今回は幼稚園の先生(幼稚園教諭)について解説していきます。
幼稚園教諭とは
全国にある幼稚園で、3歳~小学校入学前の園児たちの教育を行うのが幼稚園教諭です。文部科学省が作成している「幼稚園教育要領1」に基づいて、自由時間や勉強の時間、運動の時間など園児たちのカリキュラムを定めます。教育カリキュラムは幼稚園ごとに異なり、勉強の時間を大事にする幼稚園もあれば、ほとんどを自由時間に当てる幼稚園もあります。
似たような職業に「保育士」がありますが、幼稚園教諭とは存在意義や働き方など様々な点で異なります。
保育士とは
保育士とは、主に保育園で児童の保育業務を行う職員のことです。保育園以外にも保育士の働く場所はたくさんありますが、保育園の数が多いため、結果として保育園で働く保育士の割合が高くなっています。保育園に通うのは0歳~小学校入学前の児童で、保育士は親の代わりに子どもの生活をサポート(保育)することが一番の目的です。
幼稚園教諭と保育士の違い
混同されやすいのですが、保育園と幼稚園は全くの別物です。いくつかの項目ごとに、異なる点をまとめていきます。
働く場所
幼稚園教諭…幼稚園がほとんどです。公立、私立、国立の幼稚園があります。
保育士…保育園、その他児童福祉施設。例)こども園や託児所、障がい児施設など。
免許
幼稚園…「幼稚園教諭免許状」
保育士…「保育士資格」
どちらも国家資格ですが管轄が異なります。幼稚園教諭免許は文部科学省が、保育士資格は厚生労働省が担当しています。
役割
幼稚園…園児の教育が一番の目的です。レクリエーションや読み聞かせなど、小学校に備えた教育を行います。
保育園…保護者に代わって乳児・幼児を保育して、健全な心身を発達させることが目的です。
教育・保育時間
幼稚園…幼稚園の開園時間はそれぞれ異なりますが、9時から14時までの5時間としているところが多いです。
保育園…7時~19時という広い時間乳児・幼児を受け入れています。そのため保育園は早番、中番、遅番などシフト制のことがほとんどです。
仕事内容
前述のように、幼稚園は保育園と違って「教育」に重きを置く施設です。文部科学省の作成する「幼稚園教育要領」に基づいて遊びや勉強を行います。具体的な幼稚園教諭の仕事は以下のものが基本になります。
朝(園児の登園前)の作業
幼稚園開園は基本的に9時ですが、幼稚園教諭は8時頃に出社します。園児が登園するまでは教室や庭の掃除をしたり、通園バスのある幼稚園では通園バスに乗って生徒の迎えに上がります。
園児登園後
出欠確認などの朝礼を終えたら、遊び2や勉強3、運動4を幼稚園の方針に従って行います。園児に自由に遊ばせる幼稚園も少なくないです。昼ごはんはお弁当の幼稚園が多いですが、給食がある幼稚園もあります。教諭はお昼ご飯を園児と一緒に食べ、食事中の事故が起きないよう注意を払います。閉園時には保護者の方への園児の引き渡しや通園バスに乗ってのお見送りを行います。
閉園後
閉園後は教室の清掃や事務作業を行います。事務作業とは、日報の作成や保護者に配布する手紙5の作成です。翌日のカリキュラムに必要な道具を作ったり、閉園後に職員会議を行うこともあります。
その他の業務
上記で挙げたものが幼稚園教諭の基本的な業務ですが、その他にもたくさんの業務を行っています。例えばイベント(お遊戯会など)の準備や園児の体調管理、園児と一緒に遊ぶことも大事な業務の一つです。また備品の発注や使わなくなった備品の整理や処分など、幼稚園に関わる業務は全て幼稚園教諭の業務になります。
日々園児と触れ合う中で、園児の人間性や感性を育む「教育」を行い、その他に清掃など幼稚園の管理や保護者との連携など幅の広い業務を行うことになります。
幼稚園教諭のなり方
幼稚園教諭になるためには「幼稚園教諭免許状(以下教諭免許)」の取得が絶対条件になります。ただ、試験を受ける必要はありません。そもそも試験は存在しないのです。教諭免許は「教育職員免許法6」に基づき短大・大学などの課程で所定の単位を習得し、卒業後に各都道府県教育委員会に申請することで無条件に教諭免許が授与されます。所定の単位とは幼稚園教諭養成課程のことで、大学によっては扱っていないところもあります。事前の下調べをしておきましょう。こちらをご参照ください。幼稚園教諭を目指せる大学・短期大学一覧
教諭免許には「1種免許状」「2種免許状」「専修免許状」の3種類があります。4年制の大学を卒業すると1種免許状を、短期大学または専門学校を卒業すると2種免許状を、大学院を卒業すると専修免許状を取得できます。通信制大学卒業でも1種と2種免許は取得可能なので、実務経験や資格のない社会人や主婦の方でも、国家試験を受けることなく免許を取得できます。
また、保育士免許を持っている場合は、3年の以上の実務経験(保育施設での勤務)を積み、幼稚園教員資格認定試験に合格することで幼稚園教諭免許状を取得できます。試験内容についてはこちらをご参照ください。文部科学省ホームページ 教員認定資格試験問題
