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農林水産省の役割や取り組みを簡単に解説‐シゴトニンラボ

省庁とは

省庁は国の行政機関のひとつです。日本では内閣のもとで「府」「省」「庁」「委員会」と分かれ、それぞれの業務を担当する体制がとられています。例えば財務省が財政を担当し、防衛省が自衛隊を管理するように、それぞれの省庁は国の行政に関わる仕事を分担しておこなっているのです。

ただ憲法上ではそれぞれの具体的な役割は規定されておらず、その時々の情勢に応じて、省庁の編成はしばしば変更されます。

近年では2001年に中央省庁の再編がおこなわれ、それまでの1府22省庁が1府12省庁(1府11省1庁)に大きく改編されています。2021年現在は、東日本大震災後に新設された復興庁を加え、日本の中央省庁は1府11省2庁です。

府や省は内閣の監督のもとで行政を行い、庁は府や省の担当する業務のなかでも、特に専門性の高い業務を行うために設置されています。

農林水産省の成り立ち

農林水産省の歴史は古く、その前身である農商務省は1881年に設置されました。農商務省はその後分裂や統合を繰り返し、1978年に現在の農林水産省となっています。

農林水産省の役割

2001(平成13年)の「農林水産省設置法」によると、農林水産省の任務は以下のように定められています。

「食料の安定供給の確保、農林水産業の発展、農林漁業者の福祉の増進、農山漁村及び中山間地域等の振興、農業の多面にわたる機能の発揮、森林の保続培養及び森林生産力の増進ならびに水産資源の適切な保存及び管理を図ることを任務とする」

つまり、農業・水産業・林業・畜産業を管理し、私たちの食卓を守ることが重要な役割だということです。

毎日の食事に根底から携わっているため、最も私たちの生活に身近な省庁だといえます。

基本情報

組織図

農林水産省業務運営体制図(令和3年7月1日現在)

農林水産大臣ら幹部の他、内部部局として大臣官房や畜産・農産局、消費・安全局があり、外庁として林野庁、水産庁があります。

人数と男女比

一般職の在職者数は2020年7月1日時点で1万9445人(男性15,972人、女性3,473人)です。機関別内訳は本省が1万4045人(男性11,288人、女性2,757人)、林野庁4,536人(男性3,940人、女性596人)、水産庁864人(男性744人、女性120人)となっています。

職員数は比較的多く、女性の割合は約18%です。

年収

国家公務員全体の平均月収は約42万円で、それに半年に一回のボーナスを加えた平均年収は約640万円となっています。国家公務員の収入は民間企業と比べると安定していて高いです。ただ年功序列のため、就職して数年の収入は意外に低いです。

また福利厚生や退職金が充実しており、非常に安定した収入を得ることができる職業です。

仕事内容と取り組み

農林水産省は6つの内部部局と2つの外局があり、全体で見ると幅の広い取り組みをおこなっています。内部部局から解説していきます。

大臣官房

農林水産省の司令塔的役割を果たしているのが大臣官房です。主な業務は、省内の基本的な政策の企画・立案、法令案の審査、予算編成、国会事務、省内および各省庁との連絡を調整することです。

また、大臣官房は、広報をはじめとする情報の発信、食料自給率の向上、食料の安全保障に関する取組み、WTO(世界貿易機関)等の国際交渉や農林水産分野の国際協力などの国際関係の取り組みも行っています。

消費・安全局

主な業務は、食の安全と安定供給を確保し、消費者が食に対して安心感を持てるよう政策を立てたり、企画・広報を行うことです。なお、「消費・安全局」の業務には、「後始末より未然防止」の考え方の下、科学的な根拠に基づいて生産現場から食卓まで食品の安全を確保し、家畜や農作物等の病気や害虫の発生を防ぐことも含まれています。

さらに消費・安全局では、農作物・畜産物の輸出拡大のため、諸外国との会議を進めています。消費者のことを考え、品質表示の適正化や農林漁業への理解を深めるための食育にも取り組んでいます。食育とは、子どもたちが食に関して正しい知識とマナーを得るための教育です。

食料産業局

食に関する新事業の創出に係る施策を推し進めていくとともに、食品産業の振興や食品流通の高度化・合理化等といった食品産業に係る施策について推進する役目を担うのがこの食料産業局です。

日本食・食文化の発信と一体となった農林水産物・食品の輸出促進、ブランドカのある農産物づくりに活用できる知的財産の保護・活用などを行っています。

さらに、食料産業局では、農林漁業者等が加工・販売まで行う6次産業化等に力を入れ、農林水産業・食品産業における新たなビジネスチャンスの創造や、未利用バイオマス、再生可能エネルギー等の地域資源を活用した新たな付加価値を生み出す取組なども行われています。

