今回紹介するシゴトは臨床検査技師です。
私は臨床検査技師と聞いて、病院でレントゲンを撮る人を想像しましたが、どうやら違うようです。レントゲンを撮る人については「放射線技師」という別の職業の人たちを指しています。
では、臨床検査技師とはどんなシゴトをする人たちなのでしょうか?そのシゴトを見てみましょう。
仕事内容
臨床検査技師のシゴトは簡単にまとめると、「専用の機械を操作して、患者の身体や組織を検査すること」です。「臨床」とはここでは「患者の治療や診察に関係する」という意味になります。
臨床検査技師のシゴトは主に2つに分かれます。「検体検査」と「生理機能検査」です。この2つは合わせて「臨床検査」と呼ばれます。
検体検査は患者から採取した血液や尿、細胞などを調べます。
生理機能検査は心電図や脳波など患者の体を直接調べます。
この2つの臨床検査は、主に6つの目的で行われます。
(1)症状の原因を調べる
(2)症状が似た病気の中から、どの病気に当たるか調べる
(3)診断の確認をする
(4)病気の進行度を調べる
(5)投薬による副作用の度合を調べる
(6)治療効果を確認する
続いて、検体検査と生体検査の細かい内容を見ていきましょう。
検体検査
一般検査
尿・便検査が主な方法になりますが、髄液検査などもあります。成分を調べて腎臓や肝臓の異常を検出したり、消化器の異常をチェックしたりします。採取物の細胞を顕微鏡で調べることもあります。
尿検査というと寄生虫の発見のイメージが強いですが、尿から癌細胞などが見つかる場合もあります。
血液学的検査
赤血球やヘモグロビン(血液中で酸素の運搬をしているたんぱく質)から貧血の程度を測ります。白血球の多さからは炎症の程度を測ります。
これらの検査は近年では一部自動化が進んでいます。反対に検査では顕微鏡で直接異常を探すことも多いです。
生化学的検査
血液中の糖質、ビタミン、ホルモンなどを調べ、臓器の異常を測ります。
この検査は近年では自動化が進んでおり、大型の装置が導入されています。そのため装置の点検や管理もシゴトの内に入っています。
免疫血清学的検査
免疫に関係する病気を調べ、身体に侵入した細菌やウイルスを特定します。
この検査は病気の発見と直接結びつくことが多く、例えば肝炎、梅毒、リウマチなどの診断に用います。
微生物学的検査
採取した検体から病気を起こす細菌などの微生物を調べます。
この検査は感染症の際に多く用いられ、有名なものですとノロウイルスの検査があります。
輸血・臓器移植関連検査
輸血のための血液型検査、臓器移植のための臓器適合検査があります。
輸血は緊急の場合も多くあり、正確さと迅速さが求められます。
遺伝子検査
遺伝子を調べてDNAの異常がないか調べます。
病理学的検査
臓器や組織の一部、細胞を顕微鏡によって観察し、悪性細胞などを見つけます。
この検査では組織や細胞の標本を作製して染色をします。
生理機能検査
心臓系検査
心電図、心音図などを調べ、心筋梗塞や心不全などの診断に活用します。
脳波検査
頭に電極を装着し、電気信号を脳波計で記録して脳神経などを調べます。
眼底写真検査
網膜を撮影し、糖尿病などの疾患の影響で血管に起こる変化を調べます。
呼吸検査
肺活量などの呼吸器の測定を行い、レントゲンだけではわからない肺や気管支の状態を調べます。
超音波検査
身体に超音波を当て、その反射波によって臓器や妊娠中の胎児の状態を調べます。
胎児の観察に用いるイメージが強いですが、あらゆる臓器に対してこの検査は有効です。
磁気共鳴画像検査
身体に磁気を当て、体内の共鳴エネルギーを画像にして検査します。
熱画像検査
身体の温度をカラー画像にし、熱分布から患部の状態を調べます。
臨床検査技師はこれらの検査の一部、もしくは複数を掛け持ちで行っています。
また臨床検査技師として経験を積んだのち、専門分野で活躍する検査に携わる人もいます。
臨床検査技師の就職先
臨床検査技師免許取得後は、所属する学校の斡旋で就職することが多いです。
就職先は主に6つです。それぞれ見ていきましょう。
病院
病院は臨床検査技師の中でも大規模な職場になります。そこでは数名~数十名の臨床検査技師が勤務し、24時間体制で臨床検査を行っています。
また社会人未経験者の採用は少なく、新卒と経験者の採用が多いです。
クリニック
小規模の医療機関を指し、働いている臨床検査技師は数名程度のことが多いです。
各医療機関の特徴に応じた検査の知識と技術が求められます。
健診センター
健診センターは健康チェックや健康診断をする場所です。主に法人・財団・協同組合が運営しています。
臨床検査技師は各地の健診センターで、病気の早期発見に貢献しています。
保健所
保健所の臨床検査技師は公務員として働きます。保健所では食中毒や感染症が発生した場合の検査、食品の成分検査、地域の衛生管理指導などを行います。
公務員の特徴は、地域の大規模な感染症への対応など、地域全体に貢献できることです。
臨床検査センター
臨床検査センターでは、外部の病院やクリニックから送られた検体を分析します。病院では対応が難しい臨床検査も行います。また、定期健診の検査もここに依頼されることが多いため、4月~5月は非常に多忙になります。
また、臨床検査センターでは同僚や医師と関わる機会は多いですが、患者と関わる機会がほぼないことが特徴になります。
その他
ここからは主に転職や博士課程の卒業者に限定した就職先を紹介します。
1つ目は、医療機器メーカーです。
ここでの臨床検査技師のシゴトは各種医療機器の開発協力・点検・管理が主になります。また、検査機器の調整にも取り組んでいます。
2つ目は、臨床研究コーディネーターです。このシゴトは主に研究室、研究センターなどが勤務先になります。
臨床研究コーディネーターは治験や研究に対して、その手順や正当性を証明することなどを行います。他にもデータの管理、記録作業など幅広い業務を行います。
なり方
臨床検査技師になるには、「臨床検査技師国家試験」に合格して免許を取る必要があります。
