今回は税金のスペシャリストである税理士についてまとめていきたいと思います。
早速仕事内容から見ていきましょう。
税理士の仕事内容
税理士は国家資格を必要とするシゴトであり、主に税金に関する業務を行います。
国家資格を持つ税理士には税理士にしかできない「独占業務」1が三つあるので、まずはそちらから紹介したいと思います。
3つの独占業務
税務代理
税務代理とは本来自己申告で納める税金を本人の代理として納める仕事のことをいいます。直接税務署に足を運んだり、パソコンで電子報告することもあります。税理士以外の人が自宅のパソコンから知り合いの納税書類を送ると、それだけでも独占業務に触れて違反となります。
税務書類の作成の代行
税務申告のために税務署に提出する書類のことを税務書類といいます。確定申告の書類などがそれにあたります。そういった書類の作成を代理で行うことも税理士の独占業務の一つです。
税務相談
税金の算出や税務書類作成に関する納税者・企業からの相談を受けて対応するシゴトです。専門知識を用いて、相談者の具体的な問題を解決します。
以上の3つの業務は税理士にしかできないシゴトです。これらの独占業務以外の業務として代表的なものが「記帳代行」です。多くの企業が毎月作成する現金出納帳などの帳簿・その他財務書類の作成を代行します。給与計算などの経理・財務に関連する業務全般を行うことも多いです。中小企業などにおいて取締役と共同で書類を作成して会社の株主・債権者の求めに応じてそれらを開示することもあります。また、コンサルティング、アドバイザリー業務を行う税理士が近年は増えています。M&Aや企業の経営全般に関する助言・コンサルティングを行います。
税理士のシゴトは三つの独占業務と、その他専門知識を活かした幅広い業務があるとまとめることができます。
税理士と会計士の違い
税理士と会計士はどちらも税務や会計といった業務を行っており、非常に混同されやすく共通点も多いです。実際、公認会計士の資格を持っている場合税理士として働くこともできます。
そんな二つのシゴトの具体的な違いをまとめます。
一番の違いは「独占業務」の内容とその目的です。税理士は税務の専門家、会計士は監査の専門家です。監査は、財務諸表(企業が利害関係者に向けて作成する損益計算書などの書類)の信頼性を保証することで投資家や債権者を保護し、円滑な経済活動に寄与することを目的に行われます。そして税務は、法により定められた納税義務の、適正な実現を図ることを目的に行われます。
また税理士と会計士では主なクライアント(依頼主)が異なります。公認会計士の独占業務である「財務諸表監査」を義務付けられているのは上場企業や大会社に限られています。一方で税理士の担当する「税金」は大小問わず全ての企業に申告義務があるため、クライアントの数は税理士のほうが多いです。会計士は大企業に対して監査を行い、税理士は企業や個人に対して税務を行います。
就職先にも違いがでます。会計士の90%以上は「監査法人」という会計監査のために設立される会社の会社員として働きます。それに対して税理士は個人事務所を立てて独立するケースが圧倒的に多いです。地域に密着して近隣会社や個人に対して上記のようなシゴトを行います。
税理士のなり方
税理士になる方法は三つです。
①試験に合格する
②公認会計士、または弁護士資格の保有者が税理士登録をする
③税務署に長年勤務した者が試験を免除されるケース
三つ目の方法に関しては「OB弁護士」とも呼ばれており、一般的には①か②の方法で税理士になります。なので今回は①、②のケースのみを紹介します。最も多いのは試験を突破して税理士になる①のケースです。試験を受ける際の受験資格に関しては、長くなってしまうので詳しくはこちらをご覧ください。十ある条件のうち一つを満たせばよいので、試験を受けることの難易度が特別に高いわけではありません。
国税庁₋ホームページ https://www.nta.go.jp/
試験は五科目あり、その全てに合格しなければなりません。「簿記論」、「財務諸表論」の会計二科目は必須です。その他税法科目として「法人税法」、「所得税法」、「消費税法」、「国税徴収法」、「酒税法」、「事業法」、「住民税」、「固定財産法」のうちから三科目に合格する必要があります。その際、「法人税法」または「所得税法」のいずれかの合格が義務付けられています。
必須科目「簿記論」「財務諸表論」
選択科目「法人税法」「所得税法」「消費税法」「国税徴収法」「酒税法」「事業法」「住民税」「固定財産法」(「法人税法」または「所得税法」は必須)より三科目
なお大学院にて税法などに関する論文を書いて教授の承認・押印をもらい、国税庁に提出し認められると一部の科目が免除されます。
五科目合格が必要といっても、一度で全て合格する必要はありません。一度合格した科目は二度合格する必要がないので、毎年一科目ずつ合格して五年間かけて合格することも可能です。
試験に合格したらすぐ税理士になれるわけではありません。二年間の実務経験と日本税理士協会への登録申請と承諾が必要になります。実務経験は税理士事務所や企業の経理部など租税に関するものです。実務経験の証明書を勤務先に出してもらい、登録の際に提出します。この実務経験は税理士試験を受ける前でも後でも構いません。
個人差もありますが、登録申請から登録が承認されるまでに最低二カ月がかかります。税理士登録の際には日本税理士会連合会に登録免許税領収書代として六万円、登録手数料として5万円がかかります。その他にも地域の税理士会へ会費を支払う必要があり、これが10〜15万円ほどかかります。そのため、まとまったお金の準備をしておく必要があります。
