イラストレーターはどのようなシゴトか
イラストレーターというシゴトは、その名の通り「イラストを描くシゴト」になります。
どのようなイラストを描くかは仕事の依頼内容で決まります。イラストレーターそれぞれに得意の絵柄やジャンルがあり、依頼人(クライアント)は描いてほしいイラスト次第でどのイラストレーターに依頼するのかを決めます。ただ、このように仕事の依頼を受け、その報酬のみで生計を立てているイラストレーターは全体の一部です。副業や趣味としてイラストレーターの活動をしている人も多くいます。イラストの報酬のみで生活する人を「プロ」、そうでない人を「アマチュア」と呼ぶこともあります。
この記事では、イラストレーターの働き方やシゴトの受け方、やり方、収入などをまとめていきます。最後までご覧いただけると幸いです。
イラストレーターの働き方
イラストレーターの働きは大きく2つに分けられます。会社に勤めて会社員として働くイラストレーターと個人で活動するフリーランスのイラストレーターに分けられます。それぞれまとめてきます。
会社員イラストレーター
イラストレーターといえば個人で活動するのが一般的だと思われるかもしれませんが、会社に勤めるイラストレーターもいます。イラストの制作やアニメ・CGなどの制作を扱う会社がイラストレーターの募集をしていることがあります。イラストに関する技術やイラストに費やした時間が選考において重視されるので、専門学校卒業や個人での活動履歴がある人でないと最初の書類審査で落とされてしまいます。書類審査合格後も複数回の面接やポートフォリオでの自己アピールがうまくいかないと採用には至らないので、なかなかハードルが高いといえます。
会社に勤める場合、一番のメリットとして給料が保障されるという点があります。会社によってはボーナスやその他の福利厚生も非常に充実したものになります。この安定した収入があるというのが会社員イラストレーターの最も大きな特徴であり、メリットになります。
反対にデメリットとして、必ずしも自身の好きなイラスト作成をできない点や労働時間に柔軟性がない点が挙げられます。会社勤めの場合は、イラストの仕事を取ってくるのが会社になるので、仕事を選ぶことができません。自身の描きたいイラストと実際に描くイラストのギャップに不満を抱く会社員イラストレーターも少なからずいるはずです。個人のイラストレーターが自身のペースで働けるのに対して定時が決まっている会社勤めはある意味不自由になります。
MUGENUPという株式会社が2019に行った調査によると、会社勤めのイラストレーターは本業がイラストレーターの人のうち約20%です。残りの80%以上が個人で活動するイラストレーターになります。会社員イラストレーターをやりながら個人で活動する人も6%ほどいます。
フリーランスのイラストレーター
イラストレーターを本業とする人の80%以上がフリーランスとして個人で活動しています。フリーランスで働くメリットとして働く時間や働き方を選べることが挙げられます。仕事を選ぶほど余裕がある人は多くありませんが、やりたくない仕事を受けないという判断をすることができるのもメリットの一つです。
フリーランスで働くうえで最も難しくなるのが、仕事を受けることです。会社勤めと異なり、決まった仕事が振られることもなければ安定した給料もありません。自身で仕事を受け、収入を得ていく必要があります。その難しさから、イラストレーターのみの収入で生活できる人は少なくなっています。
続いて、フリーランスでどのように仕事を獲得するのか、その方法をいくつか紹介します。
フリーランスで仕事を獲得する方法
クラウドソーシングを利用する
近年勢いを増しているのが「クラウドソーシング」という業務形態です。クラウドソーシングとは、crowd(群衆)とsourcing(調達)を足し合わせた造語で、インターネット上で企業や個人が不特定多数の群衆に業務を発注する業務形態です。例えば、ある企業が自社の制作するアプリ内で使うキャラのデザインを外部委託して制作してほしいとき、クラウドソーシングを扱う専門サイトに依頼内容を載せることで、不特定多数のイラストレーターやクリエイターに依頼をできるということです。その依頼内容を見て依頼を受けたいと思った個人が依頼を受けることで両者が目的をはたすことができます。クラウドソーシングは、発注側は人材採用コストを抑え、必要な時にピンポイントで業務を依頼できるメリットがあります。一方で受注側は自身のスキルを活かし、好きなタイミングで働けるというメリットがあります。
クラウドソーシングはイラストに限らず、作曲や衣服のデザインや学習関係など様々なジャンルで行われています。それらを行うプラットフォームとして最も有名なのはココナラです。興味のある方はご覧ください。
エージェントサービスを利用
エージェントサービスはフリーランスとクライアントをつなげる仲介サービスです。仲介役となるのがエージェント会社であり、クライアントからフリーランスに支払われる報酬の一部を受け取ることで利益をあげます。
クラウドソーシングとの違いは案件の一つひとつが高単価なこと、フリーランスはキャリアプランの相談などができること、福利厚生がつくことがあることなどが挙げられます。
エージェントが無数にある案件を整理するため、クライアントとフリーランスのミスマッチが少なくなりやすいという利点もあります。クラウドソーシングでは膨大な案件から自分に合った案件を探して連絡を取るという段階を踏みますが、その手間が省けます。
ただエージェントサービス上の案件はタフなものが多く、案件を受けるとしばらく常駐勤務(クライアントの会社に出社)が続くことがあったり、リモートで対応できても拘束時間が長くなるなる傾向にあります。また、エージェントに登録して案件を取るまで時間がある程度かかるため、今すぐ仕事がほしいという方には向いてません。
人脈を広げて仕事を得る
