シゴトニンデータベース

医師の国家資格・年収。仕事内容などを解説‐シゴトニンラボ

今回紹介するシゴトは医師のシゴトです。

私は「19番目のカルテ 徳重晃の問診」という漫画を読んだことがあるのですが、未読の方はぜひ読んでほしいです。主人公は「総合医」と呼ばれる幅広く診療にあたる医師なのですが、物語の中には様々な専門医が出てきます。人の健康を左右する医師のシゴトの一端が全体的に知れる、非常に面白いマンガです。

ところで私たちは医師と聞くと、どうしても先程述べたような幅広い「診療」のシゴトをイメージしがちではないでしょうか。ですが医師と言っても、直接病気の治療に当たる医師だけではなく、様々な医師がいます。今回は彼らのシゴトの一端を追ってみましょう。

仕事内容

医師のシゴトは主に2つに分かれます。

「臨床」「研究」です。それぞれ見ていきましょう。

臨床のシゴト

1つ目は「臨床」のシゴトです。臨床とは「病床に臨む」、主に患者の診察と治療のことを指します。私たちが医師と聞いて真っ先にイメージするのがこのシゴトでしょう。

このシゴトは専門科目によって仕事内容が大きく変わりますが、共通する基本的な仕事内容を以下にまとめます。

診察・治療

病院やクリニックなどの医療機関で患者の診察と治療をします。

まずは病院に訪れた患者さんに対して、困っている症状について聞き取りを行います。その後各種の検査を行い、不調の原因を探ります。

診察が終わったら投薬する薬の種類、治療方針を決定します。

病気の予防

病気や怪我を未然に防ぐために患者さんに指導をすることも医師のシゴトです。

健康診断の結果が良好でなかった方や、治療の必要はないが心身に違和感を感じている人に対して指導を行います。

具体的には病気にならないための生活習慣の指導や、怪我をしないための生活の方法、体づくりの指導を行います。

リハビリテーション指導

リハビリテーションとは、病気や怪我によって日常生活を送ることが困難になった患者さんに対して、心身機能の回復を促す治療のことです。

多くの場合医師だけではなく、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士など多くのスタッフと共にシゴトに当たります。

患者さんの状態確認、心身のバランスなどを考慮しながら、本人が日常生活を送れるようにサポートしていきます。

研究のシゴト

2つ目が「研究」のシゴトです。研究のシゴトは、大学にいる教授のような研究者の側面が強くなります。

研究医は医療の発達のために、現時点では治療が困難な病気や怪我の研究を行います。例えば現在では治療方法が確立されていない、アルツハイマー型認知症の治療法や予防法の研究がそれに当たります。

このシゴトも未来の医療や根治不可能な病気に苦しんでいる人のために必要な、重要なシゴトです。その研究医の詳しい仕事内容を見てみましょう。

臨床研究医

臨床研究医は、患者さんを診察しながら研究を行う医師のことを指します。

臨床研究とは、「患者さんに対して新しい治療法や新薬の投与を行い効果の検証をして、実用化に繫げる研究」のことを指します。

先述したアルツハイマー型認知症でいうと、アルツハイマー型認知症になった患者さんと家族に対して同意を取った後、新たな薬を投与したり、有効性が期待される新たな治療法を実践します。その後薬の投与方法や量、治療法の見直しをし、また臨床試験を繰り返してデータを集めていきます。

これを繰り返し行い新たな治療方法や薬の有効性を確かなものにしていくのが臨床研究医のシゴトです。

基礎研究医

基礎研究医は、「今までわからなかった病気のメカニズム、原因を特定するための研究」に取り組みます。

先述したアルツハイマー型認知症でいうと、アルツハイマー型認知症の原因が何にあるかを研究します。表面的な原因だけでなく、原因が遺伝子にあるのか、生活習慣にあるのかなど、深く多面的な原因を探っていくことが基礎研究医のシゴトになります。

臨床研究医とは異なり、基礎研究医のシゴト内で患者さんを直接診察することは滅多にありませんが、医師業と研究業を両方行っている医師などは、患者さんの診察に直接関わることもあります。

基礎研究医のシゴトは、新たな治療法を確立する際にも役立つ重要なシゴトになります。

医師のなり方

医師国家試験

医師になるためには「医師国家試験」を受けて医師免許を取る必要がありますが、この試験は誰でも受験できるわけではなく、受験資格が必要となります。医師国家試験を受けるには、大学の医学部もしくは医科大学で6年間学ぶことが必要となります。

試験日程や内容についてはこちらをご覧ください。医師国家試験について 厚生労働省

医師免許取得後

初期研修期間

医師免許を取得したら卒業後は「初期臨床研修」という期間に入ります。病院によってコースが分かれており、ここである程度専門分野を絞ります。実習ではありますが、給与はもちろん発生し、病院にもよりますが450万~600万円程の年収が見込めます。

また初期研修には採用試験があり、面接や筆記試験を6年次の夏ごろに受ける必要があります。6年次に実施される「医師臨床研修マッチング」に1・2・3希望の病院を登録し、医療機関側も学生を希望順位付きで登録します。

