今回は看護師のシゴトを紹介します。
看護師のシゴトというと、馴染みがあるようで実は仕事内容や勤務先が想像しづらいのではないでしょうか。私は病院で患者さんの世話をする、ぐらいのイメージしかなく、他の勤務先だったり、日々の仕事内容のこともわかりません。
今回の記事では、看護師のシゴトについて具体的に見てみましょう。
仕事内容
看護師のシゴトは主に「診療・治療中の補助」と「療養上の世話」をすることです。また患者の心のケア、患者と医師のコミュニケーションの架け橋にもなります。
看護師が具体的にどんなことをしているかというと、血圧や脈拍の測定、点滴や採血、入浴補助や食事補助などをしています。
このようなシゴトを病院や診療所、他には訪問看護・介護施設などで行っています。
ではまず、看護師の主なシゴト2つについて見てみましょう。
診療・治療中の補助
看護師は医師が患者さんの診察をする際、その補助をします。以下、いくつか看護師の補助の例を記載します。
・採血や注射・点滴
・血圧・脈拍の測定
・治療・診察の器具準備
・手術時の器具出し
・手術や治療への患者の疑問、症状等をヒアリング
・ナースコールの対応
このように、医師が治療を有効に進められるように診察や治療の補助をします。
療養上の世話
中規模~大規模の病院になると、看護師が患者さんの身の回りの世話をすることもあります。これは中規模以上の病院では、入院患者を受け入れているために必要となる業務です。以下、いくつか看護師の業務の例を記載します。
・食事の配膳
・食事の補助
・排泄の補助
・身体の清拭(せいしき)
・患者の部屋の清掃
・外出の補助
清拭(せいしき)とは、看護師が患者さんの身体を タオル等で拭く行為を指します。
看護師はこれらの行為を日常業務の一環として行います。
看護師の勤務先
看護師の勤務先の割合を見てみましょう。参照データは平成 30 年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況です。
統計によれば、病院で働く看護師が最も多く、全体の70.9%を占めています。
次に多いのがクリニック(診療所)の看護師です。これは全体の12.8%を占めています。
3番目に多いのが介護保健施設の看護師です。これは全体の7.3%を占めています。
それぞれの事業所についてのシゴト内容を見てみましょう。
大学病院
大学病院の主な特徴は「最先端の医療技術が提供されていること」「専門科目ごとに診察が受けられること」の2つです。
大学病院は国立・公立・私立の大学の附属機関として存在しています。そのため研究機関としての役割が強く、学生の研修医や看護学生の研修も積極的に受け入れているところが多いです。
大学病院で勤務する看護師は、専門科目に応じたシゴトに従事することになります。そこでは先ほど述べた診療中の補助・療養上の世話の両方のシゴトをします。
また大学病院の研究機関という特性上、看護師の研修や研究会、教育システムが充実しています。専門分野ごとに知識が集積されているため、興味のある分野や看護師として活躍したい分野が決まっている人には学べることが多いでしょう。
大学病院で働く注意点は、以下の点です。
・専門科目が決まっているため幅広い看護技術を身に着けにくいこと
・勉強会の準備などもあり、多忙であること
・夜勤があること
これらは大学病院の魅力の裏返しでもあります。自身が目指す看護師像を考えて大学病院で働くかを決めましょう。
一般病院
一般病院の主な特徴は「その多くが地域医療の柱であること」「大学病院よりも幅広い治療を担うこと」の2つです。
一般病院は規模もその形態も様々です。自治体が運営している病院、組合が運営している病院、法人が運営している病院などがあります。看護師の多くはこの一般病院に勤めています。
一般病院でのシゴトは基本大学病院と同じ、診療中の補助・療養上の世話の両方です。
一般病院が大学病院と違う点は、幅広い医療行為に従事できる点です。大学病院ほどはっきりと専門科目ごとにシゴトの幅が狭まるわけではなく、看護師は様々な経験を積むことができます。
また、大学病院よりも「地域の医療機関」という特性が強いです。地域の診療所から紹介されてきた患者さんが多いため、地域との架け橋のような役割があります。中には地域医療推進に力を入れている病院もあります。
一般病院で働く上での注意点は以下です。
・大学病院より専門分野に集中することが難しい
・夜勤があること
・病院により設備に差があること
クリニック(診療所)
クリニックは病院よりも小規模の診療所を指します。クリニックの特徴は「多くの場合入院するための設備がないこと」「診療科目が1つないし少数であること」「地域に根付いていること」の3つです。
クリニックでは看護師のシゴトは診察中の補助が主なシゴトになります。入院設備がないため療養上の世話をする機会は少なくなります。その代わりにクリニックでは診察中の補助の量が多くなります。
また、クリニックは地域に根付いている所が多く、患者さんとの距離はより近くなります。診療科目も限られているため、看護師として専門分野を決めている方はやりがいを感じることができます。
また、クリニックは夜勤がないため、日勤のみで働きたいと考えている方にはおすすめです。
クリニックで働くうえでの注意点は以下です。
・夜勤がないため平均年収が低くなること
・入院に関わる看護技術を身に着けにくいこと
・職員が少ないため、職場環境が合うかどうかがより大切になること
介護保健施設
介護保険施設の看護師のシゴトの特徴は「生活の支援がおもであること」「健康管理と投薬管理の性質が強いこと」の2つです。
福祉施設では介護職員だけでは出来ない業務があります。例えば注射は介護士が行うことができません。そうした際に補助に入るのが看護師のシゴトです。
多くの場合患者さんとは顔見知りになるため、密接なコミュニケーションを取ることも必要とされます。
また、介護保健施設は容体が急変される患者さんもいるため、そういった際に医師が到着するまでの応急処置をすることもあります。
介護施設で働く上での注意点は以下です。
・看護師としての技術が身に付きにくい
・緊急時に果たす役割が大きい
なり方
看護師になるには、国家資格である「看護師資格」が必要となります。
