心理カウンセラーとは
心理カウンセラーとは職業の名前ではありません。世間では「心理学の知識を持って、シゴトとしてカウンセリングを行い、人々の心の悩みをサポートする人」をまとめて心理カウンセラーと呼びます。
広辞苑には「社会生活において個人が直面する悩みなどについて相談に応じ、適切な指導・助言をする人。精神医学・臨床心理学を修めた専門家の場合は心理カウンセラーと呼ぶことがある。」と記されています。
心理カウンセラーと臨床心理士の違い
どちらも悩みを抱えるクライアントに対してカウンセリングを行うという点に違いはありません。病院やクリニックなどの医療機関、学校、企業などで働くことができるという点も共通しています。しかし、臨床心理士が資格を取得している人しか名乗れないのに対して、心理カウンセラーには特別な定義がありません。
そこでシゴトニンラボは、心理カウンセラーを、「シゴトとしてカウンセリングを行う全ての者」と定義します。臨床心理士を含め、公認心理士や認定心理士等の資格保持者も、独学で学んで心理カウンセリングをする人も心理カウンセラーとして扱います。
勤務地と仕事内容
心理カウンセラーの主なシゴトはカウンセリングを行うことです。これに尽きます。もちろん、心理検査や資料・カルテの作成なども重要なシゴトですが、それらはすべてカウンセリングのための作業です。
心理カウンセラーの業務内容はその勤務地によって少しずつ異なります。
学校勤務の場合
学校における心理カウンセラーの主な業務は、生徒たちの悩みを聞き、そのうえでアドバイスをしたり、教員や保護者と連携して問題解決に取り組みます。
朝生徒たちと同じ時間に学校に行き、予約のある面談をこなしたり、休み時間に訪れる生徒の話を聞きます。面談相手のいない授業中は掃除をしたり、授業の見学をします。
学校に勤務する心理カウンセラーは公認心理士や臨床心理士の資格が必須になります。
病院勤務の場合
心療内科や精神科の医療チームの一員として病院でカウンセリングを行います。患者のカウンセリングが主なシゴトであり、1日に何件も予約が入ることもあります。
何もない時間はカルテを読み込んだり、部屋の掃除をしています。病院勤務の場合にも心理系の資格は必須になります。
独立して開業する場合
独立して自分の理想のサービスを提供しようという人も中にはいます。ただ新卒でいきなり開業というのは資金面や自身のスキルなど、足りないものが多いので、数年以上心理カウンセラーとしての経験を積んでから開業することをお勧めします。
現代はストレス社会と呼ばれており、カウンセラーの需要は高まっています。開業して成功した例も少なくありません。開業するのならクライアント(依頼主)の信頼を得るためにも心理系の資格を持っておいたほうがいいです。
その他の勤務先
上記以外の心理カウンセラーの勤務先として、大学・研究所系や福祉関係、警察組織などがあります。いずれも仕事内容は同じです。カウンセリングを主な仕事として、その他雑務や資料の作成を行っています。
このように心理カウンセラーは、さまざまな悩みをもつ相談者の話を聞き、悩みに寄り添うように対話し、相談者自身が解決していけるようサポートするシゴトです。
また後述しますが、心理カウンセラーは正社員としてひとつの職場で働くのではなく、フリーランスとしていくつかの職場を掛け持ちしていることも多くあります。むしろ正社員としてひとつの職場に常勤している人の割合のほうが少ないです。
そんな心理家カウンセラーの雇用形態について見ていきましょう。
心理カウンセラーの雇用形態
心理カウンセラーの働き方は「常勤」と「非常勤」に分かれます。非常勤で働く人が多いことがこのシゴトの特徴となっています。正社員でなくても、専門性の強い仕事のため責任のある仕事を任されます。
常勤は正社員、正職員というカタチで医療機関などに勤務する形態です。その他一般の会社員と同じシステムで、1週間フルタイムで働きます。
それに対し非常勤は週に2,3回程度の勤務をする形態であり、パートタイムやアルバイトと同じような働き方です。非常勤が正社員と同じかそれ以上に稼ぐには、複数の現場を掛け持ちする必要があります。
中には、資格を活かしてパートとして働く主婦(夫)も存在します。そういった人は、非常勤のアルバイトカウンセラーとして福祉施設や個人の施設で働きます。