生産局

農作物・畜産物の生産を担い、生産・経営の安定対策を行っています。また新技術・新品種の導入することで作物の高品質化や低コスト化等の推進などを主な業務としています。

なお、生産局では、環境に優しい農業の推進や、農業生産の工程管理(GAP)の普及による食の安全と消費者の信頼を確保するための取り組みも行われています。

ちなみに、「農業生産工程管理(GAP)」とは、「Good Agricultural Practice」の略称で、農業における食品安全・環境保全・労働安全等の持続可能性を確保するための取り組みのことです。

経営局

経営局の主な業務は、日本の農業が今後も持続的に発展していくために農業経営の改善・発展に向けた各種施策を行うことです。

また、このような「経営局」では、天候等に左右されやすい農業経営を安定化させるためのセーフティネットの確保や農協の指導・監督などの業務も行われています。セーフティーネットとは、要するにうまくいかなかったときの保障のことです。少し大げさですが、命綱のようなものだと思ってください。

農村振興局

主な業務は、日本の農業生産の上で重要なインフラである土地(農地)や水(農業用水)等を管理・整備することです。

これと同時に、「農村振興局」では、グリーン・ツーリズムなど都市と農山漁村の人々の交流や、自ら考え行動する農山漁村の取り組みの支援、農地・農村景観・伝統文化等の農村地域の多様な資源の保全を推進しています。

 

以上が内部部局、農林水産省の中心的組織の取り組みです。具体的な政策に関しては、数が多く全て紹介はできませんので、こちら農林水産省のホームページからご覧ください。政策情報:農林水産省

また農林水産省には「林野庁」「水産庁」という2つの外局が設置されています。外局とは、独立性の強い業務を行うための組織で、内部部局と同様の地位を持っています。文部科学省内の「スポーツ庁」や内閣府の公正取引委員会などが外局のわかりやすい例です。

それでは、「林野庁」と「水産庁」をそれぞれ見ていきましょう。

林野庁

森林を守り、環境を破壊しないよう上手に利用し、後世に残していくことが林野庁の一番の役割です。森林は日本の国土の70%を占めています。その森林のうち、30%が国有の森林であり、国有林を管理するのが林野庁の主な業務です。森林の管理とは、不法投棄のパトロールや生えている木の調査を行うことです。このようなシゴトをする人を「森林官」と言います。

また、森林官は全国各地の森林管理局に配置されます。地方の場合は、部署に森林官が一人だけ、というのも珍しくありません。1日のスケジュールとして、日中森林の調査を行い、午後にレポートを作成するという流れが多いです。体力の必要なシゴトと言えます。

水産庁

水産庁の役割は、水産物の安定供給の確保と水産業の健全な発展に向けた総合的な施策を推進することです。日本の水産業および漁村が国民に水産物を安定して供給し、国民が健康で豊かな食生活を送れるよう、水産基本法および水産基本計画に基づき、任務を実行しています。例えば外国との漁業交渉や漁業船の建造など、水産業に関する業務を行っています。

農林水産省で働くには

中央省庁で働くには、国家公務員試験に合格する必要があります。後で詳しく説明しますが、試験に合格したからといって必ず希望の省庁に入れるわけではありません。一般企業に採用されても希望の部署に入れるかどうかはわからないのと同じです。

環境省で働くには国家公務員試験を受けることからスタートします。試験には「総合職試験」、「一般職試験」、「専門職試験」があり、それぞれに年齢などの受験条件があります。またそれぞれ試験内容が異なっており、総合職試験は1次2次と2段階の試験があります。総合職試験と一般職試験は合格すると「採用候補者名簿(3年間有効)」に名前が載り、そこから各省庁が採用面接を行い内定者を決定します。この面接を「官庁訪問」といい、どこの省庁に採用され就職するのかは官庁訪問に合格して初めて決まります。官庁訪問に合格しなければ、たとえ筆記試験に合格しても国家公務員になれないということです。

一方専門職試験は官庁を限定している試験のことで、総合職試験、一般職試験と違って試験に合格すれば確実に希望の官庁で採用されます。ただ農林水産省に専門職試験での採用枠はありません。

国家公務員になるためには特別な資格や学歴は必要ありません。高卒者も受験できます。ただ試験の難易度から、実際に受けるのは難関大学の学生、院生がほとんどという現状です。

(高校)大学卒業        (高校)大学卒業           

↓              ↓

総合(一般)職試験       専門職試験

↓              ↓

官庁訪問            そのままその官庁に採用

採用

総合職試験と一般職試験の試験レベルに大差はありませんが、総合職のほうが思考力が求められる内容になっています。総合職試験に合格して採用されたものは次世代の中央省庁の幹部候補で、官僚と呼ばれることがあります。官僚に明確な定義はありません。国家公務員の中のエリートというイメージを持ってください。

参考にしたサイト

・水産庁

https://www.jfa.maff.go.jp/

・農林水産省

https://www.maff.go.jp/

・林野庁

https://www.rinya.maff.go.jp/