②のケースについてはいたってシンプルです。公認会計士資格、弁護士資格を持つ者には税理士資格の取得が税理士法によって認められているのです。
雇用形態
税理士の就職先として最も多いのは税理士事務所です。そのほかには市役所の税務相談所や公官庁の税務署など、資格を活かした就職先は多岐にわたります。近年増えているのは一般企業への就職です。税理士事務所と異なり、税務以外の様々な仕事を行うことになる可能性があります。将来独立を考えている人などにとって一般企業で様々な業務の経験を得ることは重要であるといえます。
年収
厚生労働省が毎年行っている、「賃金構造基本統計調査」を参考にしています。
税理士は働き方に個人差があり、比較的収入に差がありますが年収は高い傾向にあります。税理士全体の平均年収は長い間800〜900万円を保っています。令和元年の国税庁の調査2によると平均年収が436万円なので、かなり高収入です。会社・個人の数だけ需要があり、給与の高い安定したシゴトといえます。
男女比
税理士全体の女性の割合は現在の時点で20%未満と少ないですが、昔と比べると右肩上がりで増え続けています。平成28年度では合格者の27%が女性でありこの先も増え続けていくでしょう。また税理士自体の女性の割合は低いですが、税理士事務所で事務員として働く女性は比較的多いです。
学歴・資格
税理士資格保持者の最終学歴のほとんどは大学卒ですが、実は税理士になるのに学歴は必要ありません。税理士に最も必要なのは税理士資格であり、学歴は大きな問題ではないのです。資格も学歴同様に必要ありません。税理士資格を取ることに尽力しましょう。
例外で、公認会計士と弁護士資格を取得している人は税理士登録を行うことで税理士になることができます。税理士試験を受けなくとも税理士になることができるのです。より難易度の高い資格ですが、挑戦してみるのもありかもしれません。
独学でなれるのか
独学で合格するために必要なことは「モチベーションの維持」です。税理士試験合格に複数年かかるのは珍しいことではありません。数年間自分ひとりで情報を集めて勉強し続けることは簡単ではありません。予備校は合格への最短ルートを示し、さらに難しい箇所や独学ではわかりにくいところも授業や解説というかたちでわかりやすく説明してくれます。要領よく情報を集めて勉強すれば独学での合格も不可能ではありませんが、難しいことは間違いありません。以下のような受験対策テキストも存在します。
スケジュール例
税務署勤務の場合
07:00 起床、身支度
08:30 出社
09:00 メールチェック、返信
10:00 クライアントとのミーティングへ
12:00 午後の予定まで休憩、食事
13:00 顧問先の飲食店へ顔を出す
15:00 帰社、報告書など資料作り
17:00 新規顧客の調査
18:00 退社、帰宅
朝は8時半ごろに出社して、仕事開始まではコーヒーを飲んだり、新聞を読んだりして過ごします。最初の業務はメールチェックとその返信から始まります。クライアントや顧問先と外で予定があることが多く税務署勤務だからといって事務所にこもりっぱなしなわけではないです。外から戻ると、その日のレポートを書いたり、資料をまとめて勤務終了です。新規の顧客がある時は詳しく調べます。比較的早い時間に退社します。仕事が重なり忙しい時期などは残業が続くこともあります。
勤務時間・休日
税理士は基本的に朝8時〜9時頃出社し、17時〜18時頃に退社します。休日は土日のことが多いです。ただクライアントの都合などによって土日に出社したり、反対に平日が休みになることもあります。
転職状況・未経験者採用
税理士は独占業務を持っています。これは税理士にしかできない仕事であり、それだけ需要があるということを意味します。独自性が高く、給料も多いため税理士が転職することはほとんどありません。税理士の仕事内容に嫌気がさしてしまった場合など、まったく別の職業に就くこともあるかもしれませんが、税理士ほど待遇が良い仕事はなかなかありませんので、やはり転職はめったに無いでしょう。
弁護士や公認会計士の資格を持っている人が税理士登録をして税理士になるということは往々にしてあります。
やりがい・魅力
・国家資格であり、就職先に困らず、給料が高いことが一番の魅力です。独立したり、フリーランスになったり、コンサルティングや税務など選択肢が多く自分に合った働き方を選ぶことができます。
・税金という重要な分野において多くの人の役に立つというのは大きなやりがいにつながります。
・若いうちから年上の経営者に「先生」と呼ばれ頼りにされ、活躍できる仕事です。
大変なこと・つらいこと
・どの仕事もそうですが、税理士は特に「税」という重要なものを扱う分、常にミスできないというプレッシャーと向き合わなければなりません。
・顧問先の社長に無理な要求をされることも少なくありません。社長の要求と法律との間でジレンマに陥ることがあります。
以上で税理士の記事は終了です。
税理士の仕事内容やなり方など、少しでも皆様の参考になることを願っています。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
参考にしたサイト
・比較 biz
https://www.biz.ne.jp/matome/2002150/
・資格の学校TAC
・キャリアガーデン
- その資格を有する者でなければ携わることを禁じられている業務のこと
- ・令和元年 民間給与実態統計調査https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan2019/pdf/001.pdf