落ちたらたくさんの採用試験を受けなければならないと思う人もいるかもしれませんが、「2014 年度研修医マッチング 学生参加者アンケート1」によると、多くても5つの病院の採用試験を受けるに留まります。多くの学生は1つの病院の採用試験を受け実習先が決定します。

この期間は2年間で、この間に様々な診療科をまわり自身の専門分野を決定していきます。

後期臨床研修

その後「後期臨床研修」と呼ばれる3~5年の研修期間に突入します。これは専門医としての知識と技量を身に着けるための研修です。初期研修時よりも給与は上がり、600~1000万程の給与が見込めます。

初期臨床研修を受けた病院でも別の病院でもこの研修はできますが、どちらにせよ論文・面接・筆記試験などの採用試験を受ける必要があります。

所定の期間、後期臨床研修を行えば、晴れて専門医として認定されます。その後は研究者や医師となって活躍していきます。

医師の年収

「令和2年賃金構造基本統計調査2」によると、医師の平均年収は1440.3万円です。これは全体の平均436万円のおよそ3倍と非常に高くなっています。

研修医の段階ではそれほど高くはない年収ですが、その後大きく年収が上がっていきます。

男女比

日本医師会の出す「女性医師支援に関するアンケート調査2019年3」によると、女性医師の割合は全体の19.1%になります。2014年の調査では15.7%であったことを考えると、女性医師は増加傾向にあるといえるでしょう。

近年では医大が女性受験者の点数を減点していたことが問題となったこともあり、女性医師の地位や待遇も見直されていくことが考えられます。

スケジュール例

医師の働き方や休日は勤め先によって変わります。土日祝日が休みの病院もあればそうでない病院もあります。夜勤がある病院、ない病院があります。それらの違いは病院の規模や大きさによるところが大きいです。

ここでは大型の病院に勤める医師の1日を紹介します。

8:00 出勤

8:30 回診

9:00 外来患者の診察

12:00 休憩

13:00 午後の診察

17:00 患者の検査・診療

18:00 帰宅

出勤した医師はまずカルテのチェックを行い、担当患者の状況に変化がないかを確認します。

その後それぞれの患者を診て回る回診を行い、患者に変わったところがないか直接診ます。

病院の開業時間になったら外来の患者を診察します。

夕方には外来や入院中の患者の検査結果の確認や、診療に当たります。夜勤の日でなければそこだ勤務は終了となります。

求人・就職情報・需要

医師の需要に関しては厚労省が統計を出しています。「令和2年医師需要推計4」の結果を見てみましょう。この資料では様々な想定をして需要と供給の計算をしていますが、早ければ2028年頃に、別のケースでも2033年頃に医師の需要と供給の均衡がとれるという結果を出しています。需要と供給が均衡するというのは、仕事量に対して医師の数が不足していないということ、つまり需要が低くなるということです。

これはあくまで統計であること、新型コロナ感染症の流行による医師の需要向上を考慮に入れていないこと、高齢化に伴って医療の需要が上がっていることを考えると、必ずしもこれほど早い時期に医師の需要が低くなることはないかもしれません。

ですが人口が減っているにも関わらず医師の数が増え続けていることを考えると、将来医師の需要が低くなることは考えられます。

やりがい・魅力

医師のやりがいは、患者さんの心身を治療するという、社会と人への貢献度が高い仕事ができることでしょう。

専門分野ごと、職種ごとに違いはありますが、多くの医師は病気を治すためにシゴトをしています。自身が身につけた知識と技術を使って患者さんの回復を促すことは大きなやりがいを感じることができるでしょう。

また、医師は専門科目だけではなく、地域医療や高齢者医療など、自身がどういった場で活躍したいかや誰に貢献したいかなどによっても求められる知識や技術が変わってきます。そういった知識や技術を追求することに終わりがないのも、医師のやりがいと言えるでしょう。

つらいこと・大変なこと

医師のつらいことは、人の生死に直結しているシゴトであることでしょう。

診察で見落としがあったりミスがあって人の生死を左右してしまうことが医師にはあります。医療ミスではないけれど、もっと自身にできたことがないかと苦しい思いをすることもあるでしょう。

そういった強いプレッシャーと付き合っていかなければならないのが医師のつらいこと言えます。

 

今回の記事はここまでです。最後までお読みくださった方、ありがとうございました。また次回の記事でお会いしましょう。

参考にしたサイト

『キャリアガーデン』

https://careergarden.jp/ishi/

『職業情報提供サイト(日本版O-NET)』

https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Search/Result?keyword=%E5%8C%BB%E5%B8%AB

『スタディサプリ進路』

https://shingakunet.com/bunnya/w0033/x0432/

『01-H30統計の概要』

https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/ishi/18/dl/kekka-1.pdf

『令和2年医師需要推計』

https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000665176.pdf

  1. https://www.researchgate.net/profile/Hiroshi-Nishigori/publication/316967142_CurriculumProgram_Evaluation_in_Medical_Education/links/59350544a6fdcc89e7f39e2f/CurriculumProgram-Evaluation
  2. https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2020/index.html
  3. https://www.med.or.jp/joseiishi/files/1904su/igakkai_kekka.pdf
  4. https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000665176.pdf