イラストレーターに限らずフリーランスで働くうえで人脈はとても大事になります。一度仕事をした企業から別の仕事先や案件を紹介してもらったり、複数人のイラストレーターで仕事をする現場に呼ばれるきっかけになったり、人脈が直接仕事につながる場面は多く存在します。現代はオフラインでもオンラインでも人とつながる方法はたくさんあるので積極的に動くべきです。Twitter上でのイラストレーターの交流やそこから発展したオフラインでの交流会などもあるようです。直接シゴトにつながらなくても、情報を交換したり刺激を受けるだけでも価値があります。
ポートフォリオなどから自身の評価を獲得する
ポートフォリオとは、その人の実績や強みをまとめた、自身をアピールするための作品集のことを指します。イラストレーターの場合は自身がそれまでに描いたイラスト集などで、絵の技術や絵柄、世界観を伝えることができます。ポートフォリオは自身のSNSで公開するほか、https://www.foriio.com/(foliio)というクリエイター向けのポートフォリオを公開する専用サイトがあります。
クライアントはポートフォリオを見て依頼先を決めることもあるので、ポートフォリオ作成は必須といえます。
人脈を広げたり、ポートフォリオを作成をした上でクラウドソーシングやエージェントサービスを利用していくのが一般的な仕事獲得の方法になります。会社勤めからフリーに転向する人も多く、その場合は人脈の形成がある程度出来ているため、若干有利になります。
フリーのイラストレーターとして活動する上で最も難しいのがこの仕事を獲得するという部分であり、胆力が必要になります。
続いて、仕事を受けてから報酬を受け取るまでの簡単な流れを解説します。
仕事の流れ
企業勤めのイラストレーターは会社内で仕事の分担が決められるので、ここではフリーランスの仕事の流れを簡単にまとめます。基本的には以下のような流れになります。
①打ち合わせ
↓
②ラフ提出
↓
③下書き、色塗り
↓
④納品
↓
⑤報酬受け取り
①打ち合わせ
全ての仕事は打ち合わせから始まります。依頼を受けた後、イラストレーターとクライアントで行う打ち合わせです。この打ち合わせでイラストの内容や細かいポイントをすり合わせます。納品日や報酬に関する決定もこの打ち合わせをもって明確に定めます。
対面で行うこともあれば、zoomなどを利用したオンライン上で行うこともあります。
②ラフの提出
ラフとは、「荒い大雑把なスケッチ」のことで、おおまかな構図を描いた下書きの下書きのような段階のものです。ラフ画やラフスケッチとも呼ばれ、絵の構図や全体の雰囲気を確認する役割があります。このラフをクライアントに見てもらい、修正や確認をしたうえでイラストの下書きを始めていきます。
③イラスト作成
ラフの確認が済んだら、いよいよイラストの作成に取り掛かります。ラフを元に下書きをし、線を描き、色を塗っていきます。下書きが終わった段階や線画が終わった段階でクライアントに確認を行うケースがあれば、色塗りまで終わらせてから提出する場合もあります。
このイラスト作成が最も時間がかかる、イラストレーターのメインの作業になります。
④納品
イラスト作成が終わったらクライアントに納品します。その際に修正があれば修正をし、クライアントのOKが出たら納品完了となります。1からはじまるラフ作成やイラスト作成と比較すると時間はそれほどかかりません。
⑤報酬受け取り
納品が完了したらクライアントから報酬が支払われます。イラストの完成度や納品までの時間によって報酬が変わることはありません。はじめの打ち合わせで決めた通りの報酬が支払われます。
以上のような流れで仕事が行われます。イラスト作成の期間や報酬は仕事の量によって異なります。納品までの作業の早さやイラストの完成度によっては別の仕事がもらえたり、反対に二度と声がかからないこともあるので、フリーランスの場合は毎回の仕事が重要になります。
イラストレーターの収入
イラストレーターの収入は個人によってかなり差があるので一概に平均年収〇〇万円です、とまとめることはできません。各求人サイトの情報をまとめると、企業勤めの場合は年収約380万円ほどが平均になります。日本の給与所得者の平均年収である436万円1と比較するとやや低い水準となっています。
フリーランスのイラストレーターは収入がほとんど0円の人から年収数千万円を超える人まで幅広くいますが、多くは年収100万円未満です。
冒頭でも述べましたが、イラストレーターのみの収入で生活するのは非常に難しいです。その分夢のあるシゴトだということもできますが、厳しい現実は変わりません。
最後に
ここまで読んでくださりありがとうございます。イラストレーターは人気のシゴトですが、それだけで生活できるようになるためにはたくさんの努力が必要になります。専門学校などでイラストについて学び、技術を深めて企業に就職するのが一番の早道になります。ただ企業では必ずしも自身の好きなイラストが描けるわけではないので、経験を積み人脈を広げた後にフリーランスに転身するという流れが最も成功しやすいルートだと思います。
また、記事内でも触れましたが、近年はSNSやポートフォリオから自身の実力のアピールや人気を獲得することで、0から人気イラストクリエイターになることも不可能ではありません。
プロのスポーツ選手や漫画家・小説家などのクリエイター同様夢のあるシゴトです。本記事が少しでもイラストレーターを目指す方の参考になれば幸いです。
参考にしたサイト
厚生労働省の職業情報提供サイトO-NET
https://shigoto.mhlw.go.jp/User
イラスト・漫画教室egaco
https://comic.smiles55.jp/guide/1717/
foliio
キャリアガーデン
- 国税庁 令和元年 民間給与実態統計調査を参照https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan2019/pdf/001.pdf