今回の記事は電車運転士のシゴトの紹介です。
私は恥ずかしながら、最近まで電車はほぼ自動運転で走っていると思っていましたが、違うようです。ほとんどの路線では電車の全面自動化はしておらず、一部機械のサポートがあっても、電車運転士が運転を担っています。
では電車運転士はどういったシゴトをし、どのようになるのでしょうか。その詳しいシゴトを見てみましょう。
仕事内容
電車運転士の最も重要な役割は「時刻通りに電車を発着させること」です。そのために電車運転士は主に3つの業務を行います。それぞれの業務内容について見てみましょう。
発車準備
運転前に所属している区でアルコール検査、共有事項の確認をし、乗務に必要なスケジュール表などを受け取ります。
車両を車庫から出すときには、車両点検をして安全確認をしてから乗務に就きます。
別の運転士から車両を引き継ぐ際には、ダイヤの遅れなど引継ぎ事項を確認してから運転に入ります。
電車の運転
出発の時刻に発車し、信号、対向電車、踏切などに注意しながら運転します。
時に別の運転士と交代しながら運転をくり返し、勤務後には運転の報告をします。鉄道は早朝から深夜まで走っているため、シフトによっては勤務が長引くこともあります。
また、近年ではATOと呼ばれる自動繰列車運転装置を採用している路線も多くあります。といっても全てが自動、つまり無人運転になっている電車はほとんどなく、運転士の支援装置としての役割を果たしていることが多いです。
トラブルの対応
万が一事故やトラブルが起きた際には、電車運転士も対応を求められることがあります。
電車運転士は車掌と協力して乗客の案内や誘導をし、事故の処理も行います。また、こうした不測の事態に対応するために研修や訓練を行うこともあります。
なり方
電車運転士になるには、まずは鉄道会社の社員になることが必要です。入社した後は、まず駅員のシゴトをすることになります。
その後電車運転士になりたい人は、「動力車操縦者試験」という国家試験を受験して合格する必要があります。また、この国家試験を受けるためにはまず社内の選抜試験に合格し、「動力車操縦者養成所」に入社する必要があります。
では、この2つのステップについて詳しく見てみましょう。
鉄道会社の社員になる
電車運転士になるためには、鉄道会社の採用試験を受験して、鉄道会社の社員となることが必要です。
入社試験は、筆記試験に「クレペリン検査」と呼ばれる、計算問題による心理テスト、色覚検査や視力検査があります。それを除けば一般的な企業の採用面接と同様の形式の鉄道会社が多いです。
また注意しておくことは、電車運転士になりたい場合、総合職ではなくエリア職や現場職と言われる採用枠で受験する必要があることです。
入社後は、まずは駅員や車掌のシゴトをすることになります。駅員は切符の販売や運賃の精算、窓口業務などを行います。車掌は扉の開閉、アナウンス、電車内の点検などで電車回りの業務に携わります。車掌と駅員については別記事で解説しているため、詳しくはそちらをご覧ください。
これらの業務をする中で社内の試験、勤務態度、勤続年数などを考慮して電車運転士の候補生が選抜されます。
動力車操縦者養成所に入所
鉄道会社は国土交通省指定の「動力車操縦者養成所」を備えている場合が多く、そこで訓練を行います。免許には細かい区分がありますが、ほとんどの場合「電車・電気機関車運転免許」の取得を目指すことになります。
養成所で行われるのは「学科講習」と「技能講習」、さらに「学科試験」と「技能試験」が行われます。学科講習は自動車のように運転する上での法律、標識、車体の構造、運転理論などを学びます。そして技能講習に入る前に、学科試験を行います。
その後の技能講習では、数か月間教員の指導の下車両を運転して操作方法を学びます。そして技能試験に合格すれば、晴れて電車運転士として働くことができます。
年収
『令和2年度賃金構造基本統計調査1』によると、電車運転士の平均年収は653.3万円となっています。これは全国の労働者の平均年収436万円2より約220万円高い数字になっています。
また、『令和元年度賃金構造基本統計調査』で、企業人数規模別の月収を見てみましょう。
・1000人以上…約41万円
・100人以上1000人未満…約29万円
・10人以上100人未満…約28.5万円
以上を見ると、規模が大きい鉄道会社ほど月収が高くなっています。
100人以上1000人未満と10人以上100人未満には、月収では大きな差は見られません。しかしここで平均賞与も比較してみましょう。
・1000人以上…約151万円
