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国際公務員の年収や仕事内容を解説‐シゴトニンラボ

今回の記事では、国際公務員のシゴトについて紹介します。

国際公務員は外交官と混同されることがありますが、大きく異なるシゴトです。外交官は自国の利益を念頭に置いて国際社会への貢献を考えますが、国際公務員は特定の国に所属せずに、国際社会それ自体へ貢献するシゴトです。UNICEFやWHOなどを耳にしたことがある人もいるのではないでしょうか。そういった国際機関に所属してシゴトをするのが国際公務員です。

仕事内容

国際公務員のシゴト

国際公務員は、国際社会の平和維持、システム維持、人権保護など、国際的な問題の解決、国際的な目標を果たすためにシゴトをします。

国際公務員は国際機関で働いています。国際機関は国際的な利益のためにある組織です。国際連合がその代表的な組織です。その他にもUNICEF、UNESCO、WHOなどがあります。それらの多くの機関で、国際公務員のシゴトは専門職と一般職に分かれています。専門職はスペシャリストで、それぞれの分野の専門知識や技術を持っています。一般職はジェネラリストで、主に専門職のサポート、事務を行うことがシゴトです。

ここでは、2つの職種の違い、さらに4つの国際機関が取り組んでいることを大まかに見てみましょう。

専門職のシゴト

専門職の国際公務員は、専門性が高い知識や技術を持っています。

特に所属する国際機関が取り組む問題に対する知識は必須といえます。それは例えば途上国の開発、世界の環境改善、難民支援、世界経済の安定など、所属する国際機関によって大きく変わります。その専門的な知識に加えて、専門職には法律・医療・会計・経済・ITなどの、どういった切り口から問題に取り組むかという専門性も求められます。また、英語やヨーロッパの言語を習得することも必須要件です。

専門職の職員がシゴトをする場所は多岐にわたります。基本的には自国外で働く場合が多く、所属する組織にもよりますが、職員は数年単位で働く国が変わっていきます。

一般職のシゴト

一般職の国際公務員は、専門職のサポート、事務を行うシゴトです。

まず一般職に多いのは、現地採用の職員です。

国際機関は、先進国や支援国の都市に支部を持っています。例えばUNHCR(国連高等難民弁務官事務所)も東京都に支部が存在します。ここで一般職の職員は駐在・常駐している専門職の秘書的な役割に加え、事務、広報、支部運営に従事します。中には事務以外にも、警備や運転手などの一般職もいます。一般職の職員は基本的に採用された土地で働きますが、筆記試験は英語、ヨーロッパ言語で行われるため、ある程度の語学力も必要とされます。

加えて、本部で働く一般職もいます。

国際機関の本部はヨーロッパ、中立国であるスイスとオーストリアに数多く設置されています。この2つに加えて、アメリカに本部を設置している機関も多いです。

国際機関ごとの概要

国際公務員とひとくちに言っても、所属する国際機関によって仕事の内容、必要とされる知識、勤務地も大きく変わります。

国際公務員が働く場となる国際機関は、国連をトップに、何らかの形で国連と関わりを持っています。この国連を頭にした構成を「国連システム」と呼びます。この国連システムの組織に所属する職員を「国際公務員」と呼び、『国際連合広報センター 国連で働く』によると193か国で合計4万4千人の職員がいます。

彼ら国際公務員は、2015年に採択された「SDGs(持続可能な開発目標)」に深く関わるシゴトをしています。SDGsは17の目標を設定していて、それは貧困・医療福祉・教育・都市開発・労働・平和・環境など多岐にわたります。近年採択された国際的な目標ではありますが、国際公務員はこれらの目標に半世紀以上前から取り組んでいます。

国際連合

国際連合、通称国連は、国連システムの中核をなす機関です。

国連は総会・安全保障理事会・経済社会理事会・事務局の4つ、さらに国際司法裁判所・信託統治理事会を合わせて計6つの機関があり、国連システムに組み込まれる組織は前者の4つと何らかの形で関わりを持っています。

