今回紹介するシゴトは登録販売者です。
皆さんは登録販売者というシゴトを聞いたことはありますか?聞いたことのある方は、このシゴトについてどれくらい知っていますか?
この記事では登録販売者の仕事内容やなり方、年収などをわかりやすく解説していきます。ぜひ最後までご覧ください。
登録販売者とは?
登録販売者とは2009年に誕生した「一般用医薬品を販売するための資格」です。一般用医薬品とは、薬局などで処方箋がなくても購入できる薬品のことで、かぜ薬や鎮痛剤がこれにあたります。2009年以前は医薬品は薬剤師のいるドラッグストアでしか購入することができませんでした。法律上、薬剤師がいない店では医薬品を売ることが出来ず、医薬品の販売は常に薬剤師がいるドラッグストアに限られたのです。登録販売者という資格が登場したことで、医薬品はドラッグストア以外の店、例えばスーパーや大型のコンビニでも購入できるようになりました。
続いて薬剤師と登録販売者の違いについて簡単にまとめます。
登録販売者と薬剤師の違い
両者では扱うことができる一般用医薬品の種類が異なります。登録販売者が第二類医薬品と第三類医薬品を扱うのに対して、薬剤師は第一類医薬品を含むすべての一般用医薬品を扱うことができます。第一類医薬品は副作用が生じるリスクが高いもので、「ロキソニン」や「ガスター10」などが含まれます。とはいえ一般用医薬品の90%以上が第二、第三医薬品に分類されるので、登録販売者もほとんどの一般用医薬品を扱うことができます。
また、薬剤師は薬剤の調剤を行う点が登録販売者と異なります。調剤とは、医師が出した処方箋にしたがって薬剤を調合することを指します。登録販売者は調剤を行うことはできません。
基本的に薬剤師は調剤と薬の処方が主な業務なのに対し、登録販売者は売り場に出てお客さんの相談に乗ったり、レジ打ちをすることが主な業務になります。
以上の違いを踏まえて、登録販売者の仕事内容を見ていきましょう。
仕事内容
登録販売者の最も重要なシゴトは一般用医薬品(第二類、第三類医薬品)を販売することです。登録販売者がいなければ販売することのできない医薬品があるので、そのお店の中にいるだけで価値のある登録販売者ですが、いるだけでなにもしないわけにはいきません。勤め先によって異なりますが、日々様々な業務に取り組んでいます。
例えばドラッグストアであれば、お客さんの相談に乗ったり、医薬品の紹介や解説をすることが大事な業務になります。大型のコンビニの場合は品出しやレジ打ちなど、いわゆるコンビニ店員と同様の業務を行うことになります。大型スーパーの場合は医薬品コーナーの整理や品出しなどを行いながら、お客さんの対応にあたることが多いです。
要するに、登録販売者のシゴトは働く場所によって異なります。働く場所として多いのは「ドラッグストア」、「大型スーパー」、「コンビニ」、「家電量販店」などです。
続いて登録販売者の資格の取得方法やなり方をまとめます。
登録販売者になるには
登録販売者になるにはまず登録販売者の資格を取得する必要があります。その後「販売従事登録証」を発行し、2年間の実務研修を行うことで登録販売者になります。
登録販売者の資格取得
↓
販売従事登録証の発行
↓
2年間の研修(実務研修)
それでは順にまとめていきます。
登録販売者資格について
登録販売者の試験は毎年8月~12月頃に行われています。各都道府県で行われており、県によって試験の日程や問題の内容、受験者数や合格率が異なります。
この試験は、どの都道府県で合格しても資格は全国で有効になります。たとえば佐賀県で受けた試験に合格した人は佐賀県だけでなく、東京や北海道などどの都道府県でも働くことが可能です。実際に働く都道府県に申請する「販売従事登録証」については後ほど紹介します。
受験資格
受験資格は特にないので、誰でも試験を受けることができます。2016年以前はいくつか条件がありましたが、現在はなくなっています。
試験内容
「医薬品に共通する特性と基本的な知識」
「人体の働きと医薬品」
「主な医薬品とその作用」
「薬事関連法規・制度」
「医薬品の適正使用・安全対策」
の5項目から出題されます。より詳細な情報が知りたい方は厚生労働省の試験問題に関する手引き(令和4年版)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000082537.htmlをご覧ください。
出題形式
問題は120問で、全てマークシート形式です。「主な医薬品とその作用」から40問、その他の4項目から20問ずつ出題されます。これは厚生労働省によって定められているため、どの都道府県で試験を受けても変わりません。
問題や問題の形式は都道府県によって異なります。空欄に入る言葉を選ぶ問題や組み合わせを問われるもの、正誤問題などがあります。
合格率
都道府県によって異なりますが、例年30%~50%に収まっています。
合格条件は全体で70%以上の正答率に加えて、全ての項目で40%以上の正答率を出すことです。例えば全体の正答率が80%あっても、一つの項目の正答率が20%であれば不合格になるということです。
試験日程
試験日程はブロックによって異なります。北海道ブロック~九州・沖縄ブロックまで、全部で8ブロックあります。自分の受験する都道府県のブロックの試験日程と受験申込の日程は調べておきましょう。基本的に本州は8月に試験があることが多いです。一方九州・沖縄ブロックは例年12月に試験が行われています。受験申込は試験日の2~3か月前が締め切りになっていることが多いです。
複数回の受験は可能か?
