はじめに
皆さんは生活の中で「ハード」や「ソフト」といった言葉を聞いたことがありますか?
hardは英語では難しい、硬いという意味でつかわれており、ゲームのハードモードや、鉛筆の芯の硬さ(HBなどのHはHardのH)を表すのに使われていますね。一方softはやわらかいという意味で使われます。ソフトボールやソフトテニスはやわらかいボールを使う競技であり、ソフトクリームはやわらかいアイスのことを言いますよね。
今回解説する「ハード」と「ソフト」は上記のような意味ではなく、ビジネス用語として使われる「ハード」と「ソフト」です。ハードウェアとソフトウェア、ハード面とソフト面などのようにハードとソフトは対となる意味で使われます。さっそくその意味を解説していきます。
ハードとソフトの辞書的な意味
ハード
ハードとは施設や設備、道具や機器といった形のある要素のことを指します。
特にパソコン関係のハードのことを「ハードウェア」と呼び、マウス、キーボード、ディスク、ディスプレイ、モニターなどが該当します。
ソフト
ソフトとは技術や人、情報などの形がない要素のことを指します。
特にパソコン関係のソフトのことを「ソフトウェア」と呼びます。ソフトウェアは簡単に表すと「ハード(機械そのもの)に指示を出すプログラム全般」のことで、Wordなどの文書作成ソフトやアプリケーションなどがこれにあたります。
ハードウェアはソフトウェアがなければ動かないし、ソフトウェアはハードウェアがないと存在しえないという表裏一体の関係性になります。
言葉の意味は上記の通りですが、これではなんとなくイメージをつかみにくいのではないでしょうか。よりイメージをつかみやすくするために、ビジネス用語としての「ハード」と「ソフト」はどのような流れで生まれたのか、その歴史を確認していきましょう。その後、ハードとソフトという言葉の使い方や具体例についてみていくことで理解を深めていきましょう。
ハードとソフトの歴史
近年はハードとソフトという言葉が幅広い意味で使われていますが、その始まりはいつ頃だったのでしょうか。
諸説ありますが、この世で最初に作られたハードウェアは1946年にアメリカで設計された「ENIAC」という大型コンピュータとする説が有力とされています。このコンピュータはアメリカ陸軍が砲撃の弾道を計算するために設計されたもので、その後のハードウェア開発に最も大きな影響を与えたといわれています。ENIAC以前にも「ABC」という電子計算機が設計されているのですが、ソフトウェアの概念が生まれたのはENIACが最初であり、それゆえに一番最初のハードウェアだといわれています。また、同時期にイギリスでも計算用の大型コンピュータが設計されており、ハードウェアの歴史は1940年代後半から始まったということができます。
英語の「hardware(ハードウェア)」は本来「金物、金属製品」を意味しており、「hardware store(金物屋)」などの言葉で使われていました。それがコンピュータの登場とともに、それらの機械そのもの(ハードウェア)を指す言葉として使われることが多くなっていきました。
1950年以降、世界中でハードウェアの開発は進み、1975年には世界初のパソコンである「Altair8800」がアメリカで開発されます。日本においても1977年にはパソコンが開発されています。その後も固定電話や携帯電話、ゲーム機といった製品が世界中で開発されていき、今の日本につながっていきます。
ビジネス用語としてのハードとソフトを最初に使ったのは誰でそれがいつかということはわかりません。ただ、ハードウェアをはじめとするさまざまな製品が開発され普及していく中で、ビジネス用語としての「ハード」と「ソフト」も広まっていったことは間違いありません。その歴史は世界初のハードウェアが誕生した1940年代頃からであり、ビジネス用語としてのハードとソフトが世の中に浸透してから数十年であるとまとめることができます。
ハードとソフトの具体例
あるシゴト場所におけるハードとソフトを確認することで、より理解を深めることができると思います。もう一度確認すると、目に見えて触ることができる要素がハード、目に見えず触れることができないものをソフトといいます。