国連は国際的な平和と安全維持、国家間の友好関係の構築、社会発展、生活水準の向上および人権の推進を任務とした組織です。具体的には環境保護、難民保護、災害支援、医療提供、経済の安定、紛争の調停などに取り組んでいます。

国連総会の補助機関

補助機関は、国連総会の下部組織を指します。

補助機関には総会と深く関わる委員会に加えて、計画と基金、研究所が含まれています。

例えば補助機関には下記のものがあります。

・人権委員会や国際法委員会

・UNDP(国連開発計画)やUNICEF(国連児童基金)

・UNU(国連大学)

・UNHCR(国連高等難民弁務官事務所)

専門機関(国連関連政府間機関)

専門機関は、連携協定によって国連と結びついている組織で、独立した国際組織です。

経済・社会における国際的な責任を担い活動しています。独立しているとはいえ、専門機関は国連システム事務局調整委員会のメンバーでもあり、義務ではありませんが国連の総会、経済社会理事会に活動報告もします。

例えば専門機関には下記のものがあります。

・WHO(世界保健機関)

・WBG(世界銀行グループ)

・UNESCO(国連教育科学文化機関)

補助期間がどちらかという途上国や難民といった国際的な課題解決を中心に活動をしているのに対し、専門機関は課題解決を考えながらも、それぞれの分野に特化した幅広い活動をしています。

関連機関

関連機関はそれぞれの専門領域で活動しており、独自の立法機関と予算を持っています。

専門機関との違いは、国連と関係してはいるものの、専門機関としての連携協定は結んでいないところにあります。とはいっても関連機関の中には総会への報告義務が課されている機関もあり、必ずしも専門機関より独自性が強いというわけではありません。

例えば関連機関には以下のものがあります。

・IAEA(国際原子力機関)

・WTO(世界貿易機関)

・OPCW(化学兵器禁止機関)

・ICC(国際刑事裁判所)

なり方

国際公務員になるには

国際公務員、特に専門職の国際公務員になるには、主に3つの方法があります。

1つめは「空席公募」に応募すること、2つめはJPO(ジュニア・プロフェッショナル・オフィサー)派遣制度に応募すること、3つめは国連YPP(ヤング・プロフェッショナル・プログラム)に応募することです。

これらの試験に通過するために必要になることが、語学力、専門領域に関する深い知識、実務の経験です。

ここでは国際公務員になるための方法について詳しく見てみましょう。

専門領域に関して学校で学ぶ

国際公務員として働くためには、まず国際機関ごとの専門領域に関する高い知識を身に着ける必要があります。それは例えば教育、医療、福祉、農業、工業などです。

さらに学士だけではなく、修士、つまり大学院に進学することが望ましいです。というのも、学士以上を応募要件としているYPPは別ですが、JPO派遣制度では修士号以上が応募要件とされているためです。

また、国際公務員になるためには専門領域の知識に加えて国連公用語である英語かフランス語が堪能であることも応募条件です。専門分野に加えて語学の勉強の時間も考えると、大学院に進学したほうが良いでしょう。

空席公募に応募する

空席公募とは、国際組織のあるポストに欠員が生じた場合に国際的に公募する方法です。

募集は各国際機関のホームページに個別に掲載されるのに加えて、『United Nations careers』という英語とフランス語のサイトで公開されています。ここではProfessionalレベル(現場の専門職)とDirectorレベル(管理業に就く専門職)に加えて、一般職やインターンの募集要項も出ています。

募集要項には応募要件である実務経験、習得言語、学歴、勤務地などの基本情報が記されています。それに加えて求める人物の能力、行動特性、職務範囲などについて事細かに規定されています。自身が所属したい組織がどのような人物を求めているのか参考になります。