・100人以上1000人未満…約85万円
・10人以上100人未満…約63万円
人数の多い会社の方が賞与が多い結果となりました。
男女比
『令和元年度賃金構造基本統計調査3』によると、電車運転士は男性31,530人、女性2,000人となっています。これは比率にすると男性94%、女性6%と、圧倒的に男性が多いシゴトとなっています。
ですが、平成22年度(2010年)に女性運転士が240人しかいなかったことを考えると、その数はかなり増えたといえます。女性運転士が少なかった理由として、1999年まで労働基準法で女性の深夜勤務が禁じられていたことが考えられます。
電車運転士には特殊な事情がない限り深夜勤務が必ずあります。そのため、1999年までは女性は運転士になることができませんでした。近年は状況が変わり、JR東日本では1987年には0.8%しかいなかった女性社員の数も2020年には約15%になっており、鉄道会社自体に女性の進出が広がっています。
求人・就職情報・需要
電車運転士は先ほど述べた様に、鉄道会社の社員になってから資格を取得してなるというのが王道のルートです。そのため求人や有効求人倍率などは不透明な所が多いです。
需要に関していうと、電車運転士の人数はいまだに増加し続けており、まだまだ需要はあるといえます。自動運転で無人になるから将来性はない、という人もいますが、遠い将来の話になるでしょう。
理由は、未だに多くの駅で自動ホームドアが設置されていない理由と同様で、無人運転には電車運転士を雇うより途方もないコストがかかるためです。
また、運転には様々な偶然の要因が絡んできます。天候、事件、事故、路面状況、周辺状況などです。現在無人運転が導入されている路線の多くは、高架線路でホームドアも設置されている、運転における偶然の要因を排除した路線です。
全ての路線で自動化の条件がそろうにはまだまだ時間がかかるため、電車運転士の需要は今後もあるといえます。
やりがい・魅力
電車運転士の魅力は、電車を実際に自身の手で操縦し、社会の幅広い人の役に立てることです。
特に電車が小さい頃から好きであったという人や、小さい頃から電車運転士や車掌に憧れていた、という人は強い充実感を感じることができるでしょう。
また、電車運転士は電車という公共設備を運営するシゴトです。電車は老若男女様々な人が利用する乗り物です。飛行機に乗ったことはなくても、電車にはほとんどの人が乗ったことがあるはずです。電車運転士はそういった多くの人の役に立つことができる職業でもあります。
つらいこと・大変なこと
電車運転士のつらいことは、社会的に役割が大きい仕事であるがゆえに責任が重いところです。
日本では電車は時間通りに運営されることが通常であり、2~3分の遅れでも乗客に通知しお詫びをするようになっています。それは社会的役割の大きさの表れでもあるのですが、電車運転士として働く際には重圧となることもあります。
また、電車は公共設備であり夜中まで走っていることが多く、夜勤など時間的・体力的にも厳しいことがあります。そういった中でも事故や突発的な状況に対応しなければならないことも、電車運転士のつらいことといえるでしょう。
今回の記事はこれで終わりです。最後まで読んでくださった方、ありがとうございました。また次回の記事でお会いしましょう。
参考にしたサイト
『キャリアガーデン』
https://careergarden.jp/denshauntenshi/
『職業情報提供サイト(日本版O-NET)』
https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/192
『スタディサプリ進路』
https://shingakunet.com/bunnya/w0009/x0123/
『令和元年賃金構造基本統計調査』
https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003084610
- https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2020/index.html
- 令和元年 民間給与実態統計調査を参照https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan2019/pdf/001.pdf
- https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2019/index.html