例えば企業のハード面を整備しようという場合は、設備や機器などの目に見えるものの整備をすることになります。それに対し企業のソフト面を整備しようという場合は、人材の確保や情報の見直しなどをすることになります。ただ、何をハードとして何をソフトとするかは職種や会社によって異なります。ハードとソフトという概念は漠然としていてわかりにくいので、具体例を紹介します。
飲食店の場合
ハード…店舗、テーブル、椅子、厨房、調理器具、冷蔵庫、食器類、照明、看板など
ソフト…人材、接客、サービス、食材の管理、衛生管理、SNS運用など
学校など教育現場の場合
ハード…校舎、机、椅子、黒板、遊具、プール、照明など
ソフト…教員、教育、授業、教員と生徒のコミュニケーション、防犯対策など
一般的な企業の場合
ハード…オフィスそのもの、オフィスの広さや部屋の数、その他設備、賃金、など
ソフト…社員、会議、戦略、目標設定、労働時間、飲み会、など
上記あくまで一例であって、必ずしもハードがこれでありソフトがこれである、というようなものではありません。例えば賃金や労働時間はハードといわれることもあれば、ソフトといわれることもあります。賃金や労働時間を自身の努力や働き方によって変えることができるハードだとすることもあれば反対に、実態がなく触ったり変えることのできないソフトだと捉えることもあります。基本的には設備や機器のような目に見えるものがハードであり、情報のような目に見えないものがソフトですが、これらの概念は汎用性が高く、ある意味ではあいまいです。そのため、一つの概念がハードとソフト両面で捉えることができたり、様々な意味で応用されて使われることもしばしばあります。
続いては、ハードとソフトという概念が応用されて使われている場面をいくつか紹介します。
ハードとソフトの応用
繰り返しますが、基本的にハードとは設備や機器などの目に見えるものであり、ソフトとは情報などの目に見えないものを指します。ただ実際にこれらの概念はもう少し発展した意味で使われることが多く、その一例を紹介しようと思います。
例1)ハードスキルとソフトスキル
ハードスキルとは、特定の専門知識や訓練で得られるスキルを指し、ソフトスキルはコミュニケーション能力や共感能力、時間管理やチームワークといった個人の特性に関連するスキルを指します。
ハードスキルの例
・語学力
・資格
・技術(プログラミングなど)
・動画編集能力
などが挙げられます。
ソフトスキルの例
・チームワーク
・時間管理能力
・コミュニケーション能力
・共感能力
などが挙げられます。
ワンピースで例えると、悪魔の実の能力や覇気の習得はハードスキル、海賊たちのチームワークや外交能力はソフトスキルになります。
ハードスキルとソフトスキルは求人情報に条件として記載があったり、就活の面接時に「あなたの持っているハードスキルとソフトスキルを教えてください」という風に当たり前に使われることもあるので、覚えておくべき重要なワードになります。
例2)ハード屋とソフト屋
ハード屋とソフト屋はそれぞれ「ハードウェア系エンジニア」と「ソフトウェア系エンジニア」を指します。
ハードウェア系エンジニアは製品の電気部品を作る人
ソフトウェア系エンジニアはアプリケーションなどを作る人
両者は同じエンジニアでも制作するものが違うため、必要な技術が全く異なります。ソフト屋のシゴトはハード屋がいなければ成り立たないため、ハード屋の方が立場が上だといわれていたこともありますが、ハード屋もソフト屋がいなければ自分たちの制作した機器が動かせないので両者に上下関係はありません。エンジニアを目指す方はハード屋とソフト屋どちらを目指すのか考えてみてください。
以上2つの例はハードとソフトの応用の中でも最もメジャーなものです。ハードとソフト本来の意味とともに覚えておいてください。
最後に
最後までお読みいただきありがとうございました。ハードとソフトについて、理解していただけたのではないでしょうか。ビジネスの世界においてハード、ソフトという言葉は基礎的なもので、知っていて当たり前です。知っていた方はこの機会に確認を、知らなかった方も意味を知ることができたと思います。
シゴトニンラボではこのように基本的なビジネス用語を解説するコラムをシリーズ化していきます。ぜひ参考にしてみてください。