空席公募の応募条件は組織や応募する職のレベルによって異なりますが、修士号以上、もしくは学士号に実務経験や資格を組み合わせて応募条件としているところが多いです。

JPO派遣制度に応募する

JPO(ジュニア・プロフェッショナル・オフィサー)派遣制度は、各国政府が費用を負担することを条件に国際機関が若手の人材(35歳以下)を受け入れる制度です。

日本では外務省を中心に複数の省庁が国際機関に派遣を実施しています。派遣期間は2年間で、この2年で正規職員と同等の経験を得ることができます。

そして派遣期間終了後には正規職員として働くことになります。正規職員の待遇は確約されているわけではありませんが、国連広報センター所長の根本かおる氏によると、おおむね7割が正規職員として採用されているということです。

JPO制度の応募条件は以下の通りです。

①35歳以下であること

②関連する分野での2年以上の実務経験を有すること

③関連する分野の修士号を取得していること

④英語で職務が可能であること

⑤将来的に国際機関で働けること

⑥日本国籍を有すること

このように、JPO試験の受験資格は厳しいものになっています。そのため応募者数も少なく、2020年度では325名のみの応募者でした。また、過去3年間の平均合格者数は55名で、約17%となっています。

JPO制度の派遣先の国際機関については『外務省 国際機関人事センター JPOの派遣先国際機関』https://www.mofa-irc.go.jp/jpo/hakensaki.htmlを参照してください。

国連YPPに応募する

YPP(ヤング・プロフェッショナル・プログラム)は、国連が若手の職員を採用するために行うプログラムです。

この制度もJPOと同じく、2年間の勤務の後、勤務成績が優秀であれば引き続き採用となります。YPP制度は国連職員が少ない国が対象となっていて、日本は毎年制度の対象となっています。

YPP制度の応募条件は以下の通りです。

①参加国の国籍を有していること

②関連する分野の学士以上の学歴を有していること

③試験年度において32歳以下であること

④英語またはフランス語に堪能であること

YPP制度は「学士以上」で「実務経験無し」で応募できるため応募者が多く、国際連合広報センターの発表では毎年5万人以上の応募があります。JPOは毎年300〜400人ほどなので、はるかに多い数字と言えます。

年収

国際公務員の給与形態

国際公務員の給与は、国際機関ごとに定められていますが、金融関係以外の多くの国連機関は共通の給与水準となっています。これは国際機関の多くが国連共通制度に加入しているためです。そのため、それぞれの国際機関の給与はほぼ同等となっています。ただしこれは専門職に限った話で、一般職の給与についてははっきりと定められてはいません。専門職の給与は国際公務員専門職の給与は①基本給②地域調整給③9種の手当で構成されています。

国際公務員の基本給

基本給は、P(professor)レベル、D(Director)レベル、さらに経験年数や功績を加味してきまるステップⅠ〜XⅢに応じて決まっています。2022年1月の俸給表【ICSC(国際人事委員会) Salary Scales】で、レベルごとの基本給を確認してみましょう。

・P-2レベル ステップ1(初任クラス)…60,203US$(約692万円)

・P-4レベル ステップ6(標準クラス)…106,180US$(約1,221万円)

・D-1レベル ステップ7(幹部クラス)…151,792US$(約1,746万円)

※1$=115円で計算(2022年1月のレート)

※額面上の年収で計算

国際公務員の年収(基本給+地域調整給+手当)

この基本給に地域調整給と手当を足したものが国際公務員の給与となります。地域調整給は地域によって決定された額が支給されます。手当は国や地域ごと、子どもの人数や状況、赴任年数によって個人ごとに細かく分かれています。

ではここで、国際連合日本政府代表部人事センターNY支部情報が発表しているデータを使って、基本給に調整給や手当を足した年収を見てみましょう。なお、勤務地はニューヨークの職員のデータとなります。

・P-2レベル ステップ1(単身者)…   …76,449US$(約879万円)

・P-2レベル ステップ1(配偶者・子2人)…86,8944US$(約999万円)

・P-4レベル ステップ6(単身者)…   …130,107US$(約1,496万円)

・P-4レベル ステップ6(配偶者・子2人)…143,772US$(約1,653万円)