多くの保育士・幼稚園教諭志望者が就職活動を始めるのは卒業年度の秋ごろです。その時点で求人が出ている幼稚園などの施設の求人に応募して、面接を通して園からの採用をもらいます。私立の幼稚園の場合は求人をだしている時点で人材が必要なため、ほとんどの場合採用されるでしょう。倍率が極端に高くなることはまれで、そのため卒業年度の秋ごろに就職活動を始めても就職には困らないケースが多いという現状があります。
しかし、卒業年度の前年から就職のために動いた方が後悔のない就職になる可能性が高いです。幼稚園の見学や4月頃から始まる合同の説明会などに参加することで、自分の働きたいと思えるような幼稚園を見つけやすいからです。長く働くのであればより一層働く場所は大事になります。
また、公立の幼稚園に就職を希望する場合、地方公務員になるため各市町村の公務員試験に合格する必要があります。こちらは非常に高い倍率となっており、公務員試験突破後に公立の幼稚園に採用されるのは希望者の10%程になります。早い時期からの対策と準備が必要になるでしょう。
幼稚園教諭の年収
令和2年の『賃金構造基本統計調査7』によると、幼稚園教諭の平均年収は約400万円程です。平均月収が約25万円、年間のボーナスの平均が約80万円という内訳です。一般企業の平均年収が436万円8であり、比較するとやや低い水準となっています。
初任給は18~20万円ほどで、毎年少しずつですが確実に上がっていき、勤務10年で25万円を超えるのが一般的です。月収の上がり幅は小さい分、年間賞与(ボーナス)の上がり幅が大きいです。初年度は4万円ほどですが、1~4年目では約60万円、勤務15年を超えると90万円を超えます。
私立幼稚園と公立幼稚園では、後者の方が年収は高い傾向にあります。公務員は福利厚生や退職金がしっかりあるという点で収入が安定しています。
男女比
幼稚園教諭の約90%以上は女性です。幼稚園教諭や保育士は女性の職業というイメージがついているように感じますが、一定数男性もいます。近年男性の保育士や幼稚園教諭は増えていますが、まだまだ少数であると言えます。
スケジュール例
07:45 出社
08:00 開園前の作業
09:00 園児のお迎え
09:10 朝礼など
12:00 昼食
13:00 園児の自由時間
14:00 園児のお見送り&その他作業
16:00 退社
幼稚園教諭の朝は早いです。園児が登校するのが9時なので、それまでに出社して掃除やその日の活動のための準備や確認、日によっては職員会議を行います。園児が登校したら教室に集まって出欠の確認などの朝礼を行います。その後は自由時間や簡単な勉強の時間など、日によって異なるカリキュラムを実施します。園児が昼食を取るのと同じタイミングで教諭もご飯を食べます。このとき、園児たちから目を離さず、安全に配慮する必要があります。
午後のカリキュラムを終えて園児を見送った後は教室の片付けや翌日の準備、保護者へ配るプリントの作成などを行い、定時に退社します。
お遊戯会などのイベントがある時期や3月4月などの忙しい時期以外は基本的に残業はほとんどないです。
やりがい・魅力
・こどもの笑顔や日々の成長を近くで見ることができること
・園児や保護者から感謝してもらった時の喜び
・イベントが成功した時の達成感
などが挙げられます。
大変なこと・つらいこと
・たくさんの園児の対応を少人数の教諭で行うこと
・クラスのことに加えて学年の行事に関することや備品の管理、清掃など仕事量が多いこと
・仕事量が多い割に給料がそこまで高くないこと
などが挙げられます。
参考にしたサイト
『キャリアガーデン』
https://careergarden.jp/hoikushi/
『職業情報提供サイト(日本版O-NET)』
https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/131
『スタディサプリ進路』
https://shingakunet.com/bunnya/w0031/x0401/sigotonaiyo/
『13歳のハローワーク』
https://www.13hw.com/jobcontent/05_05_12.html
- https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/youryou/you/index.htm
- お遊戯や工作など
- ひらがなや足し算など
- 庭でのかけっこや教室でのレクリエーションなど
- 幼稚園に関するお知らせや新聞など
- https://www.mext.go.jp/content/1388544_9_1.pdf
- https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2020/index.html
- 令和元年 民間給与実態統計調査を参照https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan2019/pdf/001.pdf