまでに掲げる施設において令和2年12月7日(月曜日)までに2年以上栄養の指導に従事した者

(3)修業年限が4年である栄養士養成施設を卒業して栄養士の免許を受けた後、(1)のアからオまでに掲げる施設において令和2年12月7日(月曜日)までに1年以上栄養の指導に従事した者

(4)修業年限が4年である管理栄養士養成施設を卒業して令和3年3月25日(木曜日)までに栄養士の免許を受けた者(令和3年3月11日(木曜日)までに卒業する見込みの者を含む。)

(5)修業年限が3年である栄養士養成施設であって、栄養士法及び栄養改善法の一部を改正する法律 (昭和60年法律第73号)による改正前の栄養士法第5条の4第3号の指定を受けたものを卒業して栄養士の免許を受けた者

(厚生労働省HPより引用https://www.mhlw.go.jp/)

要するに、栄養士養成施設として指定されている専門学校に通った場合は2年または3年の実務経験が必要になり、4年制の管理栄養士養成課程の大学に通った場合は新卒後すぐ試験を受けることができるということです。

実務経験として認められる職場は以下です。

・寄宿舎、学校、病院等の施設であって、特定多数人に対して継続的に食事を供給するもの

・食品の製造、加工、調理又は販売を業とする営業の施設

・学校、専修学校、各種学校、幼保連携型認定こども園など

・栄養に関する研究施設及び保健所その他の栄養に関する事務を所掌する行政機関

・ほか、栄養に関する知識の普及向上その他の栄養の指導の業務が行われる施設

最短で管理栄養士になりたい人は管理栄養士養成課程のある4年制大学を選びましょう。栄養士・管理栄養士養成施設に関してはこちらで調べることができます。

 (公益社団法日本管理栄養士会https://www.dietitian.or.jp/)

試験内容

試験は200問で、全て選択問題(マークシート)です。

科目は社会・環境と健康、人体の構造と機能及び疾病の成り立ち、食べ物と健康、基礎栄養学、応用栄養学、栄養教育論、臨床栄養学、公衆栄養学、給食経営管理論など幅広く出題されます。

管理栄養士国家試験の問題は、厚生労働省より発表される出題基準に基づいて出題されており、また、この出題基準は法・制度の改正に対応するため、おおむね4年に一度改定されています。最新の出題基準に基づいた教材で受験準備をしましょう。

現在、最新の出題基準として「平成31年管理栄養士国家試験出題基準改定検討会」の報告書が発表されており、第34回管理栄養士国家試験から適用されています。大きな変更点として応用力試験が20問から30問に引き上げられたことがあげられます。

平成31年出題基準改定検討会報告書(厚労省HP)

合格点と合格率

200問中120問以上正解(正答率60%)で合格というのが例年のパターンです。合格率は約60%で毎年落ち着いています。

管理栄養士養成課程新卒の合格率は90%程ですが、その他の受験者の合格率は10%から20%となっており、ゆっくり勉強する時間がある新卒者のほうが圧倒的に資格を取りやすいことがわかります。

試験日程

毎年2月末または3月始めに試験が行われ、合格発表は3月末になります。

試験合格後は各都道府県で管理栄養士の免許申請を行います。書類審査を経て厚生労働省での名簿登録が完了すると、晴れて管理栄養士となります。

未経験の社会人が栄養士・管理栄養士を目指す場合にも、養成施設に通う必要があります。栄養士の専門学校や短大は昼間にしかやってませんので、通う場合は日中働くことができません。自身の貯蓄状況や環境を考えて判断しましょう。

雇用形態・働き方

正社員、派遣(契約)社員、アルバイト、フリーランス、Webサイト運営など、様々な働き方ができるのが管理栄養士の雇用形態の特徴です。

最も多いのは正社員として医療施設や高齢者施設に勤務する形態です。福利厚生やボーナスの支給など、安定した収入を得ることができるのが正社員の特徴であり魅力です。

いくつかの現場を経験したいという新卒者には、契約社員としていくつかの現場をまわるという方法もあります。正社員と比べると収入や安定性は落ちますが、現場経験を積むことができるのが大きなメリットです。

専業主婦が栄養士資格を活かしてアルバイトとして週に数回働く、というケースも多くあります。空いた時間で無理なく働くことができるので、家庭との両立がしやすいです。

その他はフリーランスやWebサイト運営など個人で働く形態です。仕事を自身で取る大変さはありますが、自分のペースで働ける利点があります。安定して仕事を取ることができれば、正社員として働く管理栄養士よりも稼ぐことも可能です。

自分に合った働き方、職場を探しましょう。

年収

令和2年の賃金基本構造統計調査1によると「栄養士」の平均年収が340万円でした。その他のサイトや独自の調査結果を総合し、シゴトニンTVは「管理栄養士」の正社員の平均年収を360万円とします。

国税庁の調査によると日本の給与所得者の平均年収は436万円であり、比較すると低い水準になります。

アルバイトや派遣社員の平均時給は1100円程で、その他一般のアルバイトとさほど変わりません。

フリーランスに関しては人によって収入がまったく異なります。年収1000万円以上の人もいれば、200万円未満の人も多くいます。フリーランスの特徴ですね。

男女比

管理栄養士の男女比は約1:9です。男性が圧倒的に少ない理由の1つとして、共学の管理栄養士養成施設が少ないことが挙げられます。

スケジュール例

病院勤務の場合

05:00 出社

06:00 朝食作り

08:00 食事提供、休憩

09:00 片付け・洗い物など

10:00 昼食準備

12:30 食事提供 

13:00 引継ぎ作業や片付け、掃除

14:00 退社

病院勤務の場合、早番と遅番のシフト制のことが多いです。上記の例は早番の例です。

朝早くに出社し、朝食をつくり、片付けを行い、昼食を作ります。病院の規模や患者数にもよりますが、複数人で大量の食事を作ります。

遅番の人が出社すると引継ぎを行い、軽く掃除をして退社します。

やりがい・楽しさ

・自分の管理した食事で患者が健康になったり、スポーツ選手の結果が出ることがやりがいにつながります。管理栄養士としての役目を果たしたという達成感を得ることができるのです。

・レシピや食事の組み合わせを考えたり、実際に調理をするのが楽しいという人は多いです。そういった人に適性があるのがシゴトです。

大変なこと・つらいこと

・管理栄養士が勤務する場所によっては、大量調理を任されることもあります。

とくに食数が多い病院や施設に勤務する場合には、食材の仕込みも調理の量も想像を絶するほどで、野菜は切っても切っても終わらず、単調な作業の繰り返しになることもあります。

・給料が特別高いわけではありませんので、特に契約社員の場合は生活が苦しくなることがあります。

最後に

最後までお読みいただきありがとうございます。

管理栄養士は栄養のプロフェッショナルです。確かな知識と専門性が必要なシゴトである分、目指すには早めに進路を決め、勉強する必要があります。

この記事が将来を考える中高生や、転職を考えている社会人、情報を必要とする全ての人のためになることを願っています。

参考にしたサイト

・e-stat職種統計データ第1表

https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003084610

・一般社団法人日本栄養士会

https://www.dietitian.or.jp/

・厚生労働省HP

https://www.mhlw.go.jp/

・キャリアガーデン

https://careergarden.jp/

・ジョブメドレー

https://job-medley.com/

・スタディサプリ

https://shingakunet.com/bunnya/

  1. https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2020/index.html