・D-1レベル ステップ7(単身者)    …179,554US$(約2,065万円)

・D-1レベル ステップ7(配偶者・子2人)…196,185US$(約2,256万円)

※1$=115円で計算(2022年1月のレート)

※額面上の年収で計算

※2,017年のデータを使用

このデータと先ほどの基本給年収を照らし合わせると、肩書によって200〜500万円程度の地域調整給と手当が支給されると考えられます。また単身者と既婚者子ありを比較すると100〜200万円程度年収に差があることがわかります。

男女比

『国際連合日本政府代表部人事センターNY支部情報』によると、2015年末時点で国際機関の専門職の職員数は国際専門職33,810人、現地採用専門職11,399名の合計45,209人となっています。

『国際連合広報センター』によると、このうち男性は67%女性は33%となっており、女性が少なくなっています。また、「下位のランクほど女性の割合が高く、また、フィールドよりも本部の方が女性が多く働いています。」とも書いてあります。このような状況も踏まえて、国連は女性の応募を強く推奨しています

日本人は、男性職員より女性職員の方が多くなっています。『外務省 国連関係機関の日本人職員数』によると、日本人は918名の専門職のうち573名と62%を女性が占めています。

求人・就職情報・需要

国際公務員の需要は、今後より高まっていくと考えられています。

現在、貧困や差別、南北格差、難民問題、環境問題、経済停滞、先進国の少子高齢化問題などの諸問題が、世界規模で顕在化してきています。こういった中で国際的な諸問題に対して活動してきた国際公務員への期待も高まっています。

国連関係機関の職員数を見ても、日本人の職員数は増え続けています。『外務省 国連関係機関の日本人職員数』によると、専門職以上の日本人職員数は2001年には485名であったのが、2021年には918名と、2倍近くまで増えています。このことからも、今後も国際公務員は必要とされる職業といえるでしょう。

やりがい・魅力

国際公務員のシゴトの魅力は、世界規模で専門性の高いシゴトができることです。

国際公務員は平和と安全維持、国家間の友好関係の構築、社会発展、生活水準の向上および人権の推進を任務としています。そういった目標を持ちながら、世界規模で問題の解決を模索したり、様々な国の人と交流することができることは国際公務員ならではといえます。

また、国際公務員は高い専門性が必要とされる仕事をします。その中で自身の知識や技術を世界の場で発揮できることも、国際公務員のやりがいとなります。

つらいこと・大変なこと

国際公務員のつらいことは、勤務地がたびたび変わることです。

国際公務員は、働く国や地域が変わることが多いです。特に現場職であるPレベルのうちは、現場に派遣されることが多くなります。様々な国に行くのが好き、という人も、家族がいると大変なことも多いです。

単身赴任でも家族ごと引っ越す場合も十分な手当は出ますが、単身赴任であれば家族は国に残していくことになります。もちろん休暇もあり、任期が終われば戻ることになりますが、寂しさを感じることもあるでしょう。

今回の記事はこれで終わりです。最後まで読んでくださった方、ありがとうございました。また次回の記事でお会いしましょう。

参考にしたサイト

『キャリアガーデン』

https://careergarden.jp/kokusaikoumuin/

『職業情報提供サイト(日本版O-NET)』

https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/151

『スタディサプリ進路』

https://shingakunet.com/bunnya/w0001/x0029/

『外務省 国際機関人事センター』

https://www.mofa-irc.go.jp/

『国際連合広報センター』

https://www.unic.or.jp/

『国際連合日本政府代表部 人事センターNY支部情報』

https://www.un.emb-japan.go.jp/jp/hr/index.html

『外務省 国連関係機関における日本人職員数』

https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/press4_009124.html

『UNHCR日本』

https://www.unhcr.org/jp/

『United Nations careers』

https://careers.un.org/lbw/home.aspx?viewtype=SJ&vacancy=All

『ICSC(国際人事委員会) Salary Scales』

https://icsc.un.org/Home/DataSalaryScales