なり方と資格
心理カウンセラーになるためには、資格の取得はほとんど必須です。心理学系の資格を取って就職活動を行いましょう。いくつかの資格を紹介します。
公認心理師
平成27年9月9日に公認心理師法が成立し、平成29年9月15日に施行され、日本初の心理職の国家資格として「公認心理師」が誕生しました。公認心理師の業務内容は以下です。
保健医療、福祉、教育その他の分野において、専門的知識及び技術をもって、
①心理に関する支援を要する者の心理状態を観察し、その結果を分析すること。
②心理に関する支援を要する者に対し、その心理に関する相談に応じ、助言、指導その他 の援助を行うこと。
③心理に関する支援を要する者の関係者に対し、その相談に応じ、助言、指導その他の援 助を行うこと。
④心の健康に関する知識の普及を図るための教育及び情報の提供を行うこと。
受験資格
公認心理師試験を受けるには、以下の条件のうちいずれかが必要となります。
A:4年制大学で指定科目を履修し、さらに大学院で指定科目を履修
B:4年制大学で指定科目を履修し、さらに指定の施設で実務経験を2年以上
C:外国の大学において心理に関する科目を修め、かつ、外国の大学院において 心理に 関する科目を修了
大学院まで行くか、指定の施設で2年実務経験をして初めて受験資格を得ることができます。大学、大学院に通うだけでなく、心理系の指定科目を受けなければなりません。指定科目や指定の施設については厚生労働省のホームページで確認できます。(https://www.mhlw.go.jp/)
試験内容
試験は筆記試験のみです。マークシート形式で、心理師としての基本姿勢や心理学の知識について幅広く出題されます。公認心理師は2017年にできたばかりの資格のため、試験時間や問題数がいまだ定まっていません。
以下は試験について、厚生労働省の資料(https://www.mhlw.go.jp/)から引用したものです。
公認心理師試験について
1.出題範囲
- 科目は定めず、「公認心理師として具有すべき知識及び技能」について出題する。
- 出題範囲として科目を定めないため、法附則第2条第2項に定める者(いわゆる現任者)に対する科目の一部免除は行わない。
2.試験の実施方法等
- 全問マークシート方式とし、1日間で実施する。
- 150~200 問程度を出題する。実施時間としては、合計300分程度を上限とする。
- 公認心理師としての基本的姿勢を含めた基本的能力を主題とする問題と、それ以外の問題を 設ける。また、ケース問題を可能な限り多く出題する。
- 障害のある受験者については、回答方法等、受験上の配慮をする。
3.合格基準
- 全体の正答率は60%程度以上を基準とする。
2020年度まで3回試験が行われましたが、合格率は平均すると約60%でした。
公認心理師はその歴史が浅く、データも少ないです。主な就職先は医療施設やスクールカウンセラー、民間の産業カウンセラーです。心理系初の国家資格のため、これからに期待です。
臨床心理士
臨床心理士は、心の問題に取り組む心理専門職の証となる資格です。公認心理師が誕生するまでは最も権威のある心理系資格でした。
日本臨床心理士資格認定協会によると、臨床心理とは「臨床心理学に基づく知識や技術を用いて、人間のこころの問題にアプローチするこころの専門家」です。臨床は「現場」や「実践的な」という意味を持ち、臨床心理士は患者に直接的な診療を行います。
受験資格
主な受験資格は以下です。
- 指定大学院(1種・2種)を修了し、所定の条件を充足している者
- 臨床心理士養成に関する専門職大学院を修了した者
- 諸外国で指定大学院と同等以上の教育歴があり、修了後の日本国内における心理臨床経験 2年以上を有する者
- 医師免許取得者で、取得後、心理臨床経験2年以上を有する者など
この他にもありますが、主な受験資格は以上です。1つでも条件を満たしていれば試験を受けることができます。
要するに指定の大学院を修了した者と2年間の実務経験を有する者です。指定の大学院というのはごく限られた所ではありませんので安心してください。2020年では157の大学院が指定されています
試験内容
試験は一次試験と二次試験があります。
一次試験
