今回は国家公務員についてまとめていきたいと思います。
公務員とは?
公務員は国や地方自治体、国際機関といった国民の生活に直接深く関わるシゴトです。憲法においては国民全体の奉仕者と定義されている
「俺、将来は公務員って決めてるんだよね」
「へ~、なんで」
「安定してるから!」
大学の一年、将来について話すと多くの学生から公務員になりたいという声を多く聞いたことを思い出す。実際、公務員は「安定」している仕事と言えるだろう。年を重ねれば上がっていく給与、充実した休暇、国家や自治体から雇用されていることから解雇がほぼありえない。
また地方においては公務員は社会的な地位も収入も高いことが多く人気なシゴトと言える。
公務員とは一体なんなのか。公務員は国や地方自治体、国際機関といった国民の生活に直接深く関わるシゴトではある。国家公務員と地方公務員の2つに大別され、その職種は治安維持、インフラ整備、教職などなど多岐に渡る。あまりに多くの職種があるため、この調査中に私が頭を抱えたのは内緒にしておこう。*1
*1この職種も国家公務員なのか!と私が驚いた代表例に皇宮護衛官がある。その名の通り皇室の護衛を担当する警察官である。警察庁の一部門である皇宮警察本部に所属し、2部10課からなる護衛のエキスパートの集まりだ。警察庁の採用ではなく、皇宮護衛官として別区分で採用されるのもし面白い。
国家公務員と地方公務員の違い
国家公務員と地方公務員は採用先、平均的な給与、業務の範囲、試験の難易度などをみても地方公務員と国家公務員には差があります。
前者は主に立法、司法、行政といった国家=内閣及び内閣に付随する組織に採用されます。例えば官僚や、裁判所に所属する裁判官、自衛官などが代表的です。
後者はその地域に密着した行政サービスを行う地方自治体(県庁、市区町村など)に採用されます。
地方公務員の平均給与は令和3年次で、359,895円に対し、国家公務員は407,153円と約10%国家公務員の方が高い給与水準です。
国家公務員の仕事内容
国家公務員は「一般職」と「特別職」に分けられます。その比率は約1:1です。*2
国家一般職は「主として事務処理等の定型的な事務に従事する職員」と定義され、政策の実行を行います。主な職場は中央省庁と地方機関に分けられ、大きな異動はありません。中央省庁とは国の行政機関である1府11省1庁*4のことであり、内閣府や財務省、国土交通省などがあります。仕事内容は府省庁それぞれ大きく異なります。例えば金融庁であれば金融制度の企画立案、検査監督であり、地方運輸局であれば民間の輸送業の資格認定・免許発行、指導監督などを行います。
特別職とは正確には「特別職公務員」であり、「国家公務員法に定める成績主義の原則などに適合するべきではない」と判断される国家公務員のことを指します。要するに一般職とはその扱いがまったく異なるということです。特別職の具体的な役職として<大臣>、<裁判所職員・裁判所事務官>や<国立国会図書館一般職>などが挙げられます。そして最も多くの割合を占めるのが自衛官です。*3
一般職→中央省庁(金融庁、国土交通省など)
特別職→大臣や裁判所職員など
*2https://www.jinji.go.jp/saiyo/syokai/syokai.html より令和3年度末予定人数
*3自衛官は国家公務員全体の約45%を占める。特別職の大半は自衛官であるのだ。
*4中央官庁は下記の図式をきっちり頭に叩き込んでおくと、日本社会の仕組みが結構わかりやすくなる。https://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/jinjikyoku/files/satei_01_05_3.pdf
各省庁の役割
そもそも省庁とは?