まずは臨床技士国家試験の概要を見てみましょう。
臨床検査技師国家試験
試験日
例年2月の中旬頃に行われます。
受験資格
1.文科省・都道府県が指定した「臨床検査技師養成課程」のある学校または養成所で3年以上学んだ者
2.大学の獣医学部・薬学部で指定する科目を修めた者
3.大学の医学部・歯学部を卒業した者
臨床検査技師の養成課程がある学校は以下のURL(一般社団法人 長野県臨床検査技師会)を参照してください。https://www.namt.jp/general_info/training_schools/
合格率
例年受験者のうち70~80%が合格
国家資格受験後に就職
臨床検査技士は一般的に大学4年の夏から就職活動をし、内々定を取っておきます。
その後2月の試験を受けて合格したら、正式採用となります。内定をとっても、国家試験に落ちてしまうと内定取消になるケースが多いので、試験の対策はしっかりしておきましょう。
臨床検査技師の年収
令和2年の厚労省賃金構造基本統計調査1によれば、臨床検査技師の平均年収は492.7万円です。日本の給与所得者の平均年収は436万円2であるため、比較的に高い職業だといえます。
臨床検査技師は職場によっては夜勤もあり、その場合は夜勤手当がつきます。多くの収入を得たい場合は夜勤のある職場を選ぶ手もあります。ただし、生活リズムは不安定になりがちなので注意しましょう。
男女比
臨床検査技師の合格者の性別比などは公開されていませんが、大学の臨床検査技術学科の男女比を見ると男性20~30%、女性が70~80%程になっています。
このことからも、臨床検査技師は女性が多い職場であると言えます。
スケジュール例
臨床検査技師の1日は各職場により異なりますが、主に検査業務がメインとなります。
ここでは病院に日勤勤務する臨床検査技師の1日を紹介します。
8:30 出勤
9:00 検査業務
12:00 休憩
13:00 検査開始
17:00 検査結果報告・文書作成
17:30 帰宅
基本的に検査を繰り返すシゴトですので、勤務時間のほとんどを検査に費やしています。検査結果をまとめたり、医師に渡すための、患者に関する文書を作成することもあります。
求人・就職情報・需要
臨床検査技師の令和2年のハローワークの有効求人倍率は1.29になります。これは1人の求職者に対して1.29の職場がある状態を示します。つまり、臨床検査技師の需要はそれほど低くもないが高くもないといえるでしょう。
他の医療系の職種、例えば医師や看護師の有効求人倍率が2近くあることを考えると、医療系の中では人手が足りている職業だといえます。
加えて30年程前は合格率が50%でしたが、現在は80%が合格するようになっています。また、受験者の数も微増し続けています。
さらに検査の機械化や簡易化が進んできていることも考えると、就職先を幅広く見ることも大切です。逆に、がん検査など専門分野を絞ることもキャリアアップに役立つでしょう。
やりがい・魅力
検査によって人の健康に貢献できることが、臨床検査技師のやりがいだといえます。
例えば健康診断やMRI検査に関わる検査技師は、重大な病気の早期発見をすることで、患者の命を支えることができます。
普段の診療でも、医師の診断には臨床検査技師が助けになることが多いです。加えてその後の治療方針や健康づくりの指導にも関わることができます。
検査を通して病気や怪我を治す手助けをし、健康を支えることができることがやりがいだといえます。
つらいこと・大変なこと
正確さと迅速さの両方が求められることが、大変なことだといえます。
例えば輸血検査では、事故にあった人にすぐ輸血が必要、という場合もあります。そういった時も慌てることなく、かつ素早く輸血のための検査を行うことには大変なプレッシャーが伴います。
他の検査でも、検体を落としたりなくしたりすることがあっては問題です。危険な検体の場合は特に問題となります。
そういった緊張感が伴うことが臨床検査技師の大変なことだと言えます。
また、職場によっては定期健診などの繁忙期に残業が多くなることも、大変なことだといえます。
今回の記事はこれで終わりです。最後まで読んでくださった方、ありがとうございました。また次の記事でお会いしましょう。
参考にしたサイト
・キャリアガーデン
https://careergarden.jp/rinshoukensagishi/
・職業情報提供サイト(日本版O-NET)
https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/161
・スタディサプリ進路
https://shingakunet.com/bunnya/w0033/x0439/
・13歳のハローワーク
https://www.13hw.com/jobcontent/01_04_14.html
・日本衛生検査所協会
http://www.jrcla.or.jp/atoz/wexm_01.html
・社団法人 日本臨床衛生検査技師会
https://www.jamt.or.jp/target/general/introduction/
・2021年臨床検査技師国家試験結果 旺文社教育情報センター
http://eic.obunsha.co.jp/eic/pdf/kokushi/2021/0423_2.pdf
・医療施設で働く臨床検査技師数の動向と将来展望
https://www.nitirinkyo.jp/cms/wp-content/uploads/2016/03/magazine0801_02.pdf
- https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2020/index.html
- 令和元年 民間給与実態統計調査を参照https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan2019/pdf/001.pdf