今回は「診療放射線技師」のシゴトについて取り上げます。
みなさんは放射線技師のシゴトに関してどれくらい知っていますか?私は、歯医者さんでレントゲンを撮ってくれる人や、学校の健康診断で機械を操作している人、くらいのイメージしかありませんでした。
ですが実は診療放射線技師のシゴトはレントゲンの撮影だけではありません。なんなら、放射線技師は放射線を扱わない検査も担当するなど、検査に関するスペシャリストともいえます。今日はそんな放射線技師のシゴトを見ていきましょう。
仕事内容
放射線技師が行う検査・治療
診療放射線技師の主なシゴトは「医療現場において放射線による検査や治療を行うこと」です。特に放射線技師は、検査業務に関わることが多くなります。では、放射線技師が行う検査にはどのようなものがあるのでしょうか。ここでは主な6種類の検査と、2種類の治療について見てみましょう。
X線撮影
X線撮影とはX線の通り抜けた部分は黒く、通さない部分は白く映ることを利用した検査です。心臓、肺、骨、胃、胸などの検査に利用されます。
機器を操作することだけではなく、患部を見逃さないように患者さんに姿勢や呼吸方法の指導をすることも放射線技師の大事なシゴトです。
CT検査
CT検査とは、X線(放射線の一種)を使って身体の断面図や患部の立体的な画像を撮影する検査です。頭、胸、胃、歯、血管など、身体全体の検査に用いられます。X線検査との違いは、患部を平面ではなく様々な角度から見れることです。
CT検査はコンピューターを必ず使い、放射線技師はコンピューターによって画像を見やすく構成したり処理したりします。
MRI検査
MRI検査とは、磁場と電波を使って身体の断面図や患部の立体的な画像を撮影する検査です。CT検査との違いは放射線被曝がないこと、より精密な画像が撮影できること、柔らかい組織の撮影に適していることです。
MRI検査もコンピューターを必ず使い、画像処理はMRI検査に携わる放射線技師の大事なシゴトです。また、撮影時患者さんが金属を身に着けていると非常に危険であるため、外すように注意を促すことも忘れてはいけません。
超音波検査(エコー検査)
超音波検査とは、放射線を使わず人の耳に聞こえない超音波を体内に送り、その反射波を画像にする検査です。腹部、心臓、血管などに使われますが、骨と肺の検査はできません。
放射線を用いないため「臨床検査技師」が検査を行うこともありますが、人体を見ることに精通した放射線技師が行うこともあります。
消化管造影検査(バリウム検査)
胃を発泡剤で膨らませ、「バリウム」という放射性物質を付着させて画像を撮影する検査です。
放射線技師は機械を扱うだけではなく、撮影しやすいように患者さんに動いてもらうなどコミュニケーションを取る必要があります。
乳房撮影(マンモグラフィ)
乳房を様々な方向から圧迫して、腫瘍の有無や大きさ、形などを判断する画像を撮影することが放射線技師のシゴトです。
乳房撮影は患者さんが女性であり、検査を担当する放射線技師も女性であることが多いです。
外部照射療法
放射線療法で最も多く行われる方法で、X線や電子線を病巣に当てることで身体にメスを入れることなく治療をします。特にがんの治療に用いられることが多いです。
放射線技師はリニアックと呼ばれる機械を使って治療を行います。強い放射線を当てる治療は他組織にも影響を及ぼすため、放射線技師はシミュレータや機械の選定など、なるべく放射線の影響が低くなるように準備を入念に行います。
RI(放射性同位元素)内用療法
特定の放射性物質が特定の場所に集まることを利用して、放射性物質を含んだ医薬品を使って治療をします。がんや甲状腺疾患にも用いられます。内用とは内服と同じ意味で、薬を摂取することを指します。
所属先でのシゴト
診療放射線技師は、病院や診療所で働く人が多いです。もしくは健診機関、保健所など、医療機関で働いている人が大部分を占めています。
他には医療機器関連の企業で働く場合もあります。それぞれのシゴトについて、ここで見ていきましょう。
医療機関
診療放射線技師の大部分は、医療機関で働いています。
規模が大きい病院では、検査の分野ごとに診療放射線技師のシゴトが分かれていることが多いです。
治療を担当する放射線技師も検査を担当する放射線技師も、共通するのはチーム医療の一員として働くことです。そのため様々な科の医師やコメディカルスタッフと連携を取っていくことが求められます。
逆に小規模な診療所の場合は、検査が分野ごとに分かれておらず、全ての検査を担当することもあります。診療所で大規模な施設を持つところは少ないため、放射線技師が直接放射線での治療行為をすることは少ないです。
保健所や健診機関で働く放射線技師も主に検査を担当します。あくまで検査機関のため、検査から治療の計画を立てることは少ないです。多くの場合夜勤がないため、病院やクリニックより規則的な生活を送ることができます。
医療機器関連の企業
医療機器関連企業とは、CT装置やMRI装置など検査機器を開発している企業のことを指します。
ここで働く放射線技師は、診療放射線の知識を生かして企業の装置開発に携わります。
なり方
診療放射線技師になるには、3つのステップを踏む必要があります。それぞれ見ていきましょう。
診療放射線技師養成課程のある学校を卒業する
まず放射線技師になるためには、放射線技師養成課程のある大学で3年以上学び、卒業することが必要です。これが「放射線技師国家試験」を受験するための条件になるためです。
学校では放射線検査技師になるための知識や技能を学ぶほか、卒業までに3カ月程度の実習を行います。これは3年次もしくは4年次に行うことが多いです。
診療放射線技師国家試験に合格する
診療放射線技師になるには、最終学年もしくは卒業後に診療放射線技師国家試験に合格する必要があります。ここでは簡単に診療放射線技師国家試験の概要を見てみましょう。
試験日程
毎年2月中旬に実施
試験内容
筆記試験のみの試験になります。
試験では基礎的な医学知識を問う問題をはじめ、放射線技師の専門とする放射線に関する問題、機器の操作方法を問う問題、撮影に関する問題などが出題されます。
合格率
『診療放射線技師国家試験結果1』によると、2021年度国家試験の合格率は74%となっています。