省庁の違いは
→国民のことを一番に考え、実際に政治を行う最高機関である「内閣」をサポートする機関です。1府11省1庁はそれぞれが専門的であり、ある分野の業務を分担して行っています。詳しくは内閣官房ホームページをご覧ください1。
では、それぞれの省庁について簡単にまとめます。
内閣府
内閣府は何をしているのか、どういった組織なのかイメージの付きにくい機関だと思います。各省庁より上の立場にあり、重要な政策の企画立案や各省庁間の調整などを行っています。調整とは、例えば複数の省庁に関連した政策を行う場合に、相反する利害を調整したり、どの法律で対応するのかを決めるなど、スムーズに政策を実施するための調整役を担います。
具体的な業務として、子供の貧困対策、男女共同参画社会の実現、経済財政白書の作成、世論調査や国民生活に関わる各種統計などがあります。
総務省
総務省は行政運営の改善、地方行財政、選挙、消防防災、情報通信、郵政行政など、国家の基本的な仕組みに関わる制度などを管轄する、もっとも業務の幅が広い省です。
国民生活の基盤に関わる業務を管理しています。
私たちの生活に最も深く係わっている省と言えます。
法務省
法務省は私たちが安全・安心に暮らすためのシゴトをしています。
民法・刑法、民事行政(国籍、戸籍、登記、供託)、民事制度の企画・立案、検察、受刑者の矯正、更生保護、人権擁護、出入国管などを管轄します。
国民が安全に暮らせるようなルールを作り、刑務所などの更生施設にも関与します。死刑の執行には法務大臣の許可が必要です。
財務省
財務省は、主に国のお金を扱っています。国民の生活を安定させ、より良くするために必要なお金を集めてその使い道を計画したり、税金の仕組みについて国会で議論するための案を作成したりしています。その他、国が持っている土地や建物などを管理する仕事や、国同士でスムーズに貿易が行われるようにルールを決めることもしています。国内に麻薬や拳銃が入らないよう努めるのも財務省のシゴトです。
また財務省は毎年各省庁の予算の配分をチェックするシゴトをしており、他の省庁に対して強い権限を持っています。
厚生労働省
厚生労働省は、「国民生活の保障・向上」と「経済の発展」を目指す省です。社会福祉、社会保障、公衆衛生の向上・増進と、働く環境の整備、職業の安定・人材の育成を推進しています。covid-19の対応に従事していたのはこの厚生労働省です。 また、少子高齢化、男女共同参画、経済構造の変化などに対応し、社会保障政策と労働政策を一体的に推進します。
身近なところでは高齢者や子育て支援としての給付、コロナワクチンの管理、会場整備などを行っています。
外務省
日本国民が豊かで安全な暮らしができるよう日本の国益を守るシゴトをしています。核兵器やテロ、感染症など世界規模の問題から、世界の経済についても様々な取り組みを行っています。アジア大洋州局や北米局など、世界の各地域との外交関係を築くための局が設置されています。また国際協力局では環境問題や資源の枯渇といった地球規模の課題に対して、各国と協力して取り組んでいます。また、各国に置かれている日本大使館や領事館の職員も外務省の職員です。
農林水産省
農林水産省は、食の安全確保と安定供給、農業経営の安定、農業構造の強化、農山漁村地域の活性化など、一次産業に関連して幅広い取組を行っています。 具体的には食料の安定供給、国土の開発、食品の安全確保、農林水産植物の品種登録などです。食卓に関する業務が基本であり、我々の生活に最も近い省といえるかもしれません。
文部科学省
主に教育、科学技術、スポーツ、文化を担当する省です。文部科学省のなかには文化庁とスポーツ庁という組織があり、各都道府県の教育機関や教育委員会に助言を行っています。
国民が心も体も健康に暮らしていけるようにシゴトに取り組みます。
身近なところでは、小中学校の施設整備や教科書の認定などに関わっています。
経済産業省
経済産業省は経済の発展とエネルギーの確保を専門とする省庁です。
電気、ガス、石油などのエネルギーの管理(資源エネルギー庁)、経済に関係する中小企業庁、特許庁などが含まれています。
コロナウィルスの流行によって多くの中小企業がダメージを受けましたが、企業に対する持続化給付金や家賃支援給付金の給付、テレワークの推進なども経済産業省の管轄です。
国土交通省
国土交通省は、国土の総合的かつ体系的な利用、開発および保全、そのための社会資本の整合的な整備、交通政策の推進、気象業務の発展並びに海上の安全および治安の確保などを担う省です。空路、道路、海路、土地の整備・管理を専門とします。
中央省庁再編で「運輸省、建設省、国土省、北海道開発庁」が統合されて生まれた省庁で、
観光庁、気象庁、海上保安庁も含まれています。
国土交通省と観光庁は接点がないように見えるものの、運輸省の中にあった観光部が再編されたものが観光庁になります。
防衛省
防衛省は自衛官+その他事務官、教官、書記官等の事務員で更生されています。
防衛省=自衛官というイメージを持っている方も多いかもしれませんが、様々な構成員がいます。仕事内容としては防衛省は日本の安全維持、陸上自衛隊・海上自衛隊・航空自衛隊の運用、各国との防衛協力などです。国連PKO(平和維持活動)にも積極的に参加しています。