看護師資格を得るには、文部科学大臣指定の学校もしくは厚生労働大臣指定の看護師養成所を卒業し、看護師国家試験に合格しなければなりません。
看護師になるための学校には4年制大学、3年制の短大・専門学校があります。注意しなければならないのは、2年制の看護学校では「准看護師」の受験資格しか得られないということです。
看護師国家試験について
試験内容
【筆記試験のみ】
マークシートと小論文の問題があります。
出題範囲は以下のテーマがあります。
・人体の構造と機能
・疾病の成り立ちと回復の促進
・健康支援と社会保障制度
・基礎看護学
・成人看護学
・老年看護学
・小児看護学
・母性看護学
・精神看護学
・在宅看護論および看護の統合と実践
試験時期
例年2月に実施
合格率
例年90%前後
その他の詳しい情報はこちらを参照してください。
看護師の就職活動の時期
看護師は3年生の12月頃から就職活動を意識して動き始めます。
4年生の5月から選考が開始します。2月の国家試験の対策があるため、遅くとも10月までには就職活動を終わらせることが一般的であるようです。
年収
『令和2年賃金構造基本統計調査1』によると、看護師・准看護師を合わせた平均年収は491.8万円です。これは日本の給与所得者の平均年収である436万円2と比べて50万円以上高い数字になっています。
看護師は基本給に夜勤手当、住宅手当などが加算されるのが普通です。
また、福祉・医療職全般に言えることですが、他の民間企業の職種に比べると、年齢による給与面の待遇の差はそれほど大きくありません。
看護師は新卒時には400万円ほどの年収ですが、50代の年収ピーク時を見ても、年収は530万ほどと、新卒時との差が130万円ほどしかありません。民間企業や公務員の行政職でも、新卒時と50代では平均年収が200万円以上違うこともざらにあることを考えると、看護師は年齢による待遇差が少ないと考えられます。
男女比
厚生労働省の『平成30年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況3』によると、「看護師」の男女比は男性7.8%・女性92.2%、「准看護師」の男女比は男性7.2%・女性92.8%と圧倒的に女性が多くなっています。
ですが、近年は男性の看護師も増えてきています。この調査は2年ごとに実施されているのですが、平成20年から男性は毎回0.5~0.6%増え続けています。これは人数にすると2年ごとに男性看護師が1万人増え続けているということです。
長らく福祉や医療職の一部は「女性のシゴト」という風に捉えられがちでしたが、認識が変わりつつあります。
スケジュール例
病院で働く看護師は病院によってシフト制か固定給かが変わってきます。また、夜勤のあるなしも変わります。大型の病院で入院患者が常にいるような病院は基本的に夜勤があります。
ここでは日勤の看護師のスケジュール例を紹介します。
8:00 出勤
9:00 午前の業務
・点滴交換
・入浴、排泄介助、清拭など
12:00 休憩
13:00 午後の業務
・記録を作成
・研修に参加
・看護計画作成
17:00 業務終了
日勤の看護師は朝9~17時頃まで勤務する病院が多いです。その分夜勤の看護師が長く勤務することになります。このように日勤と夜勤でシフトが分かれているシステムのことを「2交代制」と呼ぶこともあります。中には夜勤の負担を減らすために「3交代制」を採用する病院もあります。
実際の勤務は患者の状態やナースコールなど、その場の状況によって変わるので、決まった時間に昼ごはんを食べれるとは限りません。休む間もなく1日の勤務が終わることも珍しくありません。非常に忙しいシゴトです。ただ勤務時間が決まっていて、残業はほとんどないです。
やりがい・魅力
看護師の魅力は、直接的に人の命を支えるシゴトができることです。
看護師としてどこの機関で働くことになっても、人の健康を守る、病気を治すためにシゴトをすることに変わりはありません。そして看護師のシゴトは、比較的に医師よりも長い時間患者さんと関わることになります。
身体の健康と心の健康が繋がっていることは、統計調査でも明らかにされています。また、社会的な立場や悩みが健康と繋がっていることも明らかにされてきました。
そのような認識の中で、身近で患者を支える看護師への期待も高まっています。
つらいこと・大変なこと
看護師のつらいことは、勤務時間が不規則であること、難しい患者さんへの対応が挙げられます。
夜勤と日勤が1週間に両方あり、睡眠リズムが乱れがちになります。
また、患者さんの中には難しい症例の人や特殊なケアが必要な方、精神的ケアが必要な方もいます。そういった方への対応で難しく感じる場面もあるでしょう。
今回の記事はこれで終わりです。最後まで読んでくださった方、ありがとうございました。また次回の記事でお会いしましょう。
参考にしたサイト
キャリアガーデン
https://careergarden.jp/kangoshi/
職業情報提供サイト(日本版O-NET)
https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/156
スタディサプリ進路
https://shingakunet.com/bunnya/w0033/x0433/
13歳のハローワーク
https://www.13hw.com/jobcontent/01_04_02.html
公益社団法人 日本看護協会
平成30年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei/18/dl/gaikyo.pdf
- https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2020/index.html
- 令和元年 民間給与実態統計調査を参照https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan2019/pdf/001.pdf
- https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei/18/