①多肢選択式問題
4つの専門業務について、また臨床心理士としての基本的な姿勢に関わるような基本問題が100問出題されます。
②論述式試験
「心理臨床に関する1題のテーマ」について1000〜1200字で回答します。簡潔に論理的に文章をまとめるのがポイントです。
これらの試験を1日にまとめて行います。そして一次試験に合格した者のみが二次試験の受験資格を得ることができます。
二次試験
二次試験は口頭試験(面接)です。臨床心理士にふさわしい知識やスキル、人格を兼ね備えた人材か、最後の確認がなされます。
試験の合格率は例年60〜65%であり、比較的合格率は高いといえます。しかし受験資格のハードルが高く、しっかり大学院で学び、対策した人が多いので、やはり難易度は高いでしょう。
メンタル心理カウンセラー
医療・福祉・教育・産業界などさまざまな場所で求められるカウンセリング能力を備えていることを証明するもので、多くの心理カウンセラーが取得しています。こちらは転職を考えている社会人や主婦(夫)でも受けやすい資格です。
受験資格
一般財団法人日本能力開発推進協会(JADP)認定の通信講座の全カリキュラムを修了した者。
カリキュラムは2ヶ月で全て受けることができます。通信講座が3万円弱、受験が5,600円かかるので、全体では35000円程の出費です。
試験内容
講座の内容である心理学基礎概論、カウンセリング理論、カウンセリング実践技術についての知識、開業に関わる知識から問われます。
受験資格があれば、自宅でいつでも受けることができます。
100問中70問以上合格で、資格取得となり、合格者には資格認定カードが送付されます。
以上に紹介した以外にも「メンタルケアカウンセラー」や「産業カウンセラー」など、役立つ資格は多々ありますが、ここでは割愛させていただきます。
資格については、臨床心理士と、国家資格である公認心理師が難しい分、価値が高いです。その他の民間資格も十分役に立つので、目指す方はチェックしてみてください。
心理カウンセラーの年収
ほとんどの心理カウンセラーの年収は300〜400万円であり、平均年収は約350万円です。日本の民間企業の平均年収は436万円であるため、比較的収入は低いです。正社員としての求人・採用が少なく、非常勤で働く人が多いのが主な原因でしょう。
男女比
女性75%、男性25%という割合です。
正社員の求人が少なく、男性が家庭を養っていくには給与面で不安があることが理由の一つとして考えられそうです。
スケジュール例
・病院勤務の場合
09:00 出社、資料読み込み
10:00 カウンセリング1
11:30 資料作成
12:00 休憩、昼食
13:00 カウンセリング2
15:00 カウンセリング3
17:00 カルテ作成や患者の資料読みこみ
18:30 退社
病院勤務だと、朝は9時に出社するところが多いです。9時前に出社して、患者の資料を読んでカウンセリングに備えます。カウンセリング後にはカルテなど、資料をまとめます。カウンセリングの予約状況によって昼ごはんの時間は早くなったり遅くなったりします。
病院には営業時間があるので、病院で働く心理カウンセラーは定時で帰宅できる日がほとんどです。
やりがい・魅力
患者さんやクライアントが回復する様子を見るのがやりがいです。感謝の言葉や手紙をもらうたびにモチベーションが上がります。
広い意味で人助けのシゴトのため、誇りややりがいを感じやすいです。
つらいこと・大変なこと
いじめ、虐待などつらい話を聞き続けることや、クライアントが怒りや憎しみの感情をぶつけてきたり、つらいことは多いです。
非常勤で安定して収入を得るために複数の働き先を探すことが大変です。
向いている人
コミュニケーション能力が高い人や精神力が強い人に向いています。患者と話しやわらかい空気をつくり、自身が精神のバランスを崩さず働き続ける必要があるからです。
その他患者を見る観察力や冷静さ、とっさのことに柔軟さが求められるシゴトです。
参考にしたサイト
・JobMedley
・一般財団法人日本能力開発推進協会
https://www.jadp-society.or.jp/
・資格のキャリカレ
・キャリアガーデン
・スタディサプリ
https://shingakunet.com/bunnya/