環境省
環境省は公害の防止廃棄物の管理と資源の再利用、公園の整備、自然保護など日本の環境を守る省です。仕事の内容は、政策や広報の企画立案、実施の ほか、審議会や国会との連絡調整、財産の管理や予算 の執行、庶務・秘書・会計など多岐に渡ります。
復興庁
復興庁は東日本大震災からいち早く復興させるため内閣につくられた組織です。復興に関する国の施策の企画、調整及び実施および地方公共団体への一元的な窓口と支援等を担います。
2012年に組織され、2021年3月までを期限としていましたが、現在は2031年3月までに期限が伸びています。「現場主義」を徹底的に貫き、住まいの再建や農業の復興に日々取り組んでいます。
なり方
国家公務員試験を受けることからスタートします。試験には「総合職試験」、「一般職試験」、「専門職試験」があり、それぞれに年齢などの受験条件があります。またそれぞれ試験内容が異なっており、総合職試験は1次2次と2段階の試験があります。
総合職試験と一般職試験は合格すると「採用候補者名簿(3年間有効)」に名前が載り、そこから各省庁が採用面接を行い内定者を決定します。この面接を「官庁訪問」といい、どこの省庁に採用され就職するのかは官庁訪問に合格して初めて決まります。官庁訪問に合格しなければ、たとえ筆記試験に合格しても国家公務員になれないということです。
一方専門職試験は官庁を限定している試験のことで、総合職試験、一般職試験と違って試験に合格すれば確実に希望の官庁で採用されます。国家専門職には「皇宮護衛官」、「財務専門官」や「外務省専門職員」などがあります。
国家公務員になるためには特別な資格や学歴は必要ありません。高卒者も受験できます。ただ試験の難易度から、実際に受けるのは難関大学の学生、院生がほとんどという現状です。
(高校)大学卒業 (高校)大学卒業
↓ ↓
総合(一般)職試験 専門職試験
↓ ↓
官庁訪問 そのままその官庁に採用
↓
採用
総合職試験と一般職試験の試験レベルに大佐はありませんが、総合職のほうが思考力が求められる内容になっています。総合職試験に合格して採用されたものは次世代の中央省庁の幹部候補で、官僚と呼ばれることがあります。官僚に明確な定義はありません。国家公務員の中のエリートというイメージを持たれています。
国家公務員の年収
令和元年に行われた国税庁の「民間給与実態統計調査」によると、給与所得者の平均年収は436万円です。給与所得者とは、労働によって給料を得ている人すべてを指し、アルバイトや非正規雇用者も含みます。
国家公務員全体の平均月収は約42万円で、それに半年に一回のボーナスを加えた平均年収は約640万円となっています。国家公務員の収入は民間企業と比べると安定していて高いです。ただ年功序列のため、就職して数年の収入は民間企業とほとんど変わりません。
また福利厚生や退職金が充実しており、非常に安定した収入を得ることができる職業です。
男女比
令和二年8月の内閣府のデータによると、府省庁や自治体によって異なりますが総合すると男:女=8:2程の割合です。2020年4月の採用試験では女性の割合が36.8%と過去最高になりました。政府は女性の割合を30%にすることを目標にしており、6年連続で達成しています。*5
*5女性の割合の増加を目指すことへの本気度は人事院のHPでは、HP上部に表示されるメニューバーの一つが『女性の皆さんへ』(全部でメニューは6つで、ほかの五つはHOME、採用情報、試験情報、説明会・セミナー、国家公務員の紹介)になっていることから強く読み取れる。また加えて、https://www.jinji.go.jp/saiyo/syokai/sougougaido.pdfを参照すると女性比率が約37%(令和3年4月1日時点)であるにも関わらずパンフレットに登場する12人の人物の男女比は男性5:女性7という実態から乖離した人数を盛り込んでいることからも、これまた女性採用に力を入れている様子がうかがわれる。
学歴
学歴は必要ありませんが*6、国家公務員を目指すのも、実際の国家公務員もほとんどが高学歴です。難しい国家公務員試験を突破するには「難解な制度や法律を素早く理解する力」が必要であり、それは高学歴の人が持っている、あるいは手に入れやすい力です。それゆえに高学歴である必要はありませんが、国家公務員のほとんどは高学歴である、というお話です。
*6但し区分に寄っては学歴が必須の分野もある。特に総合職分野で大卒・院卒区分では大学および大学院の修了がほぼ必須要件だ。大卒・院卒と同等の資格があると認められる例は非常に少ない。
資格
国家公務員になるために必要な資格というものはありませんが、グローバル化が進む今、英語力が求められますので、TOEICや英検といった英語系の資格は持っていて損はないでしょう。
いくつかの省庁では経験者採用を行っており、その際資格持ちが有利になるケースがあります。税理士や弁護士の資格、土木や測量系の資格、簿記の資格、宅建の資格などが専門職で役に立つことがあります。
独学でなれるのか
国家公務員はどの試験も非常に難関のため、ネットに存在する記事を見ると多くの記事が独学は不可能であり、予備校に通うのが得策と書いてあります。しかし合格者には独学で合格している人も毎年常に一定数存在しています。