診療放射線技師国家試験は年々合格水準が引き上げられており、合格率は下がってきています。それを示すものとして、2017年度では85.4%と、現在より10%以上高い水準でした。
これは放射線技師の人数が増えて人数面の需要が下がってきたと考えられます。
診療放射線技師として就職する
国家試験に合格したら診療放射線技師として働くことができますが、そのためには就職活動をすることが必要となります。学校に在籍している人は、多くの場合最終学年の8~10月頃に採用試験を受ける人が多いです。早い人だと、最終学年の4月から就職活動をしている人もいます。
採用試験では主に筆記試験、小論文、面接を行うところが多いです。筆記試験は一般常識問題や放射線技師としての知識が問われます。小論文では放射線技師のシゴト、医療関連の題が出題されます。
年収
『令和2年賃金構造基本統計調査2』によると、診療放射線技師の平均年収は548.7万円です。これは、全国の給与所得者の平均年収である436万円3よりも100万円以上高くなっています。
月給で見ると、放射線技師の平均月給は35万円程度になっています。これらの数値を見ると、他のコメディカルスタッフと比べても、高い水準にあるといえます。
男女比
『平成27年度国勢調査4』によると、診療放射線技師の男性は38,940人、女性は11,540人と女性が少なくなっています。女性の数をパーセンテージにすると23%です。
ですが現在は放射線技師がある学部における女性の数は増えており、これから放射線技師になる女性の数は年々増えていくことが考えられます。また乳房検査など、検査の都合上男性の技師が担当することに抵抗を覚える女性もいるため、そういった場でも女性検査技師の数が必要とされています。
スケジュール例
放射線技師の1日はその日の検査のスケジュールに基づいて組まれています。
基本的には検査は予約制であるため、放射線技師はその予約スケジュールに基づいてシゴトをします。ここだは、病院の放射線技師の1日を紹介します。
8:00 出勤・機器点検
8:30 会議や前日の引継ぎ事項
8:30 検査業務や事務作業
12:00 休憩
13:00 検査業務や事務作業
17:00 退勤
求人・就職情報・需要
日本放射線技師会の『診療放射線技師数の需要と供給の将来予想5』によると、診療放射線技師は将来的に供給過剰、つまり労働者が増えすぎると予想されています。
この論文は2016年に発表されたもので、ここでは需要と供給を均衡させるには国家試験の合格率を将来的に60%に、あるいは技師養成校の入学定員を2割削減する必要が試算されました。
もちろん必ずしもそうなるということはありませんが、実際合格率は年々下げられています。そういったことも考えると、学生時代からの努力がより必要とされる可能性が高いです。
やりがい・魅力
診療放射線技師のシゴトの魅力は、検査や治療を駆使して患者さんの不安を解消したり、実際に病気の治療ができることです。
放射線医療は日進月歩、技術や機器も、必要な技術も年々新しくなっています。その技術と機器を駆使して医師の目となり、患者さんの病気を発見できることは放射線技師のシゴトの魅力です。
また、放射線技師は機器を使って医師のように病気の治療に関わることもあります。コメディカルスタッフの中でも病気や病巣の直接的な治療に関われる職種は少ないです。そういった面でもやりがいを感じることができるでしょう。
つらいこと・大変なこと
放射線技師の大変なことは、患者さんの病気への不安だけでなく、検査への不安、放射線被ばくへの不安を受け止めなければならないことです。
放射線技師が使う機器や薬は人体に影響がほとんどないものを使っていますが、患者さんによっては不安に感じる人もいます。そういった患者さんに対して日常でも微量の放射線が存在しているなど正しい知識を教えるだけではなく、それでも不安だという患者さんの気持ちに寄り添う必要があることは大変なことだといえます。
今回の記事はこれで終わりです。最後まで読んでくださった方、ありがとうございました。また次回の記事でお会いしましょう。
参考にしたサイト
『キャリアガーデン』
https://careergarden.jp/shinryouhoushagishi/
『職業情報提供サイト(日本版O-NET)』
https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/163
『スタディサプリ進路』
https://shingakunet.com/bunnya/w0033/x0440/
『13歳のハローワーク』
https://www.13hw.com/jobcontent/01_04_13.html
『公益社団法人診療放射線技師会ーみんなに知ってもらいたい診療放射線技師のこと』
『公益社団法人放射線技師会ー診療放射線技師のことがわかる本』
http://www.kyohogi.jp/pdf/oshigoto.pdf
『山手CAクリニックー放射線治療の種類』
『2021年診療放射線技師国家試験結果』
http://eic.obunsha.co.jp/eic/pdf/kokushi/2021/0413_1.pdf
『日本放射線技師会ー診療放射線技師数の需要と供給の将来予想』
http://www.jart.jp/activity/ib0rgt0000004mi3-att/2018-10_paper01.pdf
- https://www.mhlw.go.jp/kouseiroudoushou/shikaku_shiken/goukaku.html
- https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2020/index.html
- 令和元年 民間給与実態統計調査を参照https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan2019/pdf/001.pdf
- https://www.stat.go.jp/data/kokusei/2015/kekka.html
- http://www.jart.jp/