可能です。試験日が被らない限り複数回受験することができます。実際に併願して複数回受験する人は多くいます。
複数回受験するメリットは合格するチャンスが増えることです。一方デメリットとしては受験手数料や交通費がかかることが挙げられます。一度支払った受験料が返還されることはないので、一つ目の試験に合格した場合に、二つ目三つ目の受験料が無駄になってしまうことがあります。
試験については以上です。続いては試験合格後にやることをまとめていきます。
販売従事登録証について
試験に合格すると、合格通知書が自宅に届きます。ですが、登録販売者として働く前にしなければならない手続きがあります。それが販売従事登録証の発行です。
申請に必要なものは以下になります。
① 販売従事登録申請書
② 合格通知書(証明書)の元本
③ 戸籍謄本、戸籍抄本または戸籍記載事項証明書
④ 医師の診断書
⑤ 雇用関係を示す書類
⑥ 登録手数料
①の申請書は各自治体のホームページや保健所から手に入れることができます。④の診断書は精神機能の障害やあへんや覚せい剤の使用者でないことを示すためのものです。⑥の手数料は7000円程です。
そして重要なのは⑤の雇用関係を示す書類になります。自分の勤め先の関係、つまりは正社員なのかアルバイトなのか、そういったものを確認する書類です。この書類が必要ということは、販売従事登録証の申請の際には勤め先がきまっていなければならないということです。そのため試験に合格しても、勤め先がきまっていない場合、販売従事登録証の申請まで期間が空くことになります。
ですが、試験の合格通知書に有効期限はないので安心してください。試験合格後何年経っても、書類が揃えば販売従事登録証を発行することができます。ただ、理由は後ほど説明しますが、なるべく早く働き始めたほうがよいです。また、企業によってはこの申請手続きを代行してくれます。医師の診断書や戸籍謄本などの必要な書類を勤め先の企業に提出するだけで済んでしまうこともあります。
販売従事登録証の発行が済んだら、あとは勤め先で働くことができます。しかし、この時点ではまだ正規の登録販売者ではありません。二年間の研修が待っています。
実務研修について
販売従事登録証を発行し、働き始めることになってもはじめは研修生です。名札などに登録販売者(研修中)というような表示をいれて、まわりのお客さんや従業員が研修中だとわかるようにします。
この研修が終わると正規の登録販売者として働くことができるようになります。正規の登録販売者になると、収入がupするなど待遇がよくなり、転職などの際にも有利になります。また、医薬品販売店(薬局やドラッグストア)を開業することができるようになります。開業にはそのほかにも必要なことがたくさんあり簡単ではありませんが、正規の登録販売者になることは重要な要素の一つです。
研修の期間
正規の登録販売者になるには、直近5年間で2年以上の実務経験が必要になります。つまり資格を取得してはじめて働く人の場合は、最初の2年間は研修になるということです。すでに前職で2年の実務経験がある人の場合は、転職先ではじめから正規の登録販売者として働くことができます。
また、この2年間という期間は必ずしもつながっている必要はありません。例えば一つの職場で1年と3か月働いて、次の職場で9か月働いた場合、合計して2年働いたことになりますよね。この2年分働いた期間が直近5年の間であれば問題なく正規の登録販売者になることができます。
多くの人は資格を取った次の4月から働き始め、最初の2年間で研修を終えて正規の登録販売者として働いています。
少し長くなりましたが、登録販売者のなり方は以上です。続いて収入について見ていきましょう。
登録販売者の年収
令和三年に行われた賃金構造基本統計調査1によると、登録販売者の平均年収は約355万円です。パートやアルバイトを含む全国の労働者の平均年収は436万円2です。比較すると登録販売者の平均年収はやや低いといえます。
東京都の登録販売者に限ると、平均年収は410万円になっており、地域によっても異なることがわかります。
有効求人倍率
日本政府の情報提供サイトによると、登録販売者の有効求人倍率は1.69倍となっています。これは、一人の求職者(職を探す人)に対して、1.69の求人があることを意味します。登録販売者の場合は、求職者よりも求人の数が多い現状ということがわかります。
このデータは厚生労働省がハローワークの求職者、求人数を元に割り出すもので、毎月更新されます。
学歴・資格
登録販売者になるために必要なのは登録販売者の資格のみです。薬剤師と違い学歴は必要ありません。勉強すれば誰でも目指すことができるシゴトです。
やりがい・魅力
・お客さんの相談にのり、適切な医薬品をすすめたり、感謝されること
・医薬品の専門家として働くことに社会的な意義を感じること
・商品のレイアウトや店内のデザインを考えること
・売り上げを伸ばすために接客や商品の置き方を工夫すること
などが挙げられます。
大変なこと・つらいこと
・覚えることがとにかく多いこと
・医薬品に関することだけでなく、店員としてのシゴトもこなさなければならないこと
・給料が高いとはいえないところ
などが挙げられます。
以上で登録販売者の記事は終了です。最後までお読みいただきありがとうございました。薬剤師との違いやなり方など、皆さんの役立つ情報をお届けできたなら幸いです。
参考にしたサイト
・日本政府の職業情報サイトO-NET
https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/448
・資格Times
https://shikakutimes.jp/hanbaisha/1230#3
・東京都福祉保健局
https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/kenkou/iyaku/hanbaijyuuji/sinkitouroku.html
- https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2021/index.html
- 国税庁 令和元年 民間給与実態統計調査を参照https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan2019/pdf/001.pdf