自身の実力や勉強に集中できる環境をどれだけ作れるかによるでしょう。問題の内容自体は一次試験の段階では多くは明確に答えとその解法が参考書や問題集に明確にされていますので、乗り越えることは長い時間をかければ可能な方も多いでしょう。但し、二次試験で記述式試験、面談、グループワークが求められる区分の試験では、独学での対策は正直難しいと言わざるを得ません。完全に不可能とは言いませんが、同じ道を目指す友人に練習相手になってもらう、記述式の採点をしてもらうための人間を確保するなど、非常に厳しい道のりになるのは確かでしょう。*7
*7ちょっといやらしい話になってしまうのだが、この手の○○試験の難易度について!とか書いてある記事の発行元は常にチェックしてほしい。多くの記事は国家公務員試験対策予備校であることが非常に多い。彼らの目的は予備校に通わせる事だ。
スケジュール例
厚生労働省のデータを参考しています。
・新卒1年目の1日
08:45 起床
09:25 出勤
10:00 官房
12:30 昼食
14:00 お供
16:00 照会
21:00 相談
23:00 帰宅
官房とは府省庁などで、機密事項や人事、会計や統計などの総括的な事務を担当する機関です。1年生は課の事務局が出している作業依頼書を朝取りに行きます。その際、前日の仕事に不備があった場合は指摘や注意を受けます。時には上司の仕事についていき勉強します。
照会とは地方自治体や一般の方から受けた電話に対応することです。業務の範囲が広いのでわからないところは上司に確認します。相談が終わると帰宅です。
・総務省の若手社員
07:30 起床
09:00 登庁(出社)
09:30 会議準備
10:00 会議開始
12:30 昼休憩
13:30 対応業務
16:00 資料作成
19:00 夕食&残業
21:00 退庁
総務省は省庁の中でも抱えるシゴトが多いため残業をすることも多くあります。基本的なシゴトはメールや外部からの電話などへの対応や会議のための資料作成です。1回の会議が4時間に上ることもあります。
向いている人・適性
国民全体のために仕事をするのが国家公務員なので、常に公正な視点を持ち、国や国民の役に立ちたいという奉仕の精神を人一倍持っている人に適しています。
また、国の将来の動向にかかわる仕事でもあり、グローバルな視野と柔軟な発想力も欠かせません。
また国家公務員はただ事務仕事だけを行う職業ではありません。省内・庁内の他部署の人、大臣、政治家、関係機関の職員と、たくさんの人と関わり、会議や打ち合わせを行いながら仕事を進めています。そのため、自分と立場の違う人とうまくコミュニケーションする力や、他人に対して物事を論理的に説明する力も求められます。一方で、書類作成などの地道な作業も当然あるため、コツコツ確実に仕事をこなせることも大事になります。
志望動機・きっかけ
様々な志望動機がありますが、「国のために働きたい」という意欲や「国民全体のために働きたい」、「社会を整備したい」など、誰かのために力になりたいという思いが志望動機になることが多いです。
また、国家公務員は給料が高く、一般的にエリートであるため、自身の「ステータス」として魅力的だと思い志望するきっかけになることもあります。
やりがい・魅力
全体の奉仕者であり、国に雇われて仕事の規模が大きいためとてもやりがいがあります。
一つ一つの仕事の重要度も非常に高く、満足度につながります。また、日本社会全体の利益や幸福を追及する仕事であり、仕事内容が誇れるものです。
年収や福利厚生、退職金などの待遇の良さは公務員の大きな魅力の一つです。
大変なこと・つらいこと
重要な仕事が多い分、ストレスやプレッシャーがかかります。また仕事の領域が広く、専門知識を身につける熱意と実力が求められます。国際公務員の専門職では海外に住まなければならないこともあり、望まない部署へ配属になってしまった場合はつらいことが多いと思います。
またコロナウイルスに関する政策や対応によってコロナ関係の部署の残業時間が非常に長くなっています。毎日帰宅が23時を過ぎるほどです。*8
*8基本的に国家公務員で働く人材の多くは長時間労働に晒されることが多い。理由は複数あるのだが、最も大きな理由は不規則な業務の増加だ。元々国家運営は、民間企業よりも遥かに予想外の出来事への対応を迫られるケースが多い。通常業務を回すだけでも勤務時間のすべてを使う構想で労働計画が準備されているのに、長期化する災害(例えば地震や紛争、感染症など)が発生した場合には通常業務の上にそれらの対応が積み重ねられることになる。また民間企業と異なり、国家機密の観点から業務のアウトソーシング(外部委託:自分の組織で行う予定の業務を外部の組織に委託して行うこと)を行うことが難しく、人材採用の公平性の観点から追加人材の採用も難しい。ゆえに慢性的な長時間労働が起こるのだ。
参考にしたサイト
人事院
→人事院は国家公務員の採用における公平性を担保するために存在している行政機関です。試験の実施を行うのも人事院です。
https://www.jinji.go.jp/saiyo/saiyo.html
政府広報オンライン
https://www.gov-online.go.